踏みあった影はうねりを繰りかえし
大蛇のようにわたしを睨めている
これが雑踏という生物だ
身を縮めて隠れるほかない
だが一歩たりとも動かぬように
語ることを好まなかった父は
静かな ....
「行く」を「ゆく」と読んだ春。
僕は生まれ育った町を後にした。
罪をつくる私。
いまでは、突然の告白です。
あなたを、
好きなのです。
夢はもう、棄てたけど。
あなたを、
好きなのです。
空が、青いのに。
罪をつくる私。
いつ ....
私にだって17歳は存在した。
当事、私の通学していた高等学校は丘の上にあった。
校舎は周囲を自然樹林にかこまれていたから平坦な場所からその姿を見る事は困難だった。
残念ながら成績優秀な子供らが目 ....
秘めている思い丈を伸ばしても貴女の乳房に届きはしない
傷つけて傷つけられる痛みから油注がれ炎上し
火のついた体を濡らすその仕組み男昂り女は声を
唇に唇あわせ無我になり激しさをます ....
恋慕うこころは消えた
待ち焦がれた日々も
幻滅や
放棄でもなく
むしろ思ってもみなかった
あなたの言葉
「あんまりおまえさんがだれかを崇拝したら、
ほんとの自由は、えられないんだぜ」 ....
きみにひとつだけお願いがある
ぼくのことを覚えておいてくれないか
ぼくが生きているうちは
ぼくのことは忘れてくれていい
ただぼくが死んだ後
ぼくのことを思い出して欲しい
つまらない ....
不快な肺の浸透率に咽返りながら
圧された熱気に項垂れる
刺さるような日差しに
吸光度を考えていた
洗浄される事も無い内側に
籠もった音が響いていた
隠れる事も出来ずに
晒され ....
センスで、感覚する。
あたしのラジオ波のソナー。
リッチ、リッチ。
タツノオトシゴの、
落とし前。
「おまえ、あたしを食べたかったんだろ?」
海の、
開き。
十分 ....
キスのスタンプ。
君のお腹に試し押し。
海に住む少女に会いにゆこう
大西洋の沖合いはるか
めったに船もとおらない
まぼろしの町へゆこう
アイルランド訛りがとびかうはずのタバーンには
看板娘のひとりもひつようだし
だれ ....
誰にだって
少年か少女の時代はあった
筈さ
すっかり忘れてしまった
かもしれないけれど
もしかして
卒業アルバムの集合写真の中に
埃をかぶって埋もれてしまったかな
少年も少 ....
踏み切りの前の遮断機
踏み切りの先の遮断機
踏み切りは嫌い
だけど
渡らないと
その向こうの場所に行けない
どうしても会わなければ
ならない女がいた
ところで
踏み切りって誰 ....
{引用=
いかで我この世のほかの思ひいでに風をいとはで花をながめむ
──西行
}
風を嫌う……
出会いは雨のようなもので、
無常な気持ちのうえに、
さらにはそれを遮る傘の上に、
....
それは前に進む落下。わたしは音のない世界に迷いこみ、無音の音を聞く。それは花。それは実。それは果実。それは乳房。──それは女。それは男。林檎は世界を映しあったまま、白い広がりへと吸い込まれていく。─ ....
山車御輿笛も太鼓も耳障り
お祭りが男と女のはってんば
打ち上がる花火阿呆ら口開けて
露店にはその場限りの商いが
あっちこち喧嘩はじまる祭りだぜ
体は凄く健康なんだって
勝手に解釈している
病院には
患者があふれていて
息がつまりそうになる
それはきっと自分は凄く健康なんだって
思いたいからなのかな
嫁さんは危うく命を ....
孤独
個の毒
ことごとく
苦悩
愚の脳
このうえなく
恨み
うらやみ
暗闇のなか
夢想
無の相
嘘うたう
存在
その際
空ぞらしく
命
その ....
お刺身の正式な食べ方は
刺身の上にお好みの量のわさびを乗せて
醤油につけて食べる
らしい
それは
とても美しい作法かもしれないけれど
田舎生まれ田舎育ちの俺には
それを受け入れられな ....
神社から秋の音色が聞こえます
夜は長くなりました
あきらめのつかない一匹の蝉が
私に罪をなすりつけてくる
(ちらつく蛍光灯のせいだよ)
(私にはなおせないよ)
私たちは今日から ....
あんたは何もしなくていいよ
そして
あんたは何も考えなくていい
仰せの通り
何もしないけど
難しいな
何も考えないのは
おおいに悩むよ
悩むって事は考える事だからさ
考えるっ ....
小数点かと思ったら蟻だった。
3と10を砂糖と勘違いしたのかな。
雲をひと掴みメレンゲにして
チョコレートを溶かして
レモンを一切れ
釜戸の小さな窓を覗く
膨れてきたら食べて頂戴
軽い気持ちはあっという間に
しぼんでしまうから
急いで食べて欲しいの ....
耳を塞いで
音楽を聴いている
心をいっぱいに開かないと
聞こえてこないメロディ
やさしさ
とか
愛しさ
とか
切なさ
とか
刹那さとかが
入り交じって
この胸の奥底から ....
持ちきれないほどの
暖かい気持ちが
なんどもなんども老いたミュージシャンの胸を
叩き割ろうとしたから
とても遠いむかしのような
白い霧の朝のニュースを止めてでも
真空管ラジオに乗せ ....
人のいっしょうは
苦の集積
だって本で読んでしまった
たしかにそうかもしんないな
だけど
誰も好きこのんで
苦しみをかき集めたりは
しない訳で
それならそれで
苦しみを楽しみ ....
おじいさんのシャツは、淡い色のワインレッド。青空の下で、しかめっ面。もしかしたら、そのシャツが似合わないと言われたのかも。気に入って買ったのに、嬉しくて持ち帰ったのに、「似合わないよ」って、言われた ....
秋の始まりの日に、僕は思い出と思い出とを仕分けしている。記憶と幸福とを峻別する。何が答えで何が問いだったのかを分からないから。神さまは時どき贈りものをくれるよね、僕たちの手のうえに。それがたとえ、失 ....
夕焼けの君は泣いていた
何が悲しくて?何に心打たれて?
夕焼けの君は震えていた
何が恐くて?何が悔しくて?
夕焼けの君は涙を浮かべてこう言った
「もう大丈夫」
夕焼けの君を見て ....
あの雲に名まえをつければ、
消えてゆくまえに、あの雲の名をおぼえていられる?
ちょうど街の影にかくれてゆく前の、
消えてゆくまえのあの雲に。
赤い、いいえ、朱色、いいえ、オレンジ、 ....
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