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 掠れた日差しに 傘をすぼめて
 貴女の唇にすわりたい
 悲しく 梅の花が路を塗る
 あさの雨の うその雨の
 やがて間遠な 瞼
 みずからというものの
 庭先に 縁台をひっぱりだしてきて
 そんなふうな具合に 眠ることができた
 一匹の猫が日なたの埃のなかをこちらに向かってくる
 あなたを愛することができた よ ....
  肩甲骨
  と彼は呟いたが
  そこから話はどこへも進まず
  木管の音が間抜けに溢れる
  さっき沸かした湯が
  冷めていく
  嗚呼、
  髭。
  ねこが
  しみこんでいる路地
  空がきれいだ
  電線が微かにたわんで
  ビルのむこうまでみえる
  わたしたちが死んでいくのがみえる
  くろい函に
  颱風がつまっている
  ガラス製の 記憶より小さな、
  そのよるがふるえるのをわかると
  これは宝ものなのかもしれないとおもう
  血液の、くろい川の
   ....
  羊の影が
  小径を歩いて行くのがみえた
  人も居らず ごみばかり落ちている
  その小径は雨の臭いに満ちていて
  もう
  まもなく、
  日暮れが訪れる
  マフラー ....
  机に載っていた、何枚かの
  便箋は すみれ色をしていた
  グラスに注がれた玉蜀黍茶を空にするまで
  夕焼けをわたしは眺めていた……飽きもせずに
  複雑そうなものごとが、ほん ....
  栗色のひとみが
  風にさらされている
  窓のきわ、沈みゆく陽はとおく



  きょう、
  なにもいえなかった
  だからたぶん、あしたも
  きみになにもいえない ....
  首すじの まるい砂に
  あまい夢が 今日のしずくを落とす
  夕いろの、せまい、部屋のような瞳を
  ころがしてあなたは とかげの顔で笑う
  いつも 恋は速すぎるし、
  と ....
  うつむいて
  ひもをむすぶ
  しろいシャツに
  あかねいろが染みる
  今日はきみを 抱きしめたくはない
  ありふれたことばで 濁らせたくはない
  きみはうつむいて  ....
  女の手は 梨を食べたばかりで、少し濡れていた
  夜風を正面から浴びて 枯れ草たちが咽び泣いている
  角をもたない鹿が そこを踏み分けて奔り
  しだいに速度を緩めて止まる
   ....
  静かだった……
  禁じられていることは それほど多くはないはずなのに
  ただ、いくつもの瞳だけが 土埃に塗れながら
  風と風の間で何度もはね返っている
  男たちの沈黙はカラ ....
  水母は しばらく空気をさまよって
  やがて岩にぴったりと貼りついた
  月が喋らない夜に
  三角定規ひとつだけ残された廃校で
  誰かのあくびのように だらしなく伸びていく廊下 ....
  椅子に座り、瞼を閉じて 静かにしていると
  彼女の心は川の水に深くゆっくりと沈んでいく
  遠い、淵のところからあふれた透明なものたちが
  灰色にくすんだビル街を薄い膜で包みこむ ....
  朝がきた
  薄ぐらいもやの向こうに
  金色の光が輪をかけている
  あなたが いつか その手のひらに
  汲んできた水は だいぶ前に
  何処かでこぼれてしまったけれど
  ....
  土管のうえに猫がととのっている
  紋白蝶はさえずりのように風にふくらんで
  もはや言葉の色はしていない



  捨て去られた、黒い缶コーヒー
  夕空に向けて屹立してい ....
  貘の食べ残した悪い夢が
  きみの唇のまわりに散らかっている朝
  窓越しにみえる庭は 素晴らしく綺麗だ
  気丈な松の樹に 少しだけ雪がかぶさって
  玉砂利は少女のごとく濡れ  ....
  街路樹が震えている、冬
  あらゆるものに札がつけられた
  ふりはじめた雪に、砂糖菓子に さびしさに……



  水切り台に置かれたきのうのウイスキー
  それに口をつけ ....
  四角い形をした
  それは別れの言葉だった
  きみのくちびるは歌わない
  ただ、冬の風にかわきながら
  いいよどんだり
  いいまちがったり
  いいきったりするだけ
 ....
  あなたに梨の実を贈りたい
  寒く厳しい冬の夜に
  愛するあなたが
  梨の実の夢を見られるように



  くちづけは消えてしまうから
  抱きしめあった温もりも
  ....
  木枯らしに舞う枯れ葉よりも
  宇宙はその日 小さなものだった
  果物の冷めた肌のような けさの通り
  横断歩道を渡っていく {ルビ面皰=にきび}顔の学生は
  なぜ朝がきて夜 ....
  煮豆を口に運んでいるあなたは
  だれかの真似をしているふうなのだけれど
  わからないし どうでもいい
  椀に添えられた手は
  貧乏臭くひび割れているし
  化粧気のない頬 ....
  朝早くに
  古臭い詩をわたしは書いた
  潮水に濡れた岩間を縫って這うように歩く
  数匹の蟹の節足のことなどを



  カーテンのあちら側で降っている雨が
  薄笑い ....
  左手の中で牛が眠っている
  さっきまで右膝のあたりにいたのに
  もう一頭の牛は鎖骨のあたりで草を食み
  けれどもまもなく体を地に横たえるころだろう
  テレビで昔の映画をやっ ....
  雲が赤く染まる
  町はうずくまっている
  少し怪我をしているみたいに
  どこかで華やかなパーティーが開かれている
  緩められるネクタイ
  グラスの触合う他人行儀な音
 ....
  ハンカチに指で書いた
  とうめいなそのポエムは
  日なたと影のにおいがする
  歯をみせてわらってよ
  はにかんだきみの口元が
  不思議にうごくのも好きだけど
  高い ....
  向かいの家の窓から
  女が身を乗り出して下を見ている
  左手になにか小さいものを持っている
  それがなにかまでは見えない ここからは



  コンセントに埃が溜ってい ....
  三点リーダで終わりにしよう
  夕暮れ時、空は実に赤い
  今日は長いようで短かった
  


  誰が誰を裏切ったとか
  誰が誰を茶化したとか
  そんな与太話もやがて ....
   かなしさは夜のなかにある。



   体育の時間、ぼくはだれともペアをつくれ
  ずに、みんなが踊るフォークダンスを眺めて
  いた。それは濁った河を渡る水牛を眺めるの
 ....
  昭和と平成の間にはさまって
  押しつぶされてしまったような工場を
  眺めながら煙草を一本喫う
  犬の散歩をする{ルビ母子=おやこ}は
  怪訝な顔ひとつ見せず通り過ぎる

 ....
壮佑さんの草野春心さんおすすめリスト(50)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
唇と瞼- 草野春心自由詩422-7-2
存在と縁台- 草野春心自由詩322-5-27
- 草野春心自由詩222-3-2
ねこ- 草野春心自由詩9*22-2-23
颱風- 草野春心自由詩822-2-15
羊の影- 草野春心自由詩914-4-20
すみれいろ- 草野春心自由詩814-3-23
かなしみのかたち- 草野春心自由詩514-3-12
あまいゆめ- 草野春心自由詩814-3-8
風のあと- 草野春心自由詩2+14-3-5
エーテル_18- 草野春心自由詩414-2-1
エーテル_16- 草野春心自由詩414-1-20
エーテル_13- 草野春心自由詩414-1-19
エーテル_11- 草野春心自由詩314-1-13
むかしの歌- 草野春心自由詩913-12-20
- 草野春心自由詩513-12-12
王の庭- 草野春心自由詩913-12-7
記憶- 草野春心自由詩413-12-1
バラード- 草野春心自由詩313-11-24
梨の実の夢- 草野春心自由詩413-11-11
木枯らしに舞う枯れ葉よりも- 草野春心自由詩413-10-30
煮豆を口に運んでいるあなたは- 草野春心自由詩613-10-27
古臭い詩- 草野春心自由詩10*13-10-12
- 草野春心自由詩313-10-11
パーティー- 草野春心自由詩313-10-2
はにかみ- 草野春心自由詩713-10-2
鈍行列車- 草野春心自由詩913-9-28
三点リーダで終わりにしよう- 草野春心自由詩313-9-16
かなしさは夜のなかに- 草野春心自由詩20*13-9-13
工場- 草野春心自由詩10*13-9-1

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