母に背負われて通ったこの道を
一度は
母を背負って歩きたかった
なつかしい
この故郷の道を
コンビニエンスストアの前で
すれちがうひとがいる
ひとはすれちがいながら
目くばせする
わたしたちは
皆
ひとを見て
ひとといい
ひとりとして
ひとりではないのに
ひとりのひと ....
遠くの情景に
ひとまず別れを告げて
内なる心象に目を向ければ
喜怒哀楽と
それらに紐ずけられたものどもが
溢れてくる
それらは、別々に現れるのではなく
万華鏡で回し見するみたいに
....
今日は。
昨日の。
明日ではない。
明日は。
永遠に。
やってこない。
時の果て。
まあるい。
星の。
いのちは。
今日を生きる。
だけ。
あの日を。
越えて。
....
地球の音がする
自転の音がする
それは公転の音かも知れない
触りたい
影響をあたえたい
おなじことをして欲しい
厳しい寒さからあなたを護りたい
破片からも ....
喉がかすれるまで
呼び続けても
振り向いて
くれない
きみの
仕草
に
僕は
憤慨や
怒りすら
通り越した
悲しみに包まれ
ひゅるひゅる
擦れた音が
交差点に
響いた
....
夢のなか昏い洞窟のしたたり落ちる水滴と
森の朝の露が合成されてぼくらは生まれた
やがて酒場のにぎやかで気怠いピアノの鍵盤を踏んで
自分が誰だか気づきはじめるか忘れ去ってしまうかの
どちらか ....
「女史を所持」すると言う
回文的なひどさが
後頭部を襲うと
単純さに惑溺する
化粧師の落書きが
海を席捲する
誤算はイタリア語の挨拶で
超人をスーパーに招き寄せて
慎重を期した
化粧 ....
ありがとう。すべての人に。
ありがとう。私の親族に。
ありがとう。知り合った人々に。
ありがとう。未だ見ぬ友人に。
ありがとう。私の過去に。
ありがとう。愛してくれた人に。
....
悲しみを夜空に放って明日が風の向こうに佇んでいる。
発散できない苦しみを胸に秘め、明るい明日をじっと見つめる。
希望は憶測の彼方に掠れ、現実の重みに耐えている。
ペン先は暗がりを好む ....
野良猫を飼っている
すごく矛盾しているのだけれど事実なので仕方がない
ある日ベランダに出ると
エアコンの室外機のうえに
猫が丸々とおさまっていた
冷蔵庫を漁るもめぼしいものがなく
....
公営住宅の三階の角から二番目の部屋
のいつかぴかぴかだった扉
おんなのこは台所で目玉焼き
格子の向こう側に空を見て
歌詞の意味なんてわからない
あいらびゅうの鼻歌
らびゅう
を繰り返す薬 ....
蝶が、
たくさんの蝶が舞っている
ビルとビルの稜線で区切られて
行き場を失くした空に
乱舞する蝶たち
今ある全ての理は、夢のように移ろい
留まることを知らない
....
大震災と原発事故で被害を受けた土地に赴任して、日々復興の仕事をしながらもう一年になる。右も左もわからないうちから多くの仕事を任されてなかなか苦労した。今では大抵の仕事に慣れてきて、来年度に向け ....
数字に計られる気持ちが
こんなにもちっぽけでくだらない
若いとか
重いとか
少ないとか
だのに計れない
心とか
優しさとか
空気とか
言葉とか
涙とか
匂いとか
....
あやとりを繰り返す
かたちを変えながら
手首を噛むと涙があふれた
哀しみ
届かない星々の煌めきの際
かたちを作りながら
あやとりを繰り返す
並木道
....
空が3つあればね
1つくらい駄目でも構わないけど
音楽室は雨のコーラス
トライアングルを鳴らすと
乳頭があまく痺れた
先生はしょうのうの臭いがした
深くおじぎをするとポケット越しの ....
きみがいつまでもいないあなたをみているので
ぼくは一塊の埃になってしまった
埃になってもなお消えない思いで
ぼやっと燃えてしまった
きみが布巾をとりにいく
それで些細な焦げを拭きとる ....
密室に詰め込まれた人々はただ寝静まっているふりをしていた
目を凝らせば二十六時を指す文字盤が見える
細長いスポットライトが客席をなぞって点滅を繰り返し
エンジンは緩急をつけながら唸り続けてい ....
生まれたら
かならず死はやってくる
苦しくても
痛くても
恐れることはない
再生される生命に
大きな夢を抱き
それを知ったなら
幸せはやってくる
一人で生まれ
一人で死んで ....
わたしが家事をしながら
ことばをちょこちょこ書いてるあいだ
きみは
外でるんるんはたらいて
手作りべんとうがつがつ食べる
うちに帰ればむしゃむしゃゴハン
つーんと薄荷のお風呂に入り
....
行けども行けども野梅野梅野梅ヤバイ着色の珍味と大関とすっぱいセクハラが命綱。ん。川のナマズが飛び跳ねる。わ。ぬしだぬしだと死んでる虹をナマズとみまちがえ宇宙の高さに迫ろうとも真面目も休み休みに言えとせ ....
糸が風に舞う
白い糸が
青い空を背景に
風に流されている
その先を辿っていけるだろうか
糸を引いているのは誰だ
糸の先には誰がいるんだ
雨に打たれても
雷に撃たれても
....
絡めあうゆび
傷だらけのたましい
ふたりぼっち
ビルと家々との間に
はんぶんの月
体重かけていいですか
あなたは軋むかも知れない
熱と匂いを吸わせて下さい ....
息絶えること
束の間の
蝶ちょ捕りでは
ないのだから
手にしたとたん
枯れはじめる
お花摘みでは
ないのだから
世界をきれいに
切り取るだけの
標本づくりは
もうたく ....
たしかにこわいけれど
津波で死ぬために生まれたわけじゃない
津波から逃れるために生まれてきたわけでもない
死ぬために生まれたわけでもないし
死にたくないから生まれてきたわけでも ....
私は梅の花を見ていた
白加賀に思いをのせて
昨年は夫と共に
梅見に来ていたことを
思い出していた
一年たった白加賀は
相も変わらず淡く芳香し
その香りを胸に吸い込みながら
一人ため ....
わたしが投げつけた鋭利な言葉が
あなたを傷つけ
諸刃の剣となって
わたしを切りさく
傷は繊細でむず痒い痛み
痛くも心地よい倦怠が
全身に広がっていく
感情の
空虚な痛み、悲しみ、怒 ....
開け放した玄関はその年の夏そのものだった
わたしはサンダルをつっかけて座り
水羊羹をのせた小皿を手に女をみていた
わたしを産んだ女は真剣な表情で
庭の手入れをいそいそとこなし
と ....
がやがやしてくる夫役(ぶやく)に
撮影者の私は彼方を見る
修身の教科書を読む猫がいる
人間に慣れているのか
私の後を付いて来たうえに
道路に座り込んでしまった
「今では道徳の教科書と言う」 ....
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