丸い皿は丸く 四角い皿は四角く洗えと言われた
白い皿は白く
深緑の皿は深く深く果てしなく緑に洗えとも言われた
少しも汚れていない水盤のような皿たちに
水流をあてると
どの皿も垂直にしか洗 ....
しじまという名の少女がいた
「しじまです」という自己紹介の後の沈黙に慣れている顔だった
この名は代々受け継がれていると言った
姓ではなく名の力を継ぐのだと
数年後
高名な画家が彼女をモ ....
夜また来たりて
凍結した湖、
曇天鉛の下 広がる
・
うねっている世界
、
海原の鉛の色に
オレは垂直に
肉身沈める、
底へ其処へ
....
夜は冷えます
太陽とおなじような
あたたかい光が
欲しくて
涙ながしただけで
瞳が綺麗になるだなんて
びっくりするほど
デタラメな綺麗事だね
でも夜は ....
悲しみがいつまでもまだ降り落ちて
優しいふりをできずに笑った
しあわせがあるから心がもういちど
立とうとすると云いたい週末
曲がらないこころに意味はないからと
云 ....
たたかう
たたかう
何とたたかう
ほほえむ
ほほえむ
野薔薇に口づけをする
かる
かる
雑草を刈る
畑が肥えるように
雑草はね
その土地が ....
ガーベラの花咲き誇る
沈黙の内に真紅の歓び
夜 明ける瞬間の如く、
澄み渡り漲る
チカラ 湧く沸くと
なんにも考えず
ただ噛み砕き呑み込む
意識の ....
情熱はもう涸れてしまった。
一行目では誰もが世界一の詩人になれる。
二行目、三行目からは篩にかけられたように、
詩人だったものはただの凡人に成り下がる。
バレてはいけないよ、夕 ....
川を歩いた 海を思って
年老いた体ではあるが 動かせた
何度 でも この景色を 僕は
僕の見たい景色として訪れたというのか
今日も日はベンチに差していた
前に見たことのある 角度の記憶で
....
いっぴきの草鞋虫を片ほうだけ履いて、
春が土足で入ってきた、
ながらく寒かった和室の畳の上にも、
いっぴきの草鞋虫が入ってきた、
ワラジムシ、
おまえは、とてもちいさなちいさな、
春の外履 ....
どんなに遠く離れていても
心かよわせた日々は忘れない
きみだけを見ているから
大きな虹が蒼穹を渡り
ぼくを呼んでいる
あの虹の向こうへ行けば
きっときみに逢えるから
ぼくは走る! ....
時計の文字盤の進行と街の気配が奇妙な歪さをもって網膜に刻まれる午後、全身に浅黄色の布を巻きつけた梅毒持ちの浮浪者女が木の柵で囲われた売地の中でこと切れる、鴉たちは低いビルの立ち並ぶ様々な屋上からそ ....
ピアノの鳴る室に
ふと情事の匂いを嗅いだ
犬や猫の恋ではない
汚れ切った人間の恋でもない
冷たい冬の北大路をよろめきながら
月の無い日をさまよって
この生命
唯美 ....
みんな 考えることが
おっくうに なったので
頭を はずして
かわりに 肩の上に
鳥籠をのっけて 歩いてた
鞄を抱えた 背広姿の人も
バス停でバスを待つ 女の人も
みんな 肩から上は ....
いろんな顔たち
現れ互いに語り合う
この夕べに
意識の内で
彼ら彼女ら余りに鮮やか
声の聴こえず
口の動き表情の変化
ああ余りに鮮やか浮き立ち
嬉しそうに哀しそうに穏やかに
しばし語 ....
眠りから醒めた夢が
空の中に溶けていく
名前も形も知っているのに
呼べないまま
その弱さでも
鳴らせるものが欲しかった
花が散る時に
ひらひらと聞こえるように
最後まで美しく
....
もうその土地は更地にして
地主さんへ返したそうですが
礼文の古い家 元は漁師の 父方の親戚の家には
ものすごく腰の曲がったおばあさんが
何年ものあいだ 一人で住んでおりました
私の母 ....
鬼灯が
レースになって
実のぽちょん
熟した
魂
※ 鬼灯=ほおずき
・
真昼の
月の光は
青い宙に
解けている
しっとりと
それから
私の
ほほ笑みを
いのちに
くべている
俺の心象風景は
殺風景
砂漠の地下に
埋まる舟
落日を追いかける
お月様
洪水の空を飛ぶ
ドローン
俺の心象風景は
殺風景
風景は殺戮されてる
誰もいなくなった公園で
夕映えに照らされ
空に浮かぶ
白木蓮
小鳥のように歌っているよ
ゆっくりと
川面を流れ海へゆく
ため息みたいな声の寂しさ
逃げるのが
遊びだからと割り切って
正しい恋もできないくせに
よろこびに
震えてみたのは ....
,234、ねえ昔は一歩遅れて裏口からついて行くのが審美眼みたいに重宝されて、今では同時にスタートして、いいや、1、231、231、と先にフライングしても許される時代なんだから、置いていかれること ....
その頃 俺は
ピコピコハンマーを ピコピコさせていた
夕暮れが また通過していく
コンビニに行く
コンビニは24時間 コンビニやれてるから すげえな
俺は 24時間 俺をやれてる ....
おしまな!
(そうだね、お日様
(今日は良い天気だね
おじゃたまくし!
(ちいさな春の子
(おまえと同じ
(三月生まれかもしれないな
斜めに陽が差し込むと
ぼくたちも斜めになってたね
....
息するイメージの数々、
裸木の枝群れ陰影に消え
死の影の谷をいく光輪、
断崖絶壁の底迄眼前にし見据え
虚無の相貌に恐怖することなく
真夏乾いた庭に舞った狂女の如く、
自ら ....
序章 「橋」
瀬田川に架かる鉄橋に軋む音。光の帯は今を、過ぎた。
友人の引っ越し祝いで新居を訪問した帰り、瀬田唐橋の欄干から眺める
そこに拡がるものは、時の流れすら呑 ....
真夜中じゅうずっと悲しいニュースや情勢に耳をかたむける
おれの辞書にだれかが書き加えた永遠のせいで、
眠ることもできないから
雨が降りやんだ、その沈黙を
だれかがやぶって ....
傷ついた心は、高値の付く宝石
伝えるすべを持つ者たちが
言葉や音、像に添えて
ショーウィンドーに飾る
傷ついた心は、ため込まれた負債
精算できぬ者たちが
なけなしの硬貨と引き換えに
....
山の頂上から地上を眺めるように
時には
死から生を眺める視点も必要であろう
あと幾日こうやって夫婦で
ふつうに暮らしていけるのだろうか
命の砂は休みなく流れ落ちている
今朝は
春の陽光の ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141