幼い頃から不思議でない
ものには
興味がなかった
そのものが不思議を
孕んでいるときには
ときめいたものだ
大洋や星
深海生物や
ジュラ紀の森
型紙のないものが
不思議 ....
自分というだめなものを持ち上げて
よいしょっと背負えるようになりたい
それができず
自分を引きずっている毎日
自分にがっかりし
がっかりしたくないがため
投げやりになる
日々
....
きちんと洗い物をしよう
ちゃんとご飯を作って
決まった時間に食べよう
幼稚園児みたいだな
こんな当たり前のことすら
出来ていない
天球と交信するとか
青色のアステカ蟻だとか
夢 ....
くらしは繰り返す。
あたかもしずくのように。
ぽた、
ぽた、
いのちは繰り返さない。
昨日のくらしのように。
清い流れに沿い
{ルビ鶺鴒=せきれい}が閃くように飛んで
揺れるねむの花
ねむの花はやさしい花 と
誰かが云った
小さな手が生み出す
鍵盤の響きはたどたどしくても
その無邪気さで ....
介護がこんなに辛いとは
今までの僕、夢思わなんだ
ボケながらなお
イキってなければ死んでしまう病
死んでほしくないので
さりとて忍耐の限界でもあるので
こうなればペシペシから
....
逃げたのはおそらく一番人生で大切な鳥、夢が横切る
これ以上吐き続ければ笑顔さえ失くす気がするじぶんへの嘘
黄昏に卑屈にならぬよう歩く知る人もなき異国の街並み
....
ぼくらがその時住んでいたアパートは二階建てで、二階のちょうど真ん中の部屋がぼくらの住処だった。
深夜一時半、月が白々と全てを明るく照らし出している夜の中へ、ぼくはひっそりと出ていくことにした。
....
今は昔さ
いっとき一世を風靡したっけ
小説とそれを原作にしたテレビドラマのタイトル
思い出したよ
思い出したけど
世界の中心って何処だったんだよ
そこはきっと地球の中心からはずっと ....
{引用=信じられないことがある
それは一つの、収束}
帰ってきて皿を洗って、シャワーを浴びる。それからごみ捨てをして(妻にはいつもシャワー前にごみ捨てをしろといわれたが、どうにも守れない)、雑 ....
世界が
造り物みたいに見える日
夜をひきずって
陽のもとへ出る
同じように見えて
異なる日々
今日の世界は
惜しい世界
ある日は
できすぎた世界
こ ....
{引用=*《明科》
{ルビ山間=やまあい}にある明科という名の小さな駅から、ぼくは下りの電車に乗った。よく知っている場所のよく知らない駅だった。それは梅雨入り前のこと ....
今日も
意識を想像の海に遊ばせて
精神の懐かしい場所に
ゆっくりと降下してゆく
そこに見えるのは
青色の巨大なアステカ蟻の行進
それは僕の意識の辺境まで
延々と続いてゆく
空には金色の ....
痩せっぽっちのロバと
ながらく友達だった僕は
マッチョなイギリスの
粋なボーカリストが好きで
ついにはオペラ座の怪人の
私生活を知ってしまうのだろうか
拘束されない言葉ほど
....
michiは無数でひとつ
僕たちは死から遠ざかるために
michiを探し、暗闇の先を見つめる
michiは見つけるものではなく
僕たちの奥深くの生が
死をレイプし
....
ポプラ通りの真ん中らへん
すべすべの感覚で
まぶたを閉じれば
少年を見つけられる
少年は息を止め
そっと手を伸ばし
とんぼの羽根をゆびさきでつまむ
瞬間を点でとらえたのだ
でも虫か ....
田んぼからは主食の米が
畑からは野菜 そして米以外の穀物
片田舎の農地
猫の額程の土地って表現しか浮かばない
山際に沿ってへばりつくように農家は点在し
それぞれが貧相な佇まいだった
....
反射したい
反射でありたい
思考という
関所はいらない
星間物質という
まどろこしさはいらない
隣合う惑星系と惑星系
へリオポーズすら無用
即でありたい
相即不離
なか ....
親しみを覚えるのはノリに乗った文章ではない。
ところどころ覚束無い感じの消しゴムで消した跡が今にも見えてきそうな文章がいい。
ためらいがちで、口下手で、それでいて丹念な性格が見て取れるよう ....
オルガンを弾くその滑らかな指の動き
室内は少し暗く
表情までは分らない
窓の外は遠くまで向日葵の畑だ
種子の周りを囲む舌状の花びら
黄色の群れ咲く中に
遠く稲妻が走る
銀塩のネガの上で反 ....
あなたのスカートの中で暮している
というのは比喩だが
すべてはメタファーである
だが何の?
わたしの放った鳩があなたの胸まで飛んでゆき
白い花を咲かせる
理解するのではなく到達する試み ....
学校のノートや教科書の余白に
落書きみたいに書いていた文章
それをいつか誰かに
読んで貰いたいなんて思わなかった
それらは
俺の未熟な心の隙間から落ちこぼれた言葉
だからさ
....
つま先にあたった石ころが
ころころ
ゆるく転がって川に落ちる
何の音もしない
七年前
職場のわたしの歓迎会は
小ぎれいな洋風レストランに皆集まった
こ ....
呻いている。
ただひたすら、呻いている。
枯れ果てて死んだ、
ひび割れた大地に
立ち竦んでいる。
風はびゅうびゅうと髪を乱す
口の中に砂が封じるように入ってくる。
血 ....
)サラ ? 目が覚めたのね。
エシャロットとベーコンのスープを口にしたのは床に寝ついてから二日目の朝だった。
叔母のエミーは料理をテーブルに置くと狭いベットのわきをすり抜けてカーテンを引 ....
営農センターの方から多くの桃が北側の倉庫に運ばれて来ていた。
フォークリフトの爪が木製のパレットに引っ掛かかる時に出す苦しげな音が梅雨明けの北信地方に反響し、鉄で出来た{ルビ軌条=レール}のような態 ....
私は妻であるようだから
妻の声帯から声を出す
「夕飯はなんにします?」
私の息子があたかも私であるかのように返事をする
彼とは離れて暮らしているのに
「ひさしぶりにトンカツなどがよいです」
....
河原に散らばった流木を広い集めた
干からびたそれに火を付けた
それは少年の日ノ一人遊び
あんたはなんにでも
本気になれないんだよね
いつも冷たくて覚めているんだよ
あんたの考え ....
ぜんぶ
俺のお陰なんだ
俺の必死な思い
俺のいっしょうけんめい
でも
俺だって
全力疾走
全力投球は
苦手だから
無理だから
だけど
ぜんぶ
俺のお陰なんだ
....
たそがれて
いちにちが終わる
いつかは
このくるしみも終わる
すくなくも
わたしが終われば終わるだろう
その時は
世界が終わる のではなく
世界のなかで
わたしが終わる
わ ....
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