通いなれた道
住み慣れた家
そうして
一緒にいることに慣れきったふたり
あたりまえの毎日が
黙々と流れ
口にできなくなった言葉が
行き場を失いふきだ ....
ノンシュガーなはずのコーヒーがやけに甘い
隣の席の黒い帽子の男が
ぼそぼそとなにかつぶやいている
路地裏から路地裏へ
狭い空がえんえんと追いかけてくる
どうやらこの街からは出られないらし ....
手を洗え
その身じろぎする小さい肉を
きみの野蛮な口に運ぶのならば
何よりも先にまず手を洗え
汚れた手で肉に触れてはならない、
汚れた手で肉に触れることは
その新鮮をそこなうことだ ....
虹を見つけるコツは
こまめに空を見上げること
雨のたび
忘れず雨上がりに期待すること
四つ葉のクローバーを見つけるコツは
誰かのために探すこと
本当は自分で見つけないと意味がないん ....
何度も何度も恋をした
した
確かにした
はずなのに
みんなどっかいっちゃって
どこにいったかわからない
どうもすみません
ところで元気ですか
テレビなどを見ていると
むかし憧れていたアイドルたちが、みんな
おじさんやおばさんになっているのにビックリする
そりゃあ、僕らも歳をとるわけだ
で、最近、酸っぱいものが無性に食べたくな ....
夜の真ん中の
縁をなぞりながら
影だけの月の
少しだけ零れる明かりを
晴れることの出来ない日
ここでも
傘だけは、ある
夜に、越えられずに
息の詰まる深みを
ゆっくりと
息を入 ....
降り続く雨に
けむる街角
傘の花が行き交う
仕事帰り家路を急ぐ人
誰かと待ち合わせに向かう人
浮ついたあしどりと
疲れたあしどり
それぞれ ....
貴方様の整理番号は115です
或る日突然に透明な空から降って来た
薄紫色のちっぽけな紙切れに書かれていた
鼻で笑ってポケットにねじ込んで終わりのはず
気がつけば
私宛の郵便物 整理番 ....
かげふみ かげふみ
かげ いつつ
よにんきりしか いないのに
かぞえてみると
かげ いつつ
あのこが かえってきたのかな
はしっていくかげ おいかけて
や ....
死ぬことを想像しない日は
一度もなかった
愛しいと想う気持ちの現れない日は
一度もなかった
私は今日で
13515日目の私である
今日までの私は
生きているとは言わず
実は ....
ゆらゆらゆったり恋をして
気付いたら戻れない道に立っていました
ゆらゆらゆったり蝋燭流れて
気付いたら固まって動けなくなっていました
あたしの辞書に『後悔』はありません
素直に感情に ....
オイッ!
神さん、俺はアンタなんか耳クソ程信じねーケド
オイッ!
神さん、どっかでチッポケな人間の言葉を聴くなら
オイッ!
神さん、俺は今からアンタに言葉を投げる
心して聴いていやがれ ....
痛い喉を掻き回して
僕は言葉を紡ぐ
海峡の向こうの島を
懐古と共に
たぎらせては
静粛の木の葉を
この手にとる
歌よ
波音に掻き消されし
声よ
あなた と照らされた
....
花の名前はちっとも覚えられない
愛情こめて土を耕し 肥料を入れ
慎重に種をまき 苗を植え
毎日かかさず水をやり
芽吹けば話しかけ
成長すれば喜び
花が咲けば私に贈ってくれた
何年 ....
ヤツが残していったものは思いのほか大きい
下着や趣味の悪いCDもすべて置いてったままだ
メールはすぐに消してしまえるけど
突然いなくなって
ずるい......
2年間ヤツと暮らした部屋は ....
玄関の扉を開く真白いてのひら
その直前に十月の金木犀の香りに包まれて
ふと立ち止まるあなた
かなしみの胎動を青空に聴くことができる巨大なこすもすが咲いている森で
倒れゆく木々
その生前のざわ ....
昆虫を描いてばかりいる少年が
今日は汽車の絵を描いた
たび
と口にしてみる
えい、やっ
気持ちをくしゃくしゃに丸めたい気持ちになって
余白にひどく不釣合いな
一匹のノコギリク ....
荒んでしまうから
自分の一画だけはきれいにしておく
飾らない
飾りはきれいにするときに邪魔だから
テレビなんか見ない
見たいけれど
それどころじゃない
....
結局は 助けてくれる人 いません
でも つながりあって 生きています
助けてくれるつもりなんて なくても
つながりあっているので
からまりあった 細い絆の上で
お互いに ....
メール ではなくて
手紙 を書きたいと
思いますが
今は そんなもの
受け取ってくれる人は
いません
へたくそな字で たどたどしく
手紙を書いていたのは
....
生きてるものは みんな
死亡率100% です
いつ どうやって 死ぬんでしょうか
もう 笑って死ぬことは
できそうもありませんが
さて 何かを 残せるでしょうか
....
ささやかな いたみを ともなった ささくれ
きっと きずかない
きもちに みあった じかんで
きもちの こもった きすを
へいきなかおして そのすきまを
とおっていくのは やめて
「世の中の不条理を一掃せよっ!」
脳内 後方部からの指令
「さて、どうしたものか?」
躊躇う 右方部を尻目に
「もう、止まってんな! 走れ!」
脳内 前方部に従う身体
これが僕です。
....
駅前で
ギターで歌い続ける少年の
声を誰も覚えていない
ギターの音色が日付を越える頃
繰り返している月のかたちを
誰も答えられない
すっかり冷えきった自動車の
エンジンをそっとかける
....
少年は
旅に出た
真っ白なノートを
一冊持って
そのノートに
この世のすべての言葉を
すべての意味を
書くために
街には
言葉が溢れていた
朝には朝の
....
辞書は本当は辞書になんか
なりたくなかったんだよ
本当は絵本になりたかったのさ
だから、辞書は本棚で寝ている間
書かれているすべての文字を
手荷物預かり所に預けて
夢の中で
....
午前3時33分33秒になったら
こっそりと本棚から
辞書を取り出してごらん
99頁と100頁の間に
もう1頁できていて
そこにはとても大切なことが
書いてあるから
で ....
青く澄んだ空と
ぽっかりと静かに
浮かんだ
白い雲たち
そんな空とは
対照的に
私の友達は
隣で泣いている
慰めてあげられる
いい言葉も見つからなくて
ただ呆然と
立ち尽 ....
1.
シナ子
今、列車に乗っている
田舎に帰る
トンネルに入るとヒューィって音がこだまするの
それは列車の車輪の音
昔よく吹いていた草笛にも
車掌さんが切符を切る音にも似てる
....
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