男は書店で物理の参考書を買った。大学を卒業し就職して既に十数年が経っている。文系出の男にとって物理など縁遠いものであったし、特段の興味があったわけでもない。それでも男は物理の参考書を買ってしまった。「 ....
正確には「フィカス・ベンジャミナ」といいます
日光を好むので窓際に置いてあげてください
冬場は室内に置いてあげてください
水をあげすぎると枯れてしまいます
たまに肥料をあげてく ....
正雄さんは 今日はいらっしゃるのかしら
律儀に今朝も 同じ時間に
サクさんは 二階の詰所にやってきて
繰り返し そう 尋ねる
わたし 頭がおかしいから 心配なんです
杖の先を遊ば ....
そこにあった かこに
おもいが もっていかれる けしき
わたしたちは ながれゆく ときの
だくりゅうに のまれて
ひきとめられず ただ やどる
やわらかな おもいで
あたたかな ....
車窓の向こうが止まる
けれど流れている家や小道
その車窓のガラスに溜まっている
眩しい海は
俺と君が辿り着きたい瞳
そしてその光りに
その海に
今日は君の悲しみも揺れる
器用に生き ....
ふかーい海の底へ飛び込んだら
途中で深海魚に出会いました
「深海魚さん、どこへ行くの?」
「なーに、わたしは夢を叶えに行くんだよ」
そう言って深海魚は浮上していきました
「深海魚 ....
短めの夏の裾をめくれば
過ぎた夢の夜に迷うよ
月の光が僕を照らして
繰り返す闇を優しく包んだ
心のブランコを止めるのは
もう、君じゃない。
だけど
もう少し、もう少し ....
みだれた髪が顔をくすぐるから のびきった髪にくしを通す
こんな日は心もみだれて仕方ないので
そんな気持ちを宥めるように ゆっくりと ゆっくりと 何度もくしを通す
くしにからまった髪は ....
季節をさがして
日毎景色を眺めている
そして偶然見つけたのが
北風に揺れるコスモス
置いてきぼりになっちゃって
少しかわいそうだけど
あなたとても目立ってますよ
....
娘は将来アイス屋になりたいと言う
好物のアイスを好きなだけ食べられるから
ではなくて
沢山の人を幸せにしたいからだそうだ
いっしょにお風呂に入ると必ずその話題になって
バニラ ....
Going my way
わが道を行け
夢見た道を
ひたすらに進む
独りの迷子
行き止まりも
一方通行も
色々ある道を
立ち止まりはするが
ゆっくりにもなるが
それ ....
晴れ、のち
そこで途切れてしまったので
新聞をひらいてみるけれど
晴れ、のち
そこから先が空欄になってしまう
捜索願
明日の空模様はどのあたりで行方不明でしょう
夜中
日付を越 ....
ねえ、
こんなふうに光る
赤信号の交差点でも
きみは
遠い場所へはせるの
さっきまで
胸をかげらせていたニュースも
アドバルーンの空気といっしょに
ぷすぷすと
消えてしまった
....
幼少の頃は、よくハーフと言われるほど、可愛かった。
きっとジャニーズ出してりゃ、間違いなく受かった。
事実だ。今、俺が見たってそう思う。
なんて可愛い奴なんだ、こいつわ!
3歳の俺が、法被を着 ....
『はじまり』
開かれたページ
挟んだ指先
ところで
今
星が生まれたんだけど
気づいた?
『音』
あぁ、なんだ
君か
心臓から耳に
ぴんと糸を張っ ....
「ねぇねぇ ムカデさん ムカデさん
足がいっぱいあるけれど次はどの足動かすの?」
「何だい君は! そんなことを聞かれたら
ずいぶんと歩きづらくなるじゃないか」
「だってムカデさ ....
穏やかな平行の視線
温もりのすき間に
優しい花を飾って
大きさの違う手のひら
重ねても埋まりきらない
埋めなくていい
近付いて
震え
離れては
響く
声も
色も
匂 ....
揺すりませんけれども
揺すっても
もう二度と起きないような気がするほど
深いところに行ってしまったような
今夜のあなたは
自分の進んだ道によって
苦しめられている
気がしてならな ....
足の爪を切ってくれるんですか?
お断りします
自分でしますから
その節はありがとう
どうにも
せり出したお腹が苦しくて
足の爪が切れなかったんです
....
うっすら白い雲がたなびき流れる空から
ふわり
一片の白い羽が手のひらに音もなく降り立った
それはまっすぐな冬の光を受けて虹色に
その六角形の体を染めながら
僕の手のひらから離れ落 ....
まだ小さい、震えるばかりの子猫を抱きしめながら
君はかけてきたよね。
僕への笑顔の裏に真実を上手に隠せないまま
・・・それが君の素敵なところ・・・
そんな言葉が風にさらわれて、音にさえ ....
昨日は
君も僕も休みだった
二人で買い物にいって
お茶碗と箸を買ったね
僕が藍
君が紅
藍いお茶碗と箸
紅のお茶碗と箸
おそろいで兎の模様に ....
思い出す
最後の呼吸
は
吸っていた
良かった
まだ生きている
艸がなびく高原で
ぼくは病になった
もうぼくは草臥れました
少しお休みが欲しいです
欠席届を持ってきました
街の中ではもうクリスマス・ツリーが
....
健全な太陽が
窓の外の林を眩く照らし出した
光は
優しく全てを温めてゆく
直視できなかった
きっと涙がこぼれてしまう
疲れ果てて
こんなにも痛んだ胸に沁みて
今わかった
尖っ ....
ねぇ 朝だよ 朝
うるさいなぁ 僕には関係無いだろ?
君が羨ましいよ
本当 心底ね
灯油ファンヒーターが音立てて
なっている
6時前の朝
どこかから風がもれてのだろうか
寒い まだカーテンは締め切きったままだ
からすがとおく ....
事が一つなせば 事が一つ終わる
群青の空に泣き顔
今日が来れば 今日が終わる
冷たさに震える身体
欲しいのは救いの言葉じゃない
愛は終わってしまうもの
その事実が酷く悲しい
....
それは
手
愛 の 簡
も ひらで 単
かなしく に
....
2度目の冬
今朝
あの日と 同じ
目が覚めると 電話
「もしもし 俺」
「うん」
そうとだけ言うと
ほっとして
困ったようなやさしい苦笑が見えた
39回目の長 ....
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