ジグソーパズルの
欠けた1ピースが
見つからない
左目をなくした
モナリザが恨めしそうに
見上げている
完全であることに
恋焦がれる病が
再発したらしい
散らかった机 ....
まな板の上で
かつて
生命を有していた
魚が微笑う
深い海の記憶が
プチプチとした卵のかたちをして
銀色に膨らんでいる
今にもビッグバンを起こして
マリンブルーの
星の卵が
膨張しはじめる気配
....
警鐘を鳴らすのが
あなたの仕事
プライベートも
落ち着かない
アンテナ
ピンッと張り巡らせて
休んでなんか
居られない
いつもどこかで
争いが起きるのを
止めなければ
....
放浪の俳人・種田山頭火の、
昭和8年(1933年)10月15日の日記。
私は酒が好きであり水もまた好きである。昨日までは酒が水よりも好きであった。今日は酒が好きな程度に於て水も好きである。明日は水 ....
〈その1〉
乳首の無い乳房をどうすれば良いか
それは一体何になり得るか
これほど寂しい物体はない
これでは彼が愛撫を飽いてしまい
―― この上で赤ん坊は死ぬのだろうか
そんなの嫌だ
そし ....
何が伝えたいの
何が言いたいの
ちょっと待って
小出しに話して
人は心を閉ざすと
戸の外では
話を聞いてくれない
悪い事をしていないのに
日本人は島国根性
よそ者を受け入れな ....
望んでない炎
炎に{ルビ塗=まみ}れた稲わらが強引に{ルビ傾=かし}げる
カーテン越しから囁く者たちは
そこから離れなさいと
ただ 唇を動かす
ありえない色
塗り替えられた あの土地 ....
めだまやきには
苦痛をともなうべきだと
たまごがやかれ
失われるのは
とりのめだまの
源
だった
きみとしろみとその他もろもろ
たとえられて
身のぎせいを
あじわっている
なんて ....
き、き、
夏空にもくもくと湧き出した巨大な雲たちの間に間を、眩しい白の半袖シャツを着た大勢の子供たちがまるで天使のように飛び交い、
き、き、
炎を混ぜた白い煙をさかんに吹き出す二階建 ....
あなたのことが心配で戻ってきました
と言う男がいて
へっと思った
あたしは
その男のことをそのとき初めて見たのだけれど
まるで ずっと昔から知っているようなふりをして
腰のあたりで ....
100歳の詩人のまつ毛には、虹が架かるらしい。
「涙が出さえすれば、虹になってるんです」という。
ふしぎがりの詩人 まど・みちおの映像をテレビでみた。
「自分のここ(まつ毛)に涙、小さい虹が出て ....
肌を剥き
熱を忍ばせたら
恋になるとでも思っているのか
あの人なら
触れずとも
私を炙る
腐るぐらいに
あのころのぼくをときどき思い出す
お寺で不動明王をみた
石でできたお不動さんだった
こわい顔というより
こっけいなほど醜い顔をしたお不動さんだった
つぎの日図工のじかんに ....
....
おまえら、大丈夫やからな、
ライトアップされた校庭で
サッカーを練習する少年たちにそう声をかける
こんなことくらい、大丈夫やからな、
くそ忙しくて、しんどくて、おまけにこんなことまでおこっちま ....
夏だから腐らないよう注意しよ 好きなあのひと結婚したって
数学の教科書の端に
赤ん坊と女の子の絵を書いた
学校に通っていたころ
妊娠して学校を辞めた女の子が
頭の中を通ったみたいだった
次の日になって頁をめくると
白い女が赤ん坊を抱いて
昨 ....
車の中で弁当を食べた
月曜日
そうすることが好きだった
女の間で染みつけられたような
いつのまにか 染みついたような 生活
人は何を探して見たことのない世界をさまようのだろう
....
ちいさな命たちが
炭素でできた液体で
ながれ星
そう書きあげた半紙が飾られていた
ちいさな命たち
彼らもまた宇宙の炭素なのだ
{画像=110726012953.jpg}
はるか大昔に天子が山頂にのぼり
おお我が美味し国よと祝詞を上げた山は
小さいころの遊び場だった
山の中腹には幾つか洞穴のようなものもあって
....
京の街中に引っ越してきたのは
師走に入った頃でした
世間も僕も慌しい頃でした
東向きのベランダの彼方には
百年の風雪に耐えてきた
銀瓦の低い峰々が連なっていました
午後の北 ....
そのひとが
どんな人生を歩んできたのか
二秒のすれ違いでは
理解できないかもしれないが
考え始めることが
何かのはじめ
漠然としすぎているから
ためしに
どういう風に髪を洗っている ....
「リサイシャです。」
突然の呼びかけにハッと顔を上げる
カウンター越しにその女性は佇んでいた
小さな女の子を二人連れている
一瞬 何と声をかけようか戸惑う
胸の底に沈殿している ....
犬猫とは違うことぐらい
判っているよ
※
でもね
薄汚れた服でサンダル引き摺ってた女の子
大切にしてもらっているのかな
パートのお母さんと
いつも家でタバコ吸っている男の ....
君の透き通る眼差しで
僕を照らしている間
淋しい夢にうなされて
一人ぼっちで泣いている事がある
僕が起きるのは
決まって暗い部屋
今日も
君はどこにいるの
と
見回し続ける
君がいるはずの部屋か ....
金魚鉢に金魚
上から覗き込むと金魚
胸鰭を動かし
尾鰭を動かし
背鰭を動かし
何となく静止する金魚よ。
夏だけ生きている金魚
ほんの数リットルの水に漂う金魚
横から観ると大きく見え ....
{画像=080713215510.jpg}
*
街角に子供が一人
地に染みる影を従え
かくれんぼする
*
吾をまね
地 ....
飾り部に出入りされている木の
皮をはがせば しらじらと
預けられていた夜中が
てっぺんから ひるがえり
白い髪を吐き まるまり落ちる
梳いていた指達
歩いていた足達
口づたいに行く ....
緑色が波打って
濃くなって
育まれている
数えきれない夢たちを
数えてみる試み
1から10まで
10からまた1にもどる
5、くらいでたいてい数を忘れるから
また1にもどる
本当の ....
水浸しの裸を抱いた。夜のどくどくと凪いでいる日々だった。
川はあかるく光を受けて、真っ赤に血液のようにきっと球体をはこ
んでいく。すべての一過性がここで収縮している。看取り、看取ら
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174