ほら、そんなにかなしいなら
竜門勇気


こどもが走ってる
星くずがむやみに光りながら
燃えつきるのをみてるみたいで
なんだかみすぼらしい気分で
ささくれた木のいすにすわって
半分眠って溶け出していく

スクラッチ アンド ビルド アンド スクラッチ
アンド スクラッチ アンド スクラッチ アンド
スクラッチアンドビルドアンドスクラッチ

片割れをなくした蛍光灯
そんならお前が死ねよ
ポケットの中のロックバンド
ポケットの中の中のレコード
うるさい
こどももレコードも、もうロックバンドですら
うるさい

こどもが転んだ
血が出てるよかわいそうに
ほんとかわいそうに
痛いのか?悲しいのか?
ああ、泣いちまった
さみしいのか?不安なのか?
ああ、泣いちまった
ああ、泣いちまったよ
どうして泣いてるんだ
何が痛いんだ?何が悲しいんだ?
何がさみしいんだ?何が不安なんだ?

ああ、泣いちまったよ
ああ、泣いちまった
もう終わりだ
帰り道のないドアが開いて
トースターがベルを鳴らした
何が焼け焦げて
誰の手紙がポストに落ちるのか
理解しなきゃいけない日が来た
昨夜未明の出来事

悪夢の友達が六缶入りのビールをドラッグストアで買う頃
誰かの恋人が車の中に残ったたばこのにおいについて話す頃
悪夢の恋人があきらめたような顔をして
車の中でできる最後の罪を犯そうと考えこんでいる

砂利の混じった膝を洗うとき
あの感じ
砂利が体から転げて落ちていく
あの感じ
洗い落とせない何かが残る
あの感じ
触れない場所に毒がある
あの感じ

こどもが走り出す
星くずがむやみに光りながら
燃えつきるのをみてるみたい
なんだかみすぼらしい気分だよ
ささくれた木のいすに捉まれて
半分眠ってて溶け出している
あの感じ



自由詩 ほら、そんなにかなしいなら Copyright 竜門勇気 2024-02-26 11:09:20
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