大門の
先に見えるは
青い空
シャラリ シャラリと
花魁道中
晩秋の
鋼色なる
空眺め
忘れた人の
面差し映す
輪廻する螺旋を
命はその名前を唱えて昇りゆく
光と闇を漂い
さらなる宇宙の果てを越え
想いもよらない世界の蜜を啜り
花の歌をくちずさむ
いま
ぼくは化石の森に佇みながら
時計の秒針 ....
地球は自転をして呼吸をしている
アンドロメダの惑星の輝きは
生きている証を夜の暗闇の中で示している
青い大空の中では
全てが澄み渡り
生命は存在を忘れて
失語症の詩人のように姿を消す
....
目覚めたとき真っ先に教えてもらったのは
上手にこころを売る方法だった
胸を開いて痛くないようにするりと指を滑らせる
脈動する網目の管を感情といい
抜け落ちた粘液を理性だと聞いた気がする
....
いつのまにか
ぼやけてしまった
染みが
もう存在が消えようとする、その瞬間に
ようやくこころの片隅に
いろを
発生させて
うまれるよ
うまれるよ、と
存在を主張し始める
....
両手を広げ
足を開き
大きな太陽に灼き尽くされたい
この世は地獄と極楽の連鎖を螺旋のように繰り返している
疲れた
私が何を問いかけても
あなたは銀色の頬笑みを水面に落とし
静かな光を映すだけ
まるで失われた恋のように
生まれ出る暗闇を
スリッパで歩く
冬の
イルミネーションはもう、海に沈んでしまっていた
ほしの形をあしらった
知恵の輪を
あつめては ほどく 少年の眼
それを見つめているたくさん ....
波打ち際を歩いては
地獄と極楽を彷徨い
明日の定めを占った
胃を失ったからなのか
精神の病からなのか
私にはよく解らない
こんな私に明日というものがあるのなら
未來という扉は開き
私を ....
床に一ぴき蜘蛛がいる。
あれはこないだ殺した仔だ、
滴るような銀色のナイフで
老婆のようにひらめくちり紙で
その八本の脚は散り散りになり
身に詰まった哀愁
ぞくりとするほどの哀愁は
くし ....
雨上がりに
名前も知らない花が
芯まで濡れながら
凛と咲いていた
雨の匂いは
濡れた土や
草花の匂いを
際立たせている
木々は細かい秋雨を
その全 ....
裸の男が消えたあと
庭の片隅に不思議な植物が生えてきた
ひとつひとつの葉がのっぺりと丸く
それが重なって層をなし
傍目には一個の大きな球体のように見える
つやのない葉は太陽の光を反射せず
....
物憂げな予感に満ちて
黄昏時に立ち止まってじっと
夕日を見ている人がいた
空が暗色に沈んでいく
目に丸い陽の跡が残って
月の横に暗色の太陽が浮かんだ
空に色を付けるのなら
赤しかない ....
昔、{ルビ通=かよ}っていた中学校の屋上に
天体観測の丸いドームがあった
天体望遠鏡を覗き込むと
こころの暗がりがみえた
こころはどの星だろうと
それから何十年も探 ....
意味もなく
手探りで歩いてゆく
情ない
情ない
こんなことしかできないぼくは
とぼとぼと歩いてゆく
言葉が百枚の枯れ葉になっても
この身が化石になっても
崩れない何かがある
....
暗示を拾いに
街に出る
見えない関係性を
確かめる
あらゆるものの
在りようは
偶然的必然か
必然的偶然か
不本意ながら
隠れた欲求は
すべてが繋がっているように
....
わたしは
みかんのきせつが
すきだ
ひとがうずまるほどの
おおきなはこに
みかんをいっぱいにつめて
わたしはそのなかによこたわり
おしつぶされたみかんの
あまいかじゅうは
みぎめ ....
白い障子紙とおしてひかりチラチラ散らばって
立てなくなったばあちゃんをやさしく照らしてる
「食べとうない もう入らへんのや」
「そんなこといわんではよ食べて
愚痴いったらあかんよ
おかあ ....
赤い太陽との抱擁を済ませ
黒い月のスポットライトの下に潜り
透明な音譜に髪を靡かせながら
白い台本の世界の 夜の扉をひらく
ヘッドライトが生み出す一瞬の星座 ....
今はまだ、ぽっかりと空いたボトルが海を漂い
手垢のついたじかんが終わりを迎える
真新しい窓を覆うひかりは
星の空をはだかで漂う不確かさで
黒く塗りつぶした本にときを刻みはじめ
風吹が ....
生まれてきて
その時に寿命を告られ
生きてゆく
それは秋の日に感じること
冬が来る前に
毎年告げられる言葉
来年も生きていられるのか
誰も知りはしない
もうすぐ正月がきて
....
私の耳
補聴器の電池に支配されている
あなたの足首
ソックスのゴムにしめつけられている
そんな風に
みんななにかに支配されている
おおげさに言うと戦っている
会話せずに繋がっ ....
冷たい指先から
ありもしない温もりが
すべて消えていくようだった
愛用していた
小さなティーカップは
一秒もしない内に
床への着地を成功させる事も ....
いけてる おばあちゃんでした
特筆したエピソードはない
けれど
名前が 池 てる
唯一無二の
おばあちゃんでした
寝言でドロボー!と叫んで
夜中におふくろを
震え上 ....
あなたは夏をみる人だ
うつむいたレースのカーテン越しに
あなたは白い夏をみるひとだ
窓辺にもたれながら、口をすこし閉じて
花模様のレースの ....
物語はいつも唐突に始まる。
ある日の僕は緑の森の中にいた。
突然の驟雨をやり過ごし、気が付くと教会の前に立っていた。
初めて自分のもの以外の神の声を聴いた。
それはまるで音楽の ....
もう
花を摘まない
それが素敵だからといって
紫に心を奪われた時があった
あれはいつだったのか
井の頭線で下北沢に向かう途中だったのか
定かではない
そういえば
最近虹を見ない
きみ ....
こたつたつ
少し歩く
猫を呼んでみて
夜が笑う
震える身体
注ぐ月
少し酔ったふりをしながら
夢見る団欒
こたつたつ
少し歩く
転がるみかん
時計がつぶやく
じっとして
....
母猫が事故死して母乳の味を覚えることなく、
共に産まれた兄妹が運ばれた行方も知らず、
ただ何となく頭を撫でてくれる手を信じて、
呼びかけてくれる瞳の輝きに返事して、
春はご主人様たちと ....
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