ありがとう銀の指輪の傷光り見つめてゆれる 青空一つ






{引用=「角川歌壇」2022年二月号分
水原紫苑先生選 佳作}
特にこれといって上手く続けられる仕事もなく、思い出したように働いては数日後には辞めている俺たちにとって、のんびりとしけこめるモーテルなんかあるわけもなく、だから俺たちはいつでもなんとかガソリン代だけを .... 風呂に沈んだ
身体が遺跡に見えた。

柱のように突き出た腕。
その虚像は
透明になって
水底を示す。

膝小僧の下に沈む
屈折した太もも。

揺らめき
遠くて
藻が生えるくら ....
そのころ、戦士エイソスは祭司クーラスと密接な関係にあった。
リュシクイアの戦いが終わった後、彼は聖騎士に任命されたのである。
戦士エイソスも、祭司クーラスとアイソニアの騎士とが、
互いに嫌悪しあ ....
カーガリンデに帰着したエインスベルを待ち受けていたのは、
戦士エイソスの来訪だった。
戦士エイソスは、荒々しく扉を開けながら、
エインスベルの居宅に飛び込んできた。

「奴はどこだ!?」
 ....
雪は身じろぎもせず降っていた
無人駅のホームはすでに雪で埋め尽くされ
その明るさはほんのりと
ともし火のように浮かんでいた

ストーブを消し、鍵を閉める
無人駅の除雪番からの帰りしな
積 ....
血のつながりを絶対化していた時代は
過ぎ去った!
跡取りもいなくなった!
また、一時期愛が血に取って代わろうとしたが
幻想に終わった!
今は家族は
何でつながっているのだろうか
お金だろ ....
ユーラディアの谷を行く、エインスベルの足取りは重かった。
すでに、復讐を成し遂げてから三日の日にちが経つ。
そんなエインスベルの横顔を覗き込んで、アイソニアの騎士は言った。
「アースランテでは、 ....
アイソニアの騎士の亡命劇の裏側には、
ハザック・アザンの暗躍があった。
ハザックは、密偵として祭司クーラスに仕えていたが、
実はアースランテの国の密偵でもあったのである。

いわゆる、二重ス ....
炬燵でゆたりゆたりしてアイスコーヒー

汲めども汲めども 詩心はみずうみの如し

煙草の数をかぞえて(溜息)卓のうえに置いた

屈伸をしてけさの体の点検をする

おなかがグウ、と鳴 ....
 

 今朝は寝起きから眠気がなかなかとれず、なにかイベントめいたことがある日は必ず眠たいので、今日もなにかあるのかな、と思いつつ過ごしたが、平凡な日だった。

 朝食はトースト二枚にヨーグル ....
 
妻が泣きはじめて時がとまる

霞む三日月 童話の世界を歩く

カレーライスと妻が待ってるおうちに帰る

 
 
夕暮れのざらつく人恋しさに飛び立つ平らなコウモリ


あまりあてにせずに
待つはずの
きみ

裸足の猫は垣根に消えた

せんべい布団に横たわり
断雲を眺め
さまようなにかの羽が最 ....
結膜炎だろう、
白目が赤目になっていやがる
おかげで目やにがまつ毛にこびりつきやがって
目は眼帯、
口はマスク
いったいなんなんだ
疫病退散もない
一日遅れの恵方巻でも喰うか
 ....
晴れた日に
息子と二人で海を見にゆく
私の背などとうに追い越して
何食わぬ顔をして
乱反射する水面の光を
キラキラと浴びているやつだ
いつの間にか
通過する季節を跨いできたね
海に突き ....
エインスベルたちは、復讐からの帰路についた。
もちろん、再びユーラディアの谷を通ってである。
その道すがら、アイソニアの騎士はエインスベルに向かって言った。
「俺は、アースランテの国に亡命しよう ....
ファシブルの国で政変が起こったという報せは、
早馬によってクールラントの国にももたらされた。
国王はわずかに顔を曇らせた。
「で、次の女王は誰になるのか?」

「マリアノス・アリア・ガルデが ....
ぼうとして朝焼けの空待っている

砂糖少々 珈琲たてて朝をはじめる

けさも布団を妻にとられ 起きた

欠けた歯を舐めつつ 朝を動かす

寒さ 着替えるタイミングを計る

パキ ....
ひつじ雲はあんなに夕陽に映えて
街の建物はみなオレンジ色に染まり
見知らぬ異国になってゆくのに

君はやわらかに目をつむって
まだ見ぬ海の語りに耳を傾けている
僕には微かにしか聴こえないか ....
夜を飾る女が闇のダンスの指南役で
秘密の原始をあじわう

夜間飛行の天使はときどき行き先を喪って
微かにきこえる古いブルースに耳を傾けている

闇のスケルツォは楽章をかえても
いつか交響 ....
声がでなく
大気に混ざる安らかな眠り薬に
その身を委ねてしまいたくなった
胸の小さかったころの私
家は優しくて
朝の光はいつだってキラキラしていた

抗う心さえ
芽生え無ければ ....
いたはずの人がいなくなり
いないはずの人がいて

地図が変わったり
星が見えなかったり

もう何も信じられない
というときに

そう思っている僕がいる
これはまだ確かなことで

 ....
「そうかもしれません、母上。明日は、
 叔母ミーガンテの戴冠十年式典が行われる予定でした。
 しかし、今は貴女が王座に返り咲く日となるのです」
「しかし、国民は受け入れるだろうか。一度は排斥され ....
「わたしはこの時のために生きてきました。貴女を救うために……」
「そのために、魔導士に落ちたというのか?」
マリアノス・アリア・ガルデはわずかに顔をしかめた。
その微妙な表情に、エインスベルも当 ....
今 私が
こうしていられるのは
みんなのおかげもあるけれど
過去の私からの
プレゼントがあるからよ




{引用=※五行歌とは、「五行で書く」ことだけがルールの、新しい詩歌です。}
「はい。わたしは貴女の娘、エインスベル」です。
「エインスベルか……、あの頃はたしか十歳だったはずだが。
 立派に成人したのだな。しかし、お前がここにいるということは?」
「ええ、叔母ミーガンテ ....
ミーガンテを捕縛した後、エインスベルは、母の元へと赴いた。
マリアノス・アリア・ガルデは、十年の間、
王宮の北にある塔の中に幽閉されていたのである。
マリアノスがいる牢獄は、塔の最上階にあった。 ....
お花があって
それから
けむり?
雨ふりの森の中みたいな
ちがうよ
びゃくだん!
くすくす
しっ!
こえだしちゃ だめ
おそーしき?
そう
おそーしき
ぼわぼわって空気が
静 ....
さよなら またね と
猫は言った
さよならから何年経ったろうか
光る風は吹いて
また会えた




{引用=※五行歌とは、「五行で書く」ことだけがルールの、新しい詩歌です。}
「廃墟/光」

その人は
十月の淡い光がこぼれている
窓際に立っていた

下生えを啄む鳥たちが
驟雨の後に立ち去った庭で
透過性の
グラン・ジュテ
軽々と
その人は
超えてゆく ....
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