見えていないから指先に触れて
輪郭を描く
知りえないものを
自明と思い込み
書き足さなければならない線など
もうないと
絵の具を塗る
好きな色
みなさんにお馴染みの色
私だけに
見 ....
海水浴場で父を洗っていると
監視員さんがやってきて
ここは海水浴をするところです、と言う
洗っている、といっても
石鹸もシャンプーも使ってないし
水を身体に濡らすところなどは
....
わだかまりが
嫌で
夜を歩くのです
わかってもらえない
プライドを捨てて
夜を歩くのです
すべてを終わらせるために
生きてきたわけではない
夜を歩いて
たどり着いたコンビ ....
その二枚か三枚かの舌が造る世界が
あなたには本当なんだとしても
私には無縁の世界で
{引用=窮屈そうな
言葉たちをほどいて
その向こうの空を見る
さよならさえも言えない
あの人は ....
行きの道ばかり考えて来た
あなたが帰る時を知らないまま
白い手紙に色を混ぜる朝
私の気持ちが青空になる
会えないのに手を振って
目を合わせたような光は
先のことなんて照らさなかった
あ ....
24個の光が
鼓動する
キャンバスの上でまわる
それは時間だ
キャンバスの中では
今日と夕陽が混ざり
遊び疲れた赤い河が流れる
そして娘の声が空気遠 ....
平安の黄昏に鐘がなる
カラスの恋人は
ひとつの影になる
朱色の柱に漆喰の鳳凰
牛車の轍のあいだに小さな花
明日は踏まれてしまうだろうか
子供たちは雀のように
無邪気に巣に帰る
ひと ....
花咲く音が聞こえたら
それは妖精の歌
花びらに書いた聖書
波のように繰り返す
光る風の笑い声
コラールの旋律
ミツバチは音譜を持って
蜜と交換に出かける
暗闇に蒼白い河原の
小石夥しく静まり返り
流れ動き澄む川は無音
黒く光る水面の異様
恐るべき氾濫を孕み
奥まった沈黙を保つ
決して終わらない不安は
この沈黙という深い謎に
剥き出し ....
熱を舐める
終電すぎ 汗のすべりが
愛の五月蝿さをおしえてくれる
置いていった本のように心が
かなしくひかる
こんなにも
あなたの
ばかげた
世のなかが晴れていた
ことばが ぼくの目のなかで
すばやく動いて よくは見えない
たいくつな愛のように夜がきてほしい
あなたの胸にいつしか溜 ....
ガラス戸越し縁側に
いろとりどりの風船が
あちこちと横たわっている
今にもふわり浮きそうな
楽しさの余韻
あかいろあおいろきいろ
丸々ふとっちょわははと笑う
膨らませてうーんと膨らませて ....
{引用=モデル}
マネキンのようにスラリとして
颯爽と 人前を歩く
絵画や彫刻の面持ちで
料理を盛る皿よりも大切な役目を担う
これを着たら
あなたもわたしのよう
美は憧 ....
しろい朝が明けた
雨粒は身をくねらせ少し困りながら
わたしにアイサインを送った
気がつくと雨粒は雪にかわっていた
てのひらに舞い降りる華 花 はな 雪の花
象形文字のような氷 ....
あの時計は今はもう札幌あたりに
転がっているだろうか
砂浜のボタンがまだ鳥取の近辺で
埋没しているみたいな世紀末
そういえば《少女》を革命するアニメが
20年以上前に流行ったけれ ....
雨のコンパスで描いた唄が
手の甲に乗せた鎖のように
水溜りを増やしていく
半径をどのくらいに広げても
踵に当たるメロディが好きだから
優しい言葉でなぞる世界に
いつの間に追い付けたのかな
....
だれかの言葉について考えることが、ぼくにとっての詩だった。
耳を澄ますこと。きみが笑ってみせること。
いつかは消える声がここに届いて、
星の光がすきだと思った。
詩を書くと、あ ....
どうでも良い人は傷つけないのに
いちばん大切な人に傷つけてしまうのは
いまの
に
の使いかたがおかしいとはおもうけれども
そこは
に
でいこうと思う
なんども繰り返して
繰り ....
角刈りの雲が流れていく
左折すると見えなくなったが
あれは建物などでは決してなく
夕空をゆく
角刈りの角刈りの角刈りの雲であった
底冷えする
夜に横たわり
祈っている
迫る闇が咆哮し
幾つもの夢が朽ちるとき、
心の奥処の祭壇に
火を絶やすことなく
灯して、灯して
)不眠の夜を透過する
)純白の雪を待ちながら ....
また夜になり
今日という日をカウントする
)お隣さんは明日で四十一、だという
)いただきます、いただきます
)白壁越しにやり取りして
カウントする先から
磨り減っていく肉身に
明 ....
光というのは相対的で
今まで光であったものが
新たなより明るい光の登場によって
影になるので
光にもヒエラルキーがあって大変だ
明るい部屋で机の
電気スタンドを点けると
それまでは影でな ....
かなしみの
青が降る
透明、
ただ透明に
なっていく
己の体
幾億もの幾兆もの者達が通った道
途、未知、溢れ
枯れ果て、移行する
闇の光の奥の
ふるふる震え揺れ
時の ....
私が初めて付けた口紅
まだ子供の頃だったのに
あれから少しも減っていなくて
お母さんどこへも連れて行って
貰えなかったのかな
確かお父さんが空港の免税店で
買って来てくれたもの
きっと大 ....
無風に花瓶、
押し倒れ
転がる転がる
少女の手許
受け止める幼手
花瓶は砕け
甲高い笑い声
さも当然に
さも当然に、
笑い声響くたび
花瓶は粉々に
亀裂走っていく
円卓 ....
まとまらない記憶
さだまらない思い
けれども空は暮れてゆく
ままならないことばかり
ため息のミソラシド
夢みて おいかけて
どこまでも
諦めきれず
おいかけて
おいかけて
....
終わりを迎える背中で
始まりを迎える淡い空
まるですれ違いの感覚に陥るが
紛れもなく同じ時空を生きている
時は必ず待ってくれると
そこに甘えて寝床につく
そして起きたその時は、やはり時 ....
川の此方と彼方
静かな川面に浮かぶ船
準備はまだなんだ
もう少しだけ時間を
そう言ってもたついている間に
船は遠のいていく
それはまるであの日の貴方の様だ
振り向かなかった貴方の様だ
脱いだサンダルが戻って来る
さっき蹴飛ばした光のように
潮の道連れをピンクに照らし
夏の端っこを避けて歩いても
トングが切れて指が挟めずに
サンダルの分かれ道で止まると
初恋みたいな伝票 ....
ざくざくとした砂糖
ホットコーヒーに
コーヒースプーン
混ぜると溶ける
朝でも
寝れなくても
「コーヒー淹れる?」
「泣いているなら一緒に飲もう」
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