煩わしさは 私が呼んだ
せっかくの余裕をもてあそぶ愚かさが
煩わしさを 愛する風が連れて来た
私に敬意を払い 見返りも生まれることなく
愛する風が 連れて来た
煩わしさは 私が呼んだ ....
どうしても言い出せずに
降り積もってしまった言葉の灰を
掻き出す術もないまま
人気も疎らな遊歩道をそぞろ歩く
いつまでも辿り着けずに
色を失くした街を漂う吐息の白を
飲み込む術もな ....
浜の足跡
とうに消え
浜のお城も
とうに無い
あの子も
あの子も
帰っていった
帰るべき胸へ帰っていった
母さんのシチューが
湯気立てる
初冬の台所
覗き込む
その ....
夏の陽にやけた
見まがう
まっかな顔の 猿でした
林檎をさしだしたのは、 山女の手
それとも
猿のほうでしたか
やってきた
凍てつく冬の むごたらしさを
誰かに
ののしりたく ....
横になって感じるナンバーは ライオン
野生の猫の たてがみの美しさは 17
おきあがれない日
かなしい日
戦っていない日
子猫のように爪をといでいる子が大勢いて強さを誇っていても
気 ....
病気を拾ったわたくしは社会に適応するために
必死で明るい人間になろうとした
でも限界がきたから
少し降りて
作業所に通い出した
それからだろうか
「はたらけはたらけ ....
気がつくと
このところずっと
背中を
壁につけていた気がする
壁は
崖なのかな
盾を
背負っているのかな
前への注意はしているけど
なんて考えていたら
壁からの
....
良い人は扱いやすさで軽んじられる
良い人は時に利用されて捨てられる
良い人はもてない分だけ深みが増す
男女交際において
良い人という呼称は決定的なダメージの象徴だが
良い人が好きだ
....
夫婦喧嘩しながら
酒を飲む
楽しい酒ではないけれど
つまみのイクラを
一粒一粒舌で潰しながら
時が過ぎていく
その一瞬にも
互いの言い分が述べられて
これは生きてい ....
お友だちあつめて内閣つくるなよ
パパくれた国という名のおもちゃ箱
棚ぼたを民意と言い換えほくそ笑む
某首相尖閣諸島に島流し
変わり身のオセロを凌ぐ鮮やかさ
日銀を悪魔に渡 ....
森の中に『くまカフェ』がある。とんがり屋根の丸太小屋。夏にはハーブが咲き乱れた庭も、今ではすっかり刈り取られて、来年の春を待っている。
店主のシャルロットが開店準備を終えて、窓のカーテンを開 ....
ポンポン雲が青空に
向かいのビルは墓標です
冬がなんぼか寒空に
墓標は死者の眼差しです
あかるい砂漠が
くらあく湿る
にんげんたちが
くらあく陰る
そうさグッバイ
ポンポン雲が青 ....
ひらがな、が落ちてくるように
迷いながら雪が降ってくる
日本にちりぢりになった
あ、い
どれだけのあいの組み合わせが
あるのだろう
やがて
あ、と、い、は
溶け合って境界線をなくす ....
冴え々え光る三日月と
冬の冷たい夜気の風
今一度(ひとたび)正常な神経を戻せるようにと
ただただわたしに降ってくる
(赤子が欲しけりゃ薬など
飲まん方がいいんだけども)
あれほど ....
なくならない
昨日のむなしさも
紅すぎる夕日の色も
いつかみた映画の感動も
ありがとうっていわれてドキドキした鼓動も
失恋ノナミダも
やさしくしてもらったことも
あのときこうしてれば ....
僕の時間の砂が
指の隙間から零(こぼ)れ落ちる
さらさらさらさらと
零(こぼ)れ落ちる。
そのまま風に吹かれて
失われてゆく
砂の想い出
人生の終わりまで
掴(つか)んでいたい ....
だって夢に出てきたのだから仕方ないじゃない
まさか個人の夢にまでイチャモンをつける奴もいないだろう
で、そいつがさぁ。人間みたく二本足で走って
夜の街をぶらつくオイラの方へと身体を揺すりながら向 ....
冬は突き放すような抱擁
軽くドレスの裾を振るだけで
白い吹雪が真昼を閉じ込める
冬は火傷するほど冷たいキス
サイドミラーの氷を指先で落とすと
風の中 君の声が聞こえてきた
子どものころ ....
私は穴ぼこだらけ
のそのそと歩きまわり
山の斜面にぼろぼろ突き出た粘土を掴んで
くにゃくにゃ捏ねて
ちぎって少しずつ穴ぼこを埋めていく
何だか安心する
舗装された山 ....
底冷えやオカマ紅白歌合戦
何もかも、失ってしまった。
そう思えてしまった時には
自分の手のひらを、そっと開いて見てほしい。
確かに、その手のひらには何もないけど、
だけど ....
お母さんに
手紙を書いていたの
泣きながら
眠ってしまったの
おねむりなさい
おねむりなさい
深く優しく安らかに
君の夢の中で ....
弱として
私の子宮が主張する
私は所詮女であると
別段愛撫がしたいわけでも無く
だが時たま
私の子宮が
「私は女だ
私は女だ」
と主張する
....
よく通る口笛ひとつ風道に草の穂ゆれるいつか旅する日
風あかるい野は海の底くちづける花のあわさに惑う光を
{ルビ過去=すぎゆき}はさびしさ抱きけれどただ慰めるうた風と聞こえて
....
空を切り裂く
稲妻のような
赫い時を駆け抜けて
蒼く険しい道を
手探りで辿ってきた
背中には黒い影法師が
張り付いていた
コンクリートの孤独が
骨を溶かしていく
そして今は
....
かなしみを知る人の瞳に
映る光は
美しい矢を描く
夜を知る人の瞳に
映る光を
星と呼ぶ
いつか必ずなくなるさだめの
命もまた
美しい矢を描くだろう
天涯のあちらこちらに
美 ....
愛はみな
神様みたいなバクテリア
こころの隅ほど繁殖しやすい
雨にふれ
言葉は胸にかくまわれ
幾百幾千、増殖をする
アイ・ラヴ・ユー
弱みをにぎる一言はテ ....
日曜日の夕方
群青色の冷たい空
閉じ込められたような
地平線の端がじわりと燃える
正解がないのは
どの道を選んでも同じ
世界を美しいと思うのは
積み上げられてきた
歪な歴史 ....
{引用=
「 月曜うまれの子は、器量がよい 」
―――――― マザー・グース
マザー・グース、 マザー・グース
お前はなんでも しっている
....
今日も待ち針を刺す
心の縁に
ずれないように
歪まないように
一針一針
ゆっくりと
ただまっすぐに縫いたいだけ
私の心の裏側に
注意深く
ちくりちくりと
針を刺す
明日は真っ直ぐ ....
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