だれかの帰りを待ちながら
とんとんとんと野菜をきざむ
だれかの帰りを待ちながら
からからからとグラスを鳴らす
だれかの帰りを待ちわびて
ぽろぽろぽろと頬ぬらす
今度生まれてきた ....
まどのこちらで膨らむレース
とぎれなく ひたながく
ひかりでいっぱいにささくれた
哲い うすみどりの風がおしいるのは
それは祝福ですわと
すずめたちがけたたましく喉をまっすぐにする
色とり ....
つぶやきでなくささやき
誰かがいるなら
みんなそうだったはずだ
この街の山並みになれて
朝に照らされて
涙も流せずに果てていた
愛はぼくに練習させる
その ....
蚊の鳴く声に起こされる
繋がりなんて無いと思っていた
見えないものは信じないと
決め込んでいた
飛び交うのは
想像したくないものだと
決め込んでいた
見えないものは
ふれあえないものだと
勝手に案じて ....
・23:18
入れましたか、と聞こうとして
いつも手を伸ばしてしまう
爪の先から痛くなる
ひとから施された病だ
留められている
でかけたままの姿かたちで
感受性を ....
女子十二楽坊のはなしではない。
もちろん彼女たちもまるで天女のごとく神々しく映るのではあるが。
僕の中学時代のマドンナはピッコロを吹いていた。
紛れも無くルノアールの美少女にも似た麗しのいと ....
カップがソラだとしたら
コーヒーが注がれて
夜が来る
苦い夜がニガテであれば
ひとすじのミルクが注がれる
銀の匙は使わない
やがて白い雲は 時間に溶けてゆく
どこかに月が隠れて ....
葉を散らし、葉を散らし
刺々しい肌に手を触れる
ほろほろと崩れる外側に
掠れた自分を重ねてみる
空気が凍った森で
ひとり
皮を剥いで、皮を剥いで
痛々しい肌 ....
愛されたかったと
声にも出さず 紙にも書かず
降りしきる錯乱に耐え
笑い立つ秩序を嘲り
愛という概念だけを知り
愛という無に向かって超越を繰り返した
生まれてからずっと孤独だったと
冷た ....
冬のショーウィンドウ
ドレスを脱ぎ捨てたトルソ
首の断面
剥き出しの木肌に上塗りされた塗料が
照明の光を湛えている
展示替えの前夜
殺風景なガラスの舞台
控えめなネックレスだけを身に ....
友よ 教えてくれ
いったい何処へ行くのだろう
君とは長い付き合いだ
離れてはいても仲間たちと繋がり合っていた
私は決して孤独ではなかったが
すぐ側にいた君と親しくなるのに時間はかからなか ....
吐く息が部屋のなかでも白を語る
かじかんだ爪先に靴下を与えるでもなく
窓の外
早すぎた目覚めがかなしく
ひとりを悟る
{ルビ時間=とき}に負けて
遠のいてゆくあなたの微笑みは
ま ....
「を」の人
鍵穴を
開くための 旅をしている
夜空は うすら明るかった
暗かったのは むしろ樹木のあたりだった
いきものの息遣いがするほうが 暗かった
なにか隠され ....
讃辞
あなたのセーターは暖かそうだ
あなたの体は温かそうだ
あなたの体温は優しそうだ
心が優しそうだ
犬
霧雨がそぼ降っている
門灯はあかあかと
門扉は堅く閉ざされ ....
昔
会社の中の仮面に疲れた人が
仮面を脱ぎ捨て 本当の自分になろうと
素顔で生きようと 闘争を挑んだ
だが
周りの仮面はそっぽを向いて
会社の素顔から出るむき出しの刃
....
わたしはまだ、
本当の血を流していない
わたしの足元から
見えない厚い雲が
ゆっくりと動く
雲と呼吸を合わせると
静かに痛む、
嘗てのわたしの部屋
大きな流血の ....
悲しんではいけないよ
なんて決まり文句
どこでも拾うことはできるけど
悲しみ
そこいらに落ちているもんじゃない
背後から黙ってやってきて
いきなりけられるようなもの
泣いてはいけ ....
すっぽりと紅葉を被り
ひのひかりを浴びる
こっそりと山を歩きながら
誰にも気づかれないようにと
鳥の鳴き声をまねて
飛んでいく
雲が急に流れだし
しっとりと山 ....
青空の下で歌いたい
防音壁に囲まれた
カラオケボックスの中でなく
往来の真ん中で歌いたい
国会議事堂でも歌いたい
処刑場でも歌いたい
葬儀場でも歌いたい
教室でも歌いたい
職場でも ....
{引用=
冷たい
雨がふりだした
雨宿りする安らぎの軒は、どこにもなかった
若いものは 走りだし
きた道をもどり始める にぎやかな娘たちも
年老いたものは 天をあおぎ
荷を背負っ ....
万馬券的中したの報告は誰にもできず独り焼き肉
記憶はなにを食べて生きながらえているのだろう
指先から冷えていくのを彼女はまだ気づいていない
埃を吸ったあとの掃除機をそっと抱きしめる
モーターの余熱が伝わって やっと明日につながる ....
月の舟に乗って
子供たちは夜を往く
魔法の絨毯
空飛ぶ木馬
月明かりに照らされて
夢を喰らい
子供たちは夜を往く
月の舟に揺られて
夜はそっと更けて行く
月の舟に乗っ ....
酒を飲み普段出来ない話する酔いがまわってよくわからない
愛してる愛されているそんな日々時間忘れて過ごせる秘密
昼間から夜へと変える黒いもの街の明かりは命の光
僕が今見ている世界 ....
寒中恋酒女
壊中金銭薄
身中満妄念
偲遠過去多々罪障
望月落涙虚
残少人生希清廉
要身辺整理整頓
遥山冠雪語狭小我
宇宙大深志更遠
自由何処在 ....
明日の色は
だれにも見えない
必ず見えない
もしかしたら、とか
うまくいけば、とか
思いを
重ねれば重ねるほど
夜は深く染まって
真っ暗だ
....
フレドリック・ブラウンの死にいたる火星人の扉という創元社の文庫本
推理小説だが
彼には火星人ゴーホームという超絶な作品もある
火星年代記というレイ・ブラッドベリの名作
火星の赤い砂はア ....
起きたら10時ごろで、弟の友人が来ていた。
雨だった。
携帯について語っていた。
出ていって、また寝た。
昼すぎ帰ってきて起きた。
隣の部屋で、買ってきた携帯の設定がピロピロ鳴っていた。 ....
近代美術は嫌いだといった
きみへの報復
変な絵じゃなきゃ 売れない時代
{ルビ現実感=リアリティ}なんて
誰一人 求めちゃいないのよね
とも悲しそうにきみは言う
そう 世界は変わっ ....
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