酔った男が管を巻いている
青い月の光の中に
しわがれた声で管を巻いている
ヨロヨロと時によろめいて
松の根方に坐りこんでしまうのだが
男の声は途絶えない
月の光りの流れの ....
庭のツツジは黄白く色褪せ枯れ萎み
私の肉体は滅び死につつ在る過程
ホントの愛、
無条件に貴女に委ね帰依すること、
わたしは忘れている
きっとチーズケーキ
食べながら取り戻す
....
まとわりつく蛆のような概念を振り払って重湯のような朝食を啜ると世界は絨毯爆撃みたいに騒々しく煌めいていてウンザリした俺は洗面台を殴り殺す、拳に滲んだ血はホールトマトの缶詰を連想させたので昼飯はパス ....
緑の五月の風に
髪なびく
草原を駆け下りる少女の
息は弾んでいる
若草の匂いが
鼻をつくほど濃厚な自然の中に
すべてはこれから始まる
ちいさな芽生えみたいに
....
外陽 入れよ
僕ら 光と愛の実体、
闇と交わり塗り込められ
嘆きの壁、泣いている
嘆きの壁、囁いている
日々の反復で得る熱、
日々の努めで得る魂、
宝石箱ひっくり返し
....
そのときの香りはありましたか?
周りにはなにがあったのでしょう、
どこかきこえやしませんか――
花の名前を忘れてしまったのです。
多 ....
駅のホームに
梅の木 梅の実
梅酒かな
梅酒かな
梅の神さま いるのかな
電車 電車
ゆっくりそろり 来るがいい
乱さぬように 来るがいい
雨上がり
空は明るみ
歩く人、
ふわり
吹き抜ける
風の精霊、
キッスして
包み込む愛、
感じるか
雨上がり
広がる
空の青み、
繋がって
一面の青
ただ嬉しく、
仰 ....
芝居観て朝顔市や万太郎
この風とバルコニーはいま猫のもの
父さんの歯のない笑い百日紅
キッチンの椅子は三脚センダック
六歳の背丈の君の夕焼雲
家の窓の中にいると
そこが家の眼だということを
うっかり忘れそうになる
薄いカーテンを開け放ち
風を出迎えると
人の眼も
家の眼も
まばたきする
季節のかわりめに
少し驚くようにして ....
○「好日」
体調よし
天気よし
ワイフの機嫌よしで
今日も好日なり
○「柔軟心」
あれはダメ!
これもダメ!
ではなく
あれもよし
これもよしで
暮らしていく
○「本質 ....
ビルの谷間に皐月風
それは歩道の正面から運ばれてきた
若い男の声だった
パパなお前のキモチ分かる。分かってるから今日ユラちゃんに謝ろうな。
ギョロリとした目に たらこ唇
....
降り続ける雨、
外の 街道の
アスファルト濡れ
気付けば夕暮れ、
雨に濡れる街
そしてシズク
カラコロロ
転がり広がり
水溜まりの輪、
私は今日は何処にもいかなかった
私は今日 ....
{ルビ紅=くれない}の花群濡らす青葉雨
そら豆の皮剥く雨の日曜日
朝な夕な白き芍薬傘の中
滴り落ちる哀しみ
満月、白く輪郭
浮き立たせる夜に
揺らぐ風 吹き抜け
わたし 裸になり くずおれ
剥き出しの現に 向かい合う
揺らぐ風、街道沿い緑の並木 波立たせ
滴り落 ....
私は、ビートルズを聴くと新百合ヶ丘駅のプラットホームフォームを思い出す。
学生の頃私は、通学に小田急線を使っており、新百合ヶ丘駅は乗り換えの駅だった。
季節は春か、秋。
冷たい雨が降っていた。
....
春の日も夏の日も、そこに行けばそこに海辺があり磯があり、秋の日も冬の日も、そこに行けばそこに丘があり林があり、そこはいつもやわらかく甘い匂いが流れてくる場所。焼き場があるのだ。木陰のさしかかる三角屋根 ....
血、止まらない
吐き続ける、
吐き続けるのだ、
外、いつもの橙色の明かり灯らず
内、何故か沈着し静かさ包まれて
鉄の味、広がり
私の肉体、クタバルノカ
夜陰の街道、誰も車も通 ....
凝固した毛細血管のような形状の幻が網膜の中で踊る午後、飛散した詩篇の一番重要な欠片で人差指の腹を切る、往生際の悪い具合で滲む血の赤は、どういうわけだか若い頃に会うことが無くなった誰かのことを思い出 ....
ペールベージュのストッキングの脚は歩く度
踵に隙間のできるパンプスが
擬音で表現しずらい音を立てる
そのアレグレットな足音に
澄んだ媒介を感じとって
追い抜かず 私は着いて ....
雑文
あれはどうしたものか。職場の至る場所にPCがある。個人用に貸与されてる者も多い。しかし使用する従業員のすべてがそれほどPCに詳しいわけでもない。
よく1日中PCの ....
香の{ルビ著=しる}し檸檬の花の散りしあと
柿の花{ルビ萼=がく}に隠るるみるく色
新じゃがを掘る喜びの秘かなり
感覚が先にあるのではない、
概念が先にあるのではない、
思考、湧出し生動する思考
すべてに先立ち在る
それは呪いの声、力としての言葉、
力としての霊性としての鋼の透明な発声。
....
雨のなか歩き進み
燃える陽の光見る
すべて終わり過ぎて
解ることばかり
運命に導かれ此処まで来た
私は運命に促され今を生きる
炎のなか歩き進み
これ以上無い高貴観る
こ ....
ポツリと雨が降ったと思ったら
また止んだ
傘を畳んだところなのに
またポツポツと降り出した
今日はそんなことの繰り返し
それでも傘を持ってきて良かった
だって今日は少しだって
雨に濡れた ....
ああ、みえる
銀線だ、
無数の半透明
見える 視える
降りしきる雨、
ああ みえる
*
鎮まりゆく現に
心落ち着き
時流に己
委ね預ける時、
線形時間の
進行の裂け ....
○「離婚」
姪が離婚した
これから4人で再出発します
というメールが届いた
力強さを感じたけど
やっぱり残念だった
離婚というものはおそろしいもので
別れればまったくの他人になってしまう ....
夜の雨に置き去りにされた眼孔ふたつ
うらめしげに空を見上げている
空は覗きその身を映す
今朝は薄曇りを着ている
一羽の烏が横切った
互いの胸中を ほんの一瞬
実像と鏡像に引き裂かれて
....
- l'impromptu 自由律
プリペアドピアノ獨り言つ午後の風
琥珀のなかで千年考えても尚
うれし大地の林檎{ルビ黃金=こがね}の林檎 ....
夢の底を揺蕩えば
思い出の予感に
陶然となる
夢の向こうとこちら側
遠く近く狭まって
底の底に横たわる
わたし独りのたましいが
融通無碍に踊り出す
進む夜の青い時
深い眠りに揺蕩って ....
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