三十過ぎて
忙しさを言い訳に
すっかり運動不足の僕は
最近腹筋をはじめた
しばらく鍛えてなかったので
体を起こすたび
床から上がってしまう両足を
しっかりと抑えてくれる ....
この種の館には
白い服来た笑顔モドキや
大丈夫ですかあ〜の聴診器や
青筋立てて服従を強いる面背服従やらが
糞と小便の匂いの中に生息している。
その物の怪たちは
なにをどう勘違いしてるん ....
母が縄跳びをしている
僕はしゃがんで回数を数えている
あんなに腰が痛い
と言っていたのに
背筋をピンと伸ばして
交差跳び、綾跳び、二重跳び
次々ときれいに跳んでみせる
既に数は百回を超え ....
もう
どこにも帰れない
そんな気がした夕暮れは
どんなことばも
風にした
ながれる雲の
行き先はしらない
突きとめずにおくことが
しあわせだとは
....
ほねがおれた
はやく なおるように
にぼし たくさん たべてる
いつも たべてる にぼし にぼし
ねるとき
いきが にぼし くさくて
ぼくは
そう
まんぞくな ねこ。
わたしはいつも、つつまれている。
目の前に広がる空を
覆い尽くすほどの
風に揺られる{ルビ椛=もみじ}のような
数え切れない、{ルビ掌=てのひら}に。
その手の一つは、親であり ....
01
潜水艦が勝手口から出航する
数名の水夫と
グランドピアノを一台乗せて
裏面にへのへのもへじが書かれた広告は
窓を開ければ
風に飛ぶだろう
02
電話会社から届いた明細を ....
ひとが
しをかいている
ひとは
しをかくのがすき
かいていると
こころが
きれいになる
きぶん
しをかくひとのことを
しじん
というらしい
ちなみに
しにん
とよぶと
....
こうえいの
ぷうるで
しんでいるかのように
ひとが
かんせいをあげている
いきているひとは
ときおりじょうずに
しんだひとの
ものまねをしてみせる
そして
みずのしぶきをみ ....
みちている
ろじょうに
ひと
もしくは
ひとにちかいものの
こえ
が
こうさてんに
まいにちあった
はなは
いつしか
おかれなく
なった
あのひとも
どこかで
は ....
賛成多数で
人として当たり前のことが
ぼやけてく
白い手袋を振るみなさん
頑張ってください
昨日までの
仏頂面のほうが
嘘がなくて微笑ましかったです
手袋はとってくださ ....
畳の部屋に座る祖母が
親父と叔母を目の前に座らせ
「もしも私が世を去った後も
互いに仲良くしなさい 」
と静かに語っていた頃
仕事帰りで疲れたぼくは
霧雨の降 ....
脱税しました
空は晴れていました
脱税したお金で
スポーツカーを買いました
お金が足りないので
模型のスポーツカーでした
海の近くでした
風に匂いがありました
一輪車が得意でした
上 ....
せなかに
けいさんきをうめたのを
わすれたまま
ひとは
いた
ひふのうえから
るうとのあたりを
おしてあげた
ひとはときどき
ひとであることを
わすれてしまう
らしい
机の下の指先が
とても不器用に見えた時
祖父と同じように
草木の汁が染み込めばいい
と思った
へび苺の味は思い出せない
祖父の出畑は
すぐに草やつるが生い茂るので
それをな ....
君のその白い腕に
ふれたいよ
君のその首すじに
髪の薫りを
かぎたいよ
瞳と瞳を一つに重ね
すべての世界を
溶かしたい
*
( 車窓はいつ ....
水の匂いが燃えてゆく
漆黒は
うるおいのいろ
こぼれてはじまる
灯りにけむる、
波のいろ
疎遠になれない花の名に
ひれ伏すともなく
かしづく儀礼は、 ....
ひとが
ゆめを
みているの
それとも
ゆめが
ひとを
みているの
ふるい
ひょうしき
のようなものがあって
おとがしている
あのさきに
うみがあるの
ひのあたる
....
その本を開くと
一遍の詩が終わる{ルビ頁=ページ}の余白に
{ルビ紐=ひも}で結んだ「空の鏡」を首からかけて
両腕をひろげた小人が
立っていた
その本を手にした読者の
誰も知 ....
掛け違えた光だとしても
あふれかえることに
消えてはゆけない
肩だから
底に、四月はいつもある
泥をかきわけて
そのなかを親しむような
見上げることの
はじまりに ....
エレベーターの中は
どこまでもお花畑でした
見たことのあるような花ばかりだったけれど
すべての名前を言い当てることは出来ませんでした
ああこんなところまで来てしまったのだなあ
と感じて
中 ....
ただそらだけがある
ひとも
たてものも
どうしょくぶつも
わすれて
すみずみまで
ひろがっている
きおくのそとがわから
ことりがいちわきて
はばたこうとすると
そらはきように
み ....
まっ赤で
おおきな歌に
くだかれた夕暮れの
かけらをよせあつめて
ぼくはトルソーを
つくった
奄美の島ざらめを
たくさん、うみにながしたら
おおきな涙に ....
夜空に見える、という
星座ってやつが
点在する星をつないで
こころでみる絵画だった
とは、しらなかったころ
僕は君の名前を
まだしらなかった
君の名前を
まだしらなかったころ 僕は ....
最近
どうも
手が震える
大正十四年が
左手を見ながら
心配している
ので
病院行けば
で
にこにこ
して帰って来て
よかった
よかった
アル中じゃな ....
都会で生き抜く鳩たちは
巣をつくるための枯れ枝を失い
マンションに住むようになった
冷暖房完備でオートロック
防音設備までも充実している
食料は近くのコンビニで二十四時間
夜目が利かなくて ....
お父さんの背骨の近くを押していく
淋しい箇所がいくつかある
大きくなったら学者かバスの運転手になりたかった
と、よく言っていた
結局学者にもバスの運転手にもなれず
十年前に地方の小さな薬局を ....
毎日ともに働く人が
あれやって
これやって
と
目の前に仕事をばらまくので
わらったふりで
腰を{ルビ屈=かが}めて
せっせ せっせ と
ひろってく
そのう ....
まだ隣りにいるような
波音をきく
目が覚めてから
目を開けるまでの
潮風と過ぎ来し時を背に流すさだめのごとき蒼を開いて
旅立ちの日には必ず響いてた警笛がいまつまさきで鳴る
桟橋に残したサヨナラ遠ざかる振っていた手で面舵一杯
羅針盤果て ....
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