この坂道は君とともに上った坂道

ふたりして登坂の辛さにあえぎ
君の差し出した手のひらの熱さに驚きながらも
未来への扉が垣間見えたような気がして

したたる汗の交わる戸惑いと
きつく握り ....
歩いている。
あてもなく歩いている。
すっからかんの着のみ着のままで
歩いている。

足下には星屑が輝き
頭上には異様に大きな月が
幾つものクレーターを見せて
垂れ下がっている。

 ....
 .... いくつもの賭けをした

あの坂道を
はやくのぼりきった方が勝ちだ
瓶入りのコーラを賭けて

角の犬に吠えられたら負け
一杯の牛丼を賭けて

先に恋人のできたほうが勝ちね
きれい ....
祝祭をかたどる歌が
背面にひろがる
真っ黒の水面に
跳ねる

雨を待つ暗がりの眼窩から
月がふたつ
とろり、
こぼれおちて
まぐわう男女の
たかまりゆく濃度に似た
風がとても ....
「ショート」の意味も分からずに
スポンジとクリームに
苺のしっかりとした感触と
ジュっと感じる酸味も一緒に
一回に二個は味わうショートケーキ。
チョコケーキのほんのりした苦味も
少しば ....
お面屋さんを通り過ぎた

額の左側にドラえもんをつけた真っ赤な頬のアンパンマンは

ひょっとこみたいな顔で

指をくわえて林檎飴に見とれている


 +


浴衣については一言 ....
いつもの安くて多い
路地裏の高架下にある定食屋に入る

食券を買って
店員さんに渡す
1分も経たぬうちに飯が出てくる
店に入るときも出るときも
店員さんとの会話は無い

電車が走る騒 ....
昨日の今頃は
熱帯魚の水槽の底で
揺れていた

赤色と紫色と肌色の
尾びれをひしゃげて
これ見よがしに泳ぎ去る魚達

置き場所に困った
僕の視線は水泡となって
溶けかけた空が浮 ....
あなたの詩に抱かれていたい
僕は乾燥し切ったせんべいです

あなたの詩を抱いていたい
僕は受信感度の悪いラジオです

あなたの言葉の調べで眠りに就きたい
僕は炭酸の抜けたコーラ

 ....
エプロンの隙間から落ちた
桃の まだ小さな実

天気の良いうちに選った
たくさんの粒のうちの
枝から 切り離したひとつ
玄関にあがりこむと
ころころん コンクリートに転がった

桃の ....
今年初めての茄子が採れたので
お義父さんが好きだった
茄子味噌炒めを作ってみました

だけど、いつまでも残っています
冷蔵庫には
茄子一本分の茄子味噌炒めが
ぽつん、と

美味しくな ....
携帯電話を略して
ケータイと言う
それでは
携帯という形態だけが
うきぼりになり
電話としての
機能を失っている
たしかに
失っている
電車の中
学校の中
レストランの中
エト ....
 ア

ワ 
 
 ブ




ぷわりぽわり


ワキンの溜め息


見た目はすくいたがりの彼氏
見た目はすくわれぶりっこの彼女
ついでにすくわれた私

本 ....
産卵

この部屋には何も無いので困ります
埃をかぶったカンバスには
塗り潰せる面は無く
それだけの量の絵の具も
それを買える金も無く
絵筆もみな固まって使い物にならない
リンシードも筆 ....
雨の日は おうち遊び

メールを待ちわびて

ひとり遊び
鍋に牛乳を注ぎ
砂糖を適当に入れて
冷えた状態で
とりあえず木ヘラでかき混ぜる。
鍋底はザラザラし
固体の砂糖をすり潰してるようで
なんか悪い気がしてくる。
ザラザラ感が薄まって ....
16時から仕事のきみには
10時半は夜中の3時

まばらな髭と
からまるシーツ
ぜんぜん正しくない場所で
持たない同士で
持ち寄らず
なんにも奪わず
抱き合った

夜がくるの ....
へやのそうじをすると
どうしても過去と決別しなければ
綺麗にはならない
空白を求めて
すきまとすきまのすきまを
すいすいと箒をおどらせ
過去の塵をはいていく
ほこりはずばり過去そのもので ....
 
 
空地で少年たちが野球をしていた
打球は大きな弧を描き
空のどこかへと消えて
二度と戻ってくることはなかった
家に帰るとリビングの隅に
ボールが転がっていた
返さなければ、と思い ....
沖縄出身らしいコンビの片割れ
何言ってるのか聞きづらいんですけど

それとは違うんだよね




前を向くってさ

結局のところ、そう言うことなんだと思う

しつこいぐらい諦 ....
頭のどこか奥のほうで
水が、
ごう、
と音をたてた

やさしく響く音楽のほとんどが
ほんとうは悲鳴に由来していることを
習いに学校へ行く
聴いているふりをしたり
聴いていないふりをし ....
私は名付けられます
飼い主が逃げるたびに
何度も何度も 私の名前が変わります

今年も名前が違います
飼い主に左右されながら
今日を生きています

今日も此処に足を運んでくれて
フラ ....
あの日 あの時まで 生きていた人がいる

朝は新聞を読んで
トーストを食べたのかもしれない
ランチは簡単にコンビニで
カロリーの少ない弁当を選んで買ったかもしれない

あの日 あの時 そ ....
差していたビニール傘には
雨が滴となって付いていて
細く包めるときに
水となって手に拡がり付いた。
とりあえずズボンの生地で拭ったら
沁み跡として残った。
湿気を帯びた空気の中
黒髪で太 ....
{画像=110618182721.jpg}

ふと目を覚ますと聞えて来た
あれは風の音!?
水を跳ね飛ばし走りまわる車の音
でも遠くうねっている潮のような音だ
風にもまれる木々の音に交じっ ....
 {引用=CHAGE&ASKA「SAY YES」への返歌}

  余計なものなど無いよね
  ……っていうか
  何もないよね
  仕事やめて
  ミュージシャン目指すとか
  何?
 ....
笑いながら傷ついて
そうして大人になってゆく
だからみな
笑顔が儚くなって
発しない言葉をまとって
薄くなるのは
影だけじゃないのでしょう
重みをましてゆく年輪は
だれかを想うという
 ....
 家庭菜園
 借りようね

 肥料は君が
 出してね

 ずるっ
 どうしてあたしだけっ
 とかって
 言いたいのかな

 だったらさ
 僕が死んだあと
 散骨とかしてもらっ ....
身ごもった妻が慌しく、出勤していったので 
休みで家に残った僕は 
巻いてる暇のなかった水天宮の腹帯を 
胎内と等身大の赤ちゃんの絵を包むように 
ぐるぐる巻いた 

紙と帯のすき間から時 ....
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