雨を切る
水面のふたえの眼差しを
かたちとどめるまで震わせる
水上に口寄せる雲のとうげ
向こうは見えず雨惑い
みなもとに降る縦糸の舟が
あまさず小道を払いおとし
南の淵から流れる北へ
....
精神病院で夜勤の朝
朝の体操で
体育館に移動した
体調の良い患者30人ほどが
開放病棟から体育館に移動し
めいめいが
散歩したり
ボール投げしたり
軽い運動をする
病棟に帰ってき ....
ふたりで見た海を通る
消したい記憶を消せるほど
ぼくは澄んではいない
吹き消されない光の源
その物真似をしている
ふたりで見た海を通る
消したい記憶を消せる ....
正解は
どこの小道に
落ちてるか
キョロキョロしては
空仰いでる
点と点
つながるのかな
私でも
ジョブズのスピーチ
思い出しては
懐古主義 ....
萎み始めた意識の片隅に
かろうじて立て掛けてある
ギターの絃はたぶん錆びついて
降り積もる時間に埋れている
僕の指は踊れないから
意味を探してしまうから
残念ながらギター弾きにはなれな ....
天の上にいる方よ
もしも輪廻転生があるのなら
つぎはどうかぼくを大きな岩にして下さい
間違っても生命あるものに
生まれ代わらせることはしないで下さい
もしもどうしても生命あるものに
....
夜の通勤急行列車
ゆっくりだんだん蛇行しながら
「プシュー」と
最後に息を吐き出して一時停車
車掌さんのクネル声でどうやら信号待ち
皆も疲れて
「プシュー」と
....
発情スイッチ
午前二時
インもアウトも
無造作に
妄想奇しくも
花開き
癇癪玉が
割れました
誰か食らってくだしゃんせ
骨までしゃぶってくだしゃんせ
こんな女で ....
母の愛
懐かしい恋人
僕自身
僕の血がかよっていたはずの手袋が無くなって
とてもココロと懐が寒くなってでもね
怜ちゃんとドライブに行くの
羨ましいでしょう
あのうれない詩人の土屋 ....
じゅうじか?
ううん
かざぐるま?
ううん
なにかのかざり?
ううん
なに?
しゅりけん
チラシを細く丸めた棒を二つ
十字形に組み合わせて
セロテープでぐるぐる巻いてあ ....
父が撮ってきた家族の写真は
いつも後ろから
母がいつも文句を言っていた
どうして正面から
皆の笑顔を撮らないのかと
でもそんな文句を言う母の顔が
妙にうれしそうなのが
いつも不思議だった ....
あのひとは
気まぐれで意地悪
あたしの気持ちを
試すかのような言葉で
揺さぶりをかけてくる
かと思うと
子供のような
愛らしさ
彼は
いつも 大気のような優しさで ....
青い空を白い雲が流れて行く
さらさらと水の流れる音がする
地上から隔絶された空の楽園
ここには僕以外誰もいない
静寂と孤独だけが僕の友達
ささやかに続く平穏な日々に満足していた
あ ....
吹き荒ぶ二月の夕刻
山裾の疎らな住宅を
訪問営業でまわるのは
実に 切ない
長靴ギリギリの雪をこぎ
通りから玄関までの細道を通りぬけ
もはや顔面がかじかみ
鼻水が垂れている感覚すらない ....
飼っていた黒猫が突然行方不明
家の玄関の鍵は掛けていた
どこか窓が開いていたのか
窓から見える風景は
空っ風舞う冬景色
街路樹の葉はあらかた落ちてしまい
魚の骨の並木道
ふと見る ....
強く高みを掴んだ
脚に力を射して
秒速の息づかいを届けた
筋肉の震え
ハチドリの余韻
ふたごの虹
高音域を続けたのち
からだをつらぬく絹糸
歌はすべて感情から生まれ
歌はすべてあ ....
なんのために
歩くのか
それが死への行進であっても
もはや
退くこともできず
ただ祖國の土を踏むことだけを
夢見て
凍土を踏みしめて行く
泣く力はとうになく
乳さえ吸う力もない
赤 ....
ひさしぶりの渋谷文化村通りを歩く
フェルメールに会いに行くのだ
ハチ公前で待ち合わせて雑踏に紛れる
風は冷たくて肌に突き刺さる
沢山の愛や希望が行き交う街で怪しいふたりは浮いて ....
そこに 現われたるは たいらの釜塩なるぞ
そんなに しおしおしてるけど
だけど 手に塩 つけてみなよ
体の軸に じくじくと
大好きなこと わいてくるぞHEY
平家一門の話を言って訊か ....
笑うと金語楼になると
細くなった母の目を
指さしながら父が笑う
明るいさざ波が立って
子どもたちの顔まで
福笑いの目になる
母が笑う日は少ないが
その笑顔はぼくの
胸の引き出しにある
....
つめたいふねの
なかの箱
のなかにゆられ
ながら
じっとかなしみや
寂しさがしずむの
を、待つ
つくりかたも
わすれた
渇きだけ
の風が少しだけふく
上から
スポットライト ....
ため息を
つきたいがための
ため息に、くもる窓
渦巻く言葉の上辺には
夢を、
夢らしいものを、
夢と呼んで安らぐものを
もとめた日々が
静寂している
ゼロにも満た ....
今朝も
様々な具材を乗せて
すし詰め電車が
発車していきます
季節は冬ゆえ
暗い彩りになることは
ご容赦いただきます
味は
休日明けゆえ保証します
たらふくご馳走を腹に溜め込 ....
感覚は、何かがあることを教えてくれる。
それはその物が何であるのかは伝えないし、
その物にまつわる他のことを伝えてもくれない。
ただ何かがあることのみを知らせるのである。
(C.G.ユング ....
最初に
魚影がよぎる
同時に
背骨が見つかることもあるが
大抵は時間がかかる
次に
尻尾が見つかるが
順番が逆の時もある
頭はどうでも良い
後で取って付ければ良いのだ ....
今ごろ何しているのかな
きっと趣味のデジイチを首から提げて
お気に入りの被写体を求め
谷根千あたりを自転車で走り回っているのかも
そんな感じに好きなひとを想ってみる
なんか幸せな ....
食べる 食べる 私は食べる
鬼か 悪魔か
私は今日もヒト狩りに向かい
心を いくつもの心を
捕らえてくる
汚れたテーブルの皿に
煮込まれた心が
盛られている
様々な心は
東から上 ....
置忘れたチェロのように
湿気た香気を曳きづり
レモンの輪切りに一瞬、鮮明になる
あなたの狂気ほどの余韻
そのなかに
モーツァルトのタクトが
華奢な骨格に納められる
青白い石膏のくちびるか ....
広島へ続く国道混んでいる海辺の道は平和へ続く
僕が持つ遠い記憶に刻まれた愛という文字深く濃くなる
数えても数え切れない命ある枯れ葉混じりの帰り道急ぐ
冬景色白い大地を染める夕陽 ....
やはり
マグロは天然ものにかぎるなあ
などと
食通を気取る人が言う
今時は
くるくる廻る寿司屋にも
天然ものが
マシーンで握られた
しゃりの上に鎮座している
人間こそ
全て ....
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