沈黙を身の回りに置く時、私は決まってここに来る。
森は必ずしも沈黙ではないが、きっとそれは心の状態なのである。
沈黙を私は求め、愛でる。沈黙は私に寄り添う。
物事の美しさは常に変化す ....
決して失われない青い灼熱の太陽
忘却が神秘ならば、
疑いが苦悩なら
恒星の周りを惑星があこがれながら、永遠に近づきも遠ざかりもしないように、
愛もかくのごときものなのだろう。
....
秋風に走るさわさわ耳の奥 /微子(ほほこ)
雨のおとが体に刺さって下に抜けて行く
その先のまちで
男が酒を飲んで煙草を吸い
女が風呂に入り石鹸の香りを嗅ぐ
花は季節に散る
どうということもない
あたたかな食卓が
どれだけに ....
花火に
なりたかった
アタシは
果物が大好きで
ゆえにアタシは
果物で出来てると信じてたので
花火になって
夜空で開花すれば
イチゴや
サクランボや
リンゴや
マンゴーを ....
いかように熱かろうとも
喉元を過ぎると忘れるように
腸が煮えくり返るほどの怒りを
今はもう忘れようとしている
こんな自分に嫌気が差す
どうにかして嫌味の一言も告げてやろうと思う割に
....
白い闇に 身を埋めて
明るい絶望の 唄を聴く
泪の足音を浴びて
苦しみの夢を見た
にっこりと 手を伸ばす死に
縋ろうとして ふと空を見上げたら
底のない蒼が こち ....
頭と骨と鰭を付けた鯉が
泳ぐのを見た
首を落とされた鶏が
庭を走るのを見た
背骨のない蛸が泳いでも
背骨を抜いた鮎は泳げない
骨牌のような積み木(ブロック)が
髄で繋がっている背 ....
【新】
手と手と てとてとてと かさなりあって音がする
足と足 大きな靴のなか小さな足が とてとて動く
とおい日の かげが
わたしを追い抜こうとして とてと 立ち止まる
冷蔵庫に ....
にんげんはいでんしののりものだってさ
きみもぼくもいでんしののりものならば
でもぼくはきみのいでんしをあいしているわけではない
きみのえくぼがとてもすきでいつまでもみていたいから
何日 ....
くらがりに無口な蝉の解体屋
尼僧の黄色い八重歯秋の蝉
あなたの眠りを妨げるものなど、すべて眠らせてしまえばいい
色んな人が電車に乗る
あなたは何色の駅に止まりますか
あたしは、淡い色で、ぐっすり眠れる駅に泊まりたい
吐き気を催すほどの閉塞感
我慢をし過ぎるなと常に言い聞かせているのに
自分でも上限を認識できないらしい
まるで他人事のようだ
優しい気持ちをどこかに置き忘れて
目の前をすべて遮断する
独り ....
目がどろっとして
唇から唾液を垂らして
「アンニュイなんですか?」
って聞いたら、
ふふっと、微笑んで
ガラスの割れる音
犬の遠吠え
電話の呼び鈴
歯茎から血が出る
口の中が ....
鉄格子の間に坐る、あなたは
じっと――待つ
小さい窓から射し込む
一条の光にふれる、あの瞬間を
旅人の静かな足音は
やがて…遠くから響き
あなたはゆっくり、立ちあがる
(深く澄ん ....
小説家は冗長
でいい
詩書きは
舌足らずぐらいでいい
僕は凡人だから
そう思う
横顔の印象は
全てに繋がる
その瞳が
レーニンの
ナポレオンの
イエヤス ....
月曜日に来た人は とても穏やかな顔をして
私の頭を撫でてくれました
月曜日に来た人は 火曜日には火遊びの仕方を
私に教えてくれました
月曜日に来た人は 水曜日私の小言を片付けて
流 ....
おもいでのまちをとおりすぎて
おもいでのまちにかえる
おもいではとうにうせてあきのそらがひろがる
なんだかかなしくてくちぶえをふいてみる
おもいでのいちばではなにをうっているのだろう
....
僕には出会うべき人々がいる。暗がりのマンションの一室を通り過ぎると、光がさんさんと差してくる。そこには道がある。砂利で未舗装の、木製の電信柱がポツポツと連なる、細い道。水溜りが、雨上がりのススキ野を映 ....
云わないでねと頼んで生きてきた
あちらこちらに白旗を置いて
逃げながらも逃げずに
なぜ、を振り切って
あの子が笑う
あの子が泣く
あるいは
また泣く
天秤は正しく傾き
なみだ ....
古い本のすき間から
ハラリと一枚の写真が落ちた
見なければ良かったと気付くのは
そこに写る二人の姿を見た後の事
笑顔で写る十年程前の私と 、の姿
繋いだ手を離した日から ....
父は生きる 沈黙の中に
母は語る 夢のような言葉
私は横たわる 足りない絶望を枕にして
川の字になった 冷え切った水槽の中
打ち上げられた魚を三匹
飼って眺めて笑っていたのは ....
僕にとってとかわたしにとってとか俺的にはとか、そういうの無しで、ひとと話したい。君でもあなたでもなく、君でもあなたでもある、個人である、ひとと話したい。
言葉が解けないように
願うしか出来ない
今日もまた
思いが届きますようにと
そう 呟いた
もしも何か贈るなら
花よりもきっと言葉が良い
不格好でも あなたなら
呆れながらも ....
清らかな川辺に降り立った白鷺を見た。
しばらく彼の美しい立ち居振る舞いに目を奪われた。
彼はどこからやってきてどこに向かってゆくのだろう。
なせだか彼を自分と重ねてみた。
少しも ....
自転車のサドルが蝉へ化けにけり
飯盒に詰められるだけ残る蝉
人は皆一人前になると
船の一艘や二艘持つものだ
実際わたしの同僚たちも
それぞれの個性に応じた
それ相応の船を持つ
ある者はボート
ある者はヨット
ある者はクルーザー
ある者はカヤック ....
忘れていた
左側の肩甲骨の少し内側の背骨に近いところ
ここに熱を感じるときは高熱を発する前兆
気持ち悪さ
むかつき
身体中の節々の痛み
悪寒
種種雑多がごった煮されたように
悪いも ....
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