不安のきえない夜は
こうやって
雨の音を聞くんだ
ひっそり こっそりと
しばらくはやまないよ
焦ったりしないで
明日に追われたりしないで
そこで ....
くずれおちて 波に
さらわれても いつか きみの渚に
ながれつき たちあがる 砂の城で
愛のために そして死のために
おなじひとつの 星座をうたう
ころがる
しずかな すいへいせんの上
あさ
お茶をわかしながら
てのひらで
背骨をなぞった
恐竜のように
そらへとつづく梯子の ように
あなたが
つづいている ....
今僕は、ショパンの曲を聴きながら、以前古本屋で手
に取った「吉野弘詩集」を開いています。薄く赤茶けた
表紙の中心には太陽らしきもののデッサンが描かれてい
ます。なにげない日常の場面を描いた「夕 ....
空をさす小枝のような
父の指に
赤とんぼがとまる
お父さん
声をかけると
赤とんぼを残して
父は飛んでいってしまった
驚かせるつもりなんてなかった
いい年をして、と
笑われるか ....
かじかむ理由は
雪ではないね
それは
雪のなかでこそ
探せるものだけれど
雪そのものは
寝ているだけだね
てぶくろは
つかのまの嘘だと思う
夢だとか ....
人生における
たくさんの願いごとを
一から十まで書いてはみたが
なかなか思うようにはならんので
丸めた紙に思いのたけのすべてをつめこみ
えぇぃ 好きにせぃ〜〜〜
....
肩を
すべり落ちてゆくものを
不可能なくらいに
拾い上げるから
忘れておけない
まなざしの青
つないで
必死につないで
自分の口から出た言葉が
たとえ終わりを決めるもので ....
いつの間にか
カラオケで歌える歌ばかり
覚えて
いつの間にか
会社に着ていく服ばかり
選んでる
お財布にたまったレシートを
一枚、一枚、眺めて
薬屋、雑貨屋、文具、服屋、ユ ....
こころをそらにすると
あるがままにうつるようになる
つくえのうえにちらばった
えんぴつやほんも
かっぷやすぷーんも
きのう
ぼくのむねにぐさりとささった
だれかのこと ....
あなたに伝えたくて
今日も綴ります
夜の静寂に
零れる想いを
あなたを想うから
今日も開きます
昼間閉まっておいた
わたしのこころを
あなたにそばにいてほしいから
今日も ....
えらい人 と えらくない人
の あいだで
ぼくは ただ 浮かんでいるだけ
ぷかり ぷかりと
どちらにも ひかれることなく
ただ 月の引力にだけ
ただ 自然のことわりにだけ
満ち ....
心のなにかが抜けているよ
と
ちょびひげさんが教えてくれた
人に必要なものはなんですか
ということを
五択では問えない
君達の痛みも五択じゃない
マークシートリーダ ....
いくつもの古時計が
まばらな振り子を鳴らす
時の無い珈琲店
木目のテーブルに
頬杖をついて
ものを思う
いつかわたしも
衣服の抜け殻を地に遺し
空へ消える煙となろ ....
手袋の
こすれるすきまから
しろい空気を ふー、と
吐き出すと
それは
青い空にのぼってゆく
きれいなけむりに
よく
似ている
それで
つむじは むずむずして
町も ....
おまえは
虚空に
なにを探す
道を失った子供の眸して
どこを見つめ
なにを思い
そして
誰を待つ
翼をたたんだコウモリの肘
切り取られた鶏の足、左手
咽せるとろみ茶
刻み ....
冬
愛しさを連れて 君と湯町
乾いた太陽の熱が嫉妬を増幅させる
君の唇から小さな白い吐息と湯けむり
悲しまざるは僕と石畳
君の足が時計の針
昨日の僕が明後日を招く
海が見える ....
{ルビ箸立=はしたて}に
ひっそりと立っている お箸
いのちの橋渡しを行うもの
せつなさをとおりこして
うれしさがあふれそうな
いのちの輝きの
道のりを
真っすぐに
みおくって ....
きみのバスが遠ざかり
ぼくはちぎれて
半分になる
照れくさいぼくを
きみが思い出すとき
薄闇はきっと匂うから
けなげに告げよう
離れた場所で
あすの名を
....
{引用=
一 ゆらゆら、尾ひれ
いい匂いがしたもので
いい気になって
追いかけて
できないことは
どこにもない、と
一目散に
忘れも ....
あなたの写真を連れて
中学校の
あの校庭に
行ってみよう
夕陽の
大きな日がいい
風がふいて
あなたの髪がなびく
そんな日がいい
夕陽のなかに
出会ったときの
あなた ....
{ルビ空=から}のビニール袋を
ゴミ箱に投げたら
口を開いて
ふわりと立った
すべてのもの
を
で
すいこみそう
気づくとぼく ....
さらさらと
お前は何しに来た
こんこんと
お前は何を話しにきた
しんしんと
お前は何を聴きにきた
さらさらと
また人々の掌に舞い降りてきた
....
終電を逃がし泊まった
ネットカフェのリクライニングで
寝てる間にポケットからこぼれた
腕時計を失くしたらしい
僕等は今日も
密かに刻む秒針の音に支配され
忙しなく一日は過ぎ ....
悲しまないでください
たとえ私がひととき
希望を見失ったとしても
それは今年初めて触れた雪が
てのひらで消えるまで
きっとそれほどのときですから
私の瞳に映せる空は
決し ....
幸せが側に来ると
男は
おびえて
目を背けた
いままで
幸せなどというものを
見たことのなかった
男の目に
それは
あまりに
まぶしすぎた
男が
幸せから
目をそらし ....
ぼくらの言葉は
山でありました。
緑でありました。
渓谷の流れでありました。
あなたが
お嫁にいくといいます。
リュックもクツも
ハーケンもハンマーも
ザイルも投げ捨てて
お ....
どこかに風がふいている
耳を澄まして
あなたは言った。
ほら、あの渓谷の流れに
風がほほえんでいる。
私たちの幸せは
どこかに眠っている
登り道ばかりつづくとき
あなたは言 ....
これ
だ〜れだ
みっちゃん
と
えいこちゃん
これは?
みっちゃん
じゃ、これ?
おこった
みっちゃん
ぶーっ
ほっぺを
いっぱいに
ふくらまして
....
蜜柑の木々が生い茂る
庭園の芝生に立つと
山の緑の間に
遠い海は{ルビ煌=きらめ}き
枝々の無数の実は
青みがかった光を帯びて
自らの歓びを
天に捧げておりました
....
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