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窓から夜明けがはみ出してくる
それを待ち望んでいたのかも
もう忘れてしまった頃

あるいはいつしかむしろ
望むようになっていたのではないか
夜が終わらないこと を

夜が長すぎたから
 ....
君と僕とのあいだに
置きたい言葉があるとして

それはいつも最初の言葉であり
最後の言葉

初めての言葉であり
いくたびも繰り返されてきた言葉

すでに過ぎ去ったこと
あるいはいま ....
濃い青の空に
白い雲の城砦がいくつも立ち
なかぞらを埋めつくす蝉時雨
他のどの季節にもない濃密さで
夏は君臨する

けれどその夏の中に
巨きな空洞がある
夏のあらゆる濃密さが
そこで ....
春の遠くに薄雷が鳴って
さみしい とか
かなしい とか
形容しても詮なく
雨は降り
菫の花を濡らし

己が
いともたやすく傷つく
ということに
また傷つきながら春の長雨

形容 ....
春は心臓の尖端が
どうしてもやわらかくなってしまうので
君のためにチューリップを画こうとしても
とめどなく狂いゆく遠近法
翼が生えてきた 日に日に大きく育って
ゆく けれどそれは 誰にも見えない 私自らにも
見えない なぜならそれは 私の内側へと
生えていたから 見えはしないけれど ただ
たしかにそれは 翼である ....
嵐は去った
それが嵐であったことを
彼だけが知っていた


白い円型廃墟
円の中心へとくだる階段を
彼は降りてゆく

円の中心にこんこんと湧くもの
彼は手にした器で静かにそれを汲 ....
あざやかに青い空には
壮麗な夏雲が立ち
先ほどまでの蝉時雨も止んで
静かだ
永遠というものが
今此処に垂れ込めてきたかのような
濃密な静寂だ
この圧倒的なあかるさ静かさには
けれど あ ....
透明すぎて何も見えなくなった視界を
侵蝕する夏

振り向いては駄目と云った
爛れ落ちてゆく意識で
最後に何を感じたの

ああ {ルビ懶=ものう}い
純粋ごっこの残滓に
濁った火をつけ ....
七月を纏って
汀を歩いてゆく
寄せては返す 透明な波

やがて小さなさびしい桟橋へ
たどりつくだろう
そこから灰色の舟で
向かうだろう
いちばんなつかしい日へ
記憶と予感との ....
銀色のプラットフォームは静かだ
何かが終わってしまったような
白い虚ろな光があたりを満たしている

駅名表示もない 時刻表もない
すべての列車はもう過ぎ去ってしまったのかもしれない
他の乗 ....
韻律都市の夏へ
君が吹いたシャボン玉は
まるで水銀球のようで
それでいてふわふわと
街路を漂ってゆくのだった

それは
この都市の名うてのダンサーである
君が踊る姿にも似て

―― ....
窓を開け
口笛を吹くと
僕の小さな銀色の飛行船が
やってくる

僕は窓から飛び立つ
菫色の大きなたそがれの下に
輪郭だけになった街が広がる

街の一角から
空に向けて放たれ回るサー ....
闇に
幾人もの私が
ほどけて

緑と水の匂い

翅あるひとの気配が
呼吸にいりまじる

ほどけゆくままに
ひとつ
   ふたつ
ともる
   ほたる


になるかなら ....
僕らがよりそう宵のバルコニイのテエブルに
ぽとん と小さな星がおちてきたので
それを閉じこめて
ゼリイをつくった
星の光を透かせて
ほのかに光るゼリイ
そのゼリイのふるふる ふるえが
僕 ....
濡れた火
燃える水

僕らはあまりにも
性急に夢を見すぎた
僕らとは誰なのか
僕らは今どこにいるのか
たしかめようともしないまま

だからそこに出来たのは
はじめから廃墟だった
 ....
四月の世界が明るく亡びて
あとはただ蜃気楼がゆらめいていた

蜃気楼の中で
花は咲き 花は散り
人々はさざめき行き交い
明るく亡びた四月の世界が
まるでそこに そっくりあるかのようだった ....
きらびやかな空が 剥がれ落ちて

菫の咲くほとりをたどって
指たちの

踊る環
   ひとつ
      ふたつ
         みっつ

やわらかな綻びから
洩れる調べの
 ....
夢を炎やしたのか
夢に炎えたのか

いずれにせよそれは炎で
炎えてゆくほどに
   透明な翳りを深め

   深く潜るほどに
   見えてくる星空

遠くからの呼び声

    ....
時は傷
   風は闇

虚空に揺れる鞦韆

水の衣装の傾きをたどる手から
   こぼれるやわらかい音符

   三日月の尖端から滴る
         蜜

 (  ( ((波  ....
月も星も潤む宵に
身のうちに水奏される調べがあり
その調べを辿ってゆくと
やわらかな彩りでゼリイのようにゆらめく
ちいさなユートピアがあらわれる
時折
君の身体から星が発生した
君はいつもそれを
無造作に僕にくれた
――君は星が好きだから
そう云って微笑っていた

何故身体から星が発生するのか
君自身も知らなかった
――何故だ ....
ここがどこなのか
どうやってここに来たのか
わからない場所で
思う
花が花であったこと
風が風であったこと

今ここに
花かどうかわからないものが
咲いていて
風かどうかわからない ....
一面銀になびく草の原を
未明の馬が駆けてゆく

どこからどこへ駆けてゆくのか
ほこらかな そして不思議にしずかな躍動で
一面銀になびく草の原を

駆けてゆく未明の馬は
そうだ きっと
 ....
澄んだ秋のむこうに
傾いてゆくやわらかな光があり
時折 小さな風がうごき

耳はおのずから澄まされてゆく
この秋の虚ろをよぎる
ひそかな呟きのようなものに

それはひくく何かを語ってい ....
薄明かりの場所にいる
何もない 誰も来ない
ただ涼やかな静けさに満たされて

佇んでいると
薄明かりの中を
記憶たちが通りすぎてゆく
色のない幻燈のように

《それらは 私の記憶であ ....
君の翅を食べた
君がそうすることを望んだから
君の翅はよくできたお菓子のように
心地よい甘さで
もろくあわく溶けていった
最後に君の背に残る
翅のついていた痕をそっとなぞると
それも夢の ....
九月のしずかなあかるさは
透明な翳りを含んで
その中に点々と
露草の青 浮かんで

波紋するさよならを
心に溜めて
やわらかく孤立しながら
佇む意識の彼方に
ほそい岬
それは空へ帰 ....
静かな頭蓋のなかで
記憶は波だつ あらゆる襞へ
あらゆる層へ
その波たちは伝わってゆく

記憶はささやき
記憶はつぶやく
かたちを持った あるいは
かたちを持たない
出来事のこと 出 ....
この胸から一枚の
夏の風景をとりだしてひろげよう
青い湖 まわりは緑の森
そのむこうになだらかな丘々
湖には小さな桟橋 つながれている幾叟かの小舟
ほとりに小さく白い館

そこで僕らは
 ....
おぼろんさんの塔野夏子さんおすすめリスト(43)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
春_雷- 塔野夏子自由詩3*24-3-21
合言葉- 塔野夏子自由詩7*24-1-27
夏の空洞- 塔野夏子自由詩12*23-8-15
薄_雷- 塔野夏子自由詩4*23-4-19
春の水彩- 塔野夏子自由詩3*23-3-29
内_翼- 塔野夏子自由詩10*23-3-19
嵐のあと- 塔野夏子自由詩2*22-8-31
夏の影- 塔野夏子自由詩8*22-8-13
衝動の夏- 塔野夏子自由詩6*22-7-31
- 塔野夏子自由詩6*22-7-23
銀色のプラットフォーム- 塔野夏子自由詩6*22-7-11
韻律都市の夏- 塔野夏子自由詩4*22-6-27
サーチライト- 塔野夏子自由詩6*22-6-9
五月の夜- 塔野夏子自由詩8*22-5-27
スタアインゼリイ- 塔野夏子自由詩5*22-5-17
沈黙の神殿- 塔野夏子自由詩5*22-5-1
蜃気楼- 塔野夏子自由詩6*22-4-19
早春小景- 塔野夏子自由詩11*22-3-15
夢のあとさき- 塔野夏子自由詩3*22-2-27
揺_曳- 塔野夏子自由詩5*22-1-25
水奏楽- 塔野夏子自由詩4*22-1-13
星_座- 塔野夏子自由詩19*22-1-1
再_生- 塔野夏子自由詩5*21-12-15
未明の馬- 塔野夏子自由詩5*21-12-7
秋の物語- 塔野夏子自由詩3*21-10-31
薄明かりの場所- 塔野夏子自由詩1*21-10-17
君の翅- 塔野夏子自由詩13*21-10-5
九月_昼/夜- 塔野夏子自由詩6*21-9-27
記憶波- 塔野夏子自由詩5*21-9-19
夏の風景- 塔野夏子自由詩14*21-8-29

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