中央アルプスと呼ばれるこの山々は
今でも年間数ミリ隆起しているという
主峰、木曽駒ケ岳の山頂からでも見えない
はるか太平洋の海底の
大いなる力に押されて

遠州灘で雲になった水蒸気は
天 ....
雨の音聞いているのか夏至の犬 コーヒーショップに夏が来て
向かいの席の女子高生が
ブルーソーダを飲み始めた
青い液体をストローでチュー
コップの中身が減っていくにつれ
女子高生は足先から海になっていく
水位は下腿から太 ....
夢の扉の向こう側に
絹の衣装を纏ったあの時の
嬉しそうに君
幻になった
君の
優しかった歌
ユリの花束も抱え切れないほど
飾って置いた無傷な部屋


/海底に沈んでいった記憶の ....
雨のてんてん
つなげば文句ばかり

だから言いたくないの
なんて結局言うくせに

女は無口じゃいられない
静かな雨はないように

景気よくうちならせ
壊れたバケツもうたいだせ
    わたしのなかに
    雨がふる

    あなたのなかに
    雨がふる

     さらさらと
      しとしとと
             

   ....
血潮、とノートに書いて貝殻のなかにたしかに海があったと

隣席のヘッドフォンから砂の音が聴き分けられる夏の江ノ電

ふたりで海を見たのは一度 いつまで、と互いに決められないままいた ....
途中で途切れた時刻表は
遠い昔に自分で書こうとして
そのまま諦め
しまい込んだものです。

今引き出しの中で見つけ出し
ボロボロになった時刻表を
膝において眺めていると
随分、発車時刻 ....
「水の中の六月」

錆びた鉄の味のする手摺を伝って
空っぽの水槽を満たそうとする早朝
浸水された浴槽の縁を滑らないよう歩く
生まれた時から水に溢れていた




「駆け落ち」

 ....
中庭の芝生の上に
プリーツスカートを
花のように拡げ
背筋を伸ばし、
聖書の言葉を引用する彼女は
修道女みたいで
美しく聡明なその先輩を
私は崇拝していた
(彼女は廃部が既に決定し ....
 今夜の月は何か変だ

と 思ったその時
小さく ひびが入り
――欠片が落ちた
何かが動いている

 えっ ひよこ?

一生懸命
殻をつついて
転がりながら
可愛いらしい姿が
 ....
壁にピンナップされた僕らの写真を見ている 時々締め付けられるように過去が蘇るのだが
時間の不可逆性は 僕の味方ではないようだ

一人静かに時を消費することにも慣れてしまった もちろん本意ではない ....
天気予報をみてみると
昨夜は南南西3メートルを
子守唄に眠ったことがわかった

眠っていたのは惜しいかな
窓を開けて風を招いて
お茶でもしたら良かったかも

風の好みはミルクティー
 ....
{引用=
Please take it away.
It makes me lose myself.


森は、
そこも かしこも
ひぐらしの みぢかき命をしぼる鳴き声


高嶺へ ....
目を細め少し太陽眺めてた黄金の海波打っている

細胞が活性化され元気いい身体の奥から湧き出るように

故郷へ続く道程狭い道観光地があり渋滞ばかり

細胞が活性化され元気いい全身に光流れ喜ぶ
ぷらすちっくの小さな筒型の編み機には
五つの突起がついていて
人造絹糸を星のかたちに結わえたら
それが
りりあんの始まり

食べ散らかした夏蜜柑の皮
白黴の生えた白パン
蟻の住処は大洪 ....
闇の帝王がその音色を奏でると、聴衆の動きがはたと止まる。
このトランペットの音は全ての世界を超越していたのだ。
そこに新たな魔王が音色を重ねた時、聴衆はもうその場から逃れる事すら困難だ。
夜 ....
  蜘蛛の足が
  多すぎるからと言って
  面白半分に引きちぎる子供

  休みの日が
  長すぎるからと言って
  魚を釣り上げたあと
  血まみれの口から
  針を引き抜く釣り人 ....
桃の実をすぐるため
はしごに登って高い枝に手をのばす
少し時期が遅くなったので
実はピンポンボールのようにまで
大きくなって 枝一杯になっている

このままでは多すぎるので
適当な間隔を ....
 
夜の町に少女がひとり

悲しい涙、うれしい涙、喜びの涙、いりませんか

あっ、きれいな涙だけはまだ心であたためているところです



 
大輪の薔薇の下で咲く雑草に語りかける者のはいるのか

せいいっばいに花の姿を真似て見ても
日陰に生きる陰湿な風貌にふさわしい飾りからの残酷な香りは隠す事は出来ない

ひと葉 ふた言、言ってく ....
*壱*マダナイへの手紙

「あの猫の名前はマダナイっていうんだ」と、教えてくれた人がいた。
ああ うわさは聞いたことがある。
明治の文豪の家に 飼われていたという 噂だった。  ....
 なにかになる

 と願いながら、
 まな板の上に

 かみねんどが
 しろく しろく
 うずくまっていて。

 なに者にも
 なれないままに
 ただ 干乾びていく。
 ....
決して退屈なことではないのに
夜空の静寂は
孤独な人間の沈黙とも
全然違ったりする

恋をすることで
時間が過ぎてゆくのを忘れるとき
最近の彼女は欠伸をする
だから僕には
彼女の欠伸 ....
バーカウンターで一人呑んでいると

ひとつ空席を挟んで 右隣のサラリーマン風の男が言った。



「どうせ俺は会社の、一つの歯車に過ぎないからさ」と。



おいおい、冗談じゃない ....
      月のない夜、石けり遊び 
      進める升目は一夜に一つ
      蹴った小石がしじまに光る
      あなたの石はずうんと進み
      あがりをひとり先に ....
簾越しに夏の太陽

舗装されていない通りの先

木造の橋をトコトコ渡る

爺一人

手ぬぐいを首に巻き

麦わら帽

やぁと挙げた掌に

いくらか赤みを帯びた顔の皺

 ....
人は
はぎとった他者に
記し
記してきた

鳥は記さない
慈しみあう
つがいの声は
白い森に響き
溶けて消えていくだけ

{ルビ草子樺=そうしかんば}は
カバノキ科シラカバ属  ....
泥を沈めた水田が
澄んで
さかさまに写す
熊笹
イタドリ

ヒメジョオン
ミズナラ
ブナ
岳樺
胡桃
落葉松

ヤチダモ

山はまだ若い緑で
ふんわりと盛り上がって ....
青い雨が降る惑星で
ディーラーの投げる裏表のないコイン

表に賭け、表だと告げる

なあ、あんたなら
この星が買えるまで稼げるぜ

女たちが歌う

誰も外を見ようとしない


 ....
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