深く眠って目覚めた朝のゆびさきは
少しまだ透明がかって
夜が
見えかくれしている
動いている心臓は赤い磁石
覚醒してゆく時間に
わたしのかけらを
元在った場所に吸い寄せて
願っ ....
時計のないまちを歩くと
歩数計が時間にすりかわる
きみの面影ばかりがやきついた瞳は
きょうも空疎で狭窄しているみたいだし
きのう人参畑だった農地には
いつのまにかウイークリーマンショ ....
海月の
ほねを喰み
みずになる
こえを束ねて
輪郭を増す
つきの舟
波のくだける音が
燃えうつり
粟立つ
膚はひえる
仰向けに
こおりつく花の
かおりを
弔ってみ ....
年末に新宿でSと待ち合わせた
どうしようもない 男が二人
しかし進むべき道を誤ってきたからなのか
そうせざるを 得なかったからなのか
そんな事を考えながら入った
閉店ギリギリのサ ....
唾を唾で
瞳を瞳で抑えながら
においの無い人ごみは
鉄路に影を残してゆく
ひと粒の胡椒が
紙の上を転がり
拾おうとするたびに終わり
つまんでは落とし またはじまる ....
艶やかなバラも散る
やさしげな言葉と眼差しを添えて
去って往く喜びの日々
誇らしげなバラも散る
たのしげなギターとメロウな歌声
血のなみだ流す心の代わりに
うめつくす雪の空
一羽 ....
○今年は四十路になる娘が
帰省した
「結婚はしないの?」
と尋ねると
「うちの職場にはもうチビとデブとハゲしか
残ってないから」
という
○離婚した従兄弟が
帰省した
「再婚はし ....
戦いが終わり
今まさに戦火が消えようとしていた
惹き寄せられた私たちは
いつしか愛の戦いをはじめ
それは各々の自身との戦いでもあったが
動員された兵士たちは三々五々
ただこの戦火が ....
妖怪を詰め
妖精を詰め
見たこともない色彩のスペクトルよ
野性と滲み
偶然と繊細
子供が死んでも世界は音さえしない
米中の大量破壊兵器
目ぢからだけで戦う ....
初詣の帰り道
自販機の灯りの前で
ホットココアを
ポケットに入れて
きみは言う
「全部捨てて逃げちゃおうか?」
「無理だよ」
「わかってるって」
初詣の帰り道
自販機の灯 ....
元日は一つの甘い形而上学
人々の想念に整った証明を与え
社会を理論的に区切っていく
幸せは村から市街地まであふれ
不幸せは星から地上まで届く
元日は人々の生活を区切らない
具体的で些細 ....
片目を射抜かれたので
精肉部門に逃げ込んで
働かせてもらうことにした
精肉部門では隠れてカイコを
飼って居た様で
絹糸を秘かに作って居ると言う噂だった
私はシルクロードに居る様な気分で
....
序
お紅茶がお好きでしたわよね、どうぞ。
お砂糖おいくつかしら?
《桜ふる夜、艶めかしい声で、》
おぐしの白いものもおふえになりましたねぇ。
私の瞳は、水を失いませんが。 ....
怒っていいことなんてたぶんない
つまらない顔をしていいなんてこともたぶんない
原色のなみだを
灰色の片目から空にながそう
音楽は消えていく
消えていくから生まれていく
....
皮膚の毛穴から
声にならない呟きが聴こえてくる
ひとつ、ふたつ、
呟きはふえていき
大きくなりやがて叫びに変わる
叫びが全身を駆けめぐるとき
私は目覚めて
意識のなかの
ひとつの物語の ....
どんな黒よりも黒い黒の髪
黒い髪をさらに黒で染め上げたように
さらに黒で染め上げたように
夜よりも黒い 漆の中の黒
煌めく星々の鱗粉の 黒揚羽の 黒
年の瀬に腹いせに弟を殴る
年越した擁護した弟を殴る
朝っぱらからさっぱりと
正月明けからからっけつ
けつバット弟
まめデッポ弟
さあ警察行こうか
授業中
牛乳のみたくなったら
ぴゅっぴゅって
つくえのうえで踊り出すの
よこに映った横顔
くちびるをうえにめくって歌い出すの
ひらめきは月の光
桜並木をひとり ....
やがて過行く駅を見て
電車の音はごとごと揺れる
何時もより大きく響きながら
今日はやけに疲れるなぁ
通り過ぎる人の呼吸が
白く見えるのも
冬のせいでは無くて
やけに見開く眼光の奥にあ ....
月を見ましょう。
中天の月。
お正月の月が、こんなに綺麗な年は、
きっと、いいことがありますよ。
その月をみて、
そう、おもって、
そう、伝えようと、 ....
忘れっぽいので損をしている気がする。
すごく良い言葉を思いついたのに忘れてしまった。
その忘れてしまった言葉で良い詩が書けたはずなのにと悲しくなる。
だけど、忘れてしまうからこそ思い出すこと ....
君と僕
孤独に震えるクローゼット
明けはなして見ている朝日の階段のむこうは
夜で
夜って言ったら目を閉じるゲーム
サイコロ転がして3マスすすんだ先で転ぶゲーム
うつぶせで動かない君を
....
何でもわかればいい
というものではない
昔から
「知らぬが仏」
という言葉もある
自分がいつ死ぬかなんて
知らぬが仏だ
大地震がいつ来るかも
知らぬが仏だ
古女房が愛してくれているか ....
今年も「今年の目標」を
大きく書いて机の前にはる
目標が決まると
生きる意欲がわいてくる
せっかく生きているのだから
今年もチャレンジの年にしたい
それから空は夏雲湧き立ち、風は川を越えて丘を越えて、それから線路を越えて団地を越えて、それからあの家の窓を抜けて、あの白い壁の部屋をぐるりと回る。部屋には檻があって虎がいて、虎は檻の中で待っている。誰 ....
浮上した潜水艦で灰色の海原をゆく
索敵されなければ帰れるかも知れない
よくある話だ
紛争地帯から戻ってきたカメラマンが
青信号の交差点で車に突っ込まれるなんて
たとえ港に ....
葉室麟が死んだ
亡くなった一週間後新聞で知った
2017年は谷口ジローも鬼籍に入った
人生のいちぶを足跡にして
先人の足跡はそのうしろに続いている
ぼくの前にはその足跡が ....
バラエティー番組は
今度始まる
ドラマの宣伝のために使われ
そのバラエティー番組の宣伝のために
別のバラエティー番組が使われる
別のバラエティー番組の宣伝のためには
また別のバラエティー番 ....
薄くにじむ曇天に
陽は破れ
私たちは歩く
口の尖った犬を抱えて
濃い実の残る柿の梢に
風をぶら下げて
風の飛び去る松の林に
大きな瞳を棲まわせて
薄くにじむ曇天に
陽は動かな ....
損も得も屠り穏やかな土の道を歩く
そう決めた 決め事も臨機応変に屠るが
青い芝生も自覚した頭の弱さも悪さも
てらてらてらてら衒う惨めな眼鏡も
心のつけ根から魂の入口まで
酵素シロップづけです ....
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