焚書
岡部淳太郎
花がいままさに
ひらかれようとしていて
うたが人知れず
うたわれていても
読みかけの本の
頁がひらかれて
そのつづきが
つづかれてある言葉が
読まれようとしていても
なおもひらかれないものが
あるだろう
それはやがて焼かれ
その断片は煙とともに空に
ひらかれた空にのみこまれては
落ちてゆく
日々こうして焼かれてゆくために
ますます暑くなる世界
枯葉の下にはいまも
くるった言葉が
とじられたままで
埋められている
(二〇〇九年四月)
自由詩
焚書
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岡部淳太郎
2009-04-28 23:16:24縦