{引用=
鱗はがし
}
ぐったりとした坂の両脇
片付けられたばっかりの ここは小さな店屋さん
向かいではやけくそなハンマーが突き出た骨を打っていて
....
01
潜水艦が勝手口から出航する
数名の水夫と
グランドピアノを一台乗せて
裏面にへのへのもへじが書かれた広告は
窓を開ければ
風に飛ぶだろう
02
電話会社から届いた明細を ....
風かよふ春のあした
霞よりほのかにうち出でたる葉の
えもいへぬ色に誘はれて
ゆくりかに歩きつつ空を眺む
後ろより聞こゆる鳥の声は
春の宴にぞ思ゆる
よろず風の詩なり
いづこから流れく ....
もう飛べる翼はない
星の足跡 ここで、途切れた
出逢うまでの道も忘れて
広い空をただ見上げる
水平線に夕陽が溶けて
紫色の夜がまた、来る
やさしさ、だけ
欠けたパレットを ....
白い壁に囲まれ
静かに鳥肌と
真っ赤に染めよう
手首からさすがに綺麗な綺麗な鮮血だね
古いさびた鉄バケツで十分
表面張力の水平に波が立つ
何?
あぁ焦げ茶の蛾か
自殺の蛾なんだ ....
愛想笑いをしない
お世辞でも美しくはないのだから
微笑むくらいすればいいのに
美しいのは 言葉
不器用な唇から
ぽつぽつと零れ落ちる 荒削りの言葉
美しいのは 仕草
いいえちがう ....
虹掛かる
光る運河の
風車小屋
アムステルダムの
風が吹きにけり
ハムスターではありません。
太ももの裏側の筋肉が
肉離れをしたんです。
仕事中に、労災です。
全治2週間はかかります。
完全休養です!
仕事は全てキャンセル
思わず汗が出てしまいまし ....
うちの最寄り駅は
大笑いなことに愛野というのだ
駅にほどちかい工場の連中は昔バンドを組んでいて
そのバンドの名は
大笑いなことにラブフィールドといったのだ
そいでもってうちの近所の
つまり ....
熱がある
からだのふちを{ルビ象=かたど}るように
白く明滅する波
その中に
おぼれている
ひかる 虫
いくつもの
目を瞑れば
しんしんとうなされて
寝汗
小さく ....
今歩いているこの路地が
たとえば海沿いにしかれたひそかな町の
その奥に抱かれた狭い路地だったとして
世界一小さいという砂粒が
つもって出来た町だったとして
もうあと何件かの民家を越え ....
ぶつぶつ
ひとりごとをいいながら
ひとが
えきのかいだんをのぼっている
おそらく
なにかたいせつな
くんれんをしているのだろう
ことばをはっするたびに
すこしずつ
もれていくもの ....
捻れて
ひねくれて、
螺旋を描いた それは
縦に縦に伸びて
真っ直ぐになった
本当は
最初から最後まで
真っ直ぐなものなんて
ないんだよ、と
諭すように
....
緑の草原の中の静かな輪廻転生
ガサガサ音を立てる
鳩の胸を貪る名前
風が吹いて倒れた草の
(修飾しています)
冒頭で死んだ幾人かの名前を
読み上げてい
とても遠いところから凧を焚く
て ....
イチコが僕の家にやってきたのは
今から十年余り前のことでした
四月の暗い雨の日でした
皆が雨で桜が散ってしまうと
嘆いていた日でした
当時住んでいたアパートの玄関 ....
俺はあいつが嫌いだ
はらはら散る桜と同じくらい嫌いだ
もっとも俺は
ぼとんとみっともなく落ちる椿も嫌いだが
だって考えてくれ
生首に潔いもクソもあるか
ぼとんと落ちようが未練たらしく落ちよ ....
昨日と同じ言葉でわたしはおはようをいう
昨日と同じ声で
昨日と同じ表情で
昨日と同じ空に
昨日と同じ色合いの雲が浮かぶ
というのは嘘で
昨日と同じものはなにひとつなく
昨日と同じではあり ....
どこまでも続く桜並木の先に在るものを
確かめたくて
あなたと手をつなぎ歩く
親子ほどにも見られそうで
控え目なあなたの腕を
胸元にまで引き寄せ
歳の差なんてね
桜は潔く散るから美 ....
―あるいは隠棲と知識
その先は海へといたる低地帯
広大なだけの空が暮れはじめると
きょうも
{ルビ背=せい}の高い草は
静かで乾いた音をたてる
立ってること ....
安心していたら
乗り過ごしちゃった
らしい
らしいので
線路を
てくてく歩いて
戻るよ
ほら 思いの路線は
いつだって
一方通行だからさ
....
見てはいけないのだとわかってはいた
誰か忘れてしまったが誰かに教わったのだ
父でも母でも兄でもない誰かに
たいして長くもなく広くもないその川のその場所には
かつて利用されていた潜り橋の名残があ ....
ひとが
しをかいている
ひとは
しをかくのがすき
かいていると
こころが
きれいになる
きぶん
しをかくひとのことを
しじん
というらしい
ちなみに
しにん
とよぶと
....
春は優しい風の音色で
ひらひらと踊りながら地に還る
田舎の祖母の他界の知らせに
慌ただしく帰郷の支度をしながら
移り行く季節の名残に
そっと目を閉じる一時
思い出はいつも
....
あなたは今
風の色が見えますか
春の風の色は
すぐに変わってしまいます
でもいつもどこか光っています
ほら
白い花が光っている
青い空がつやつやしている
また色が変わっています
あな ....
{引用=さらり ふぅ さらり
水の音
ふぅ さらり}
川岸で
あかい手を あらってた
空には月が揺れ
あたしは 朧月夜、を 口ずさむ
川岸で流れた ....
夜が色彩を放ちながら
あめふらしを待っている
鍵をなくされた僕は
近づいても遠ざかっても
同じ場所にいる
牛の頭骨をかぶった
悪魔が迎えに来るよ
君と同じ足取りとそのテンポ
ゆ ....
車に乗って
買い物に行くと
車線が多すぎて
迷ってしまう
そうして
どんどん違うところまで
行き着いてしまう
町でも
田んぼでも
森でもなくて
ただ
がらんどうな場所に
風に弄ばれ、雨に嬲られ
春の欠片は
華やかで暖かで
何処か哀しい
春一番と供にやってきた
サクラ色の季節は
緑色に変容して
ひねもすのたりと
猫とうたた寝中
寝過ごしたりしな ....
名前は?
――ああ
血液型は?
――知らない
歳はいくつ?
――忘れた
住所は?
――もうない
家族は?
――いなくなった
家出か?
――かもしれない
したのか、されたのか?
....
食事の後に
手がすべり
落とした皿に
「ごめんなさい」と
頭を下げる
割れなかった
{ルビ空=から}の皿は
床の上
至らぬぼくの
「ごめんなさい」を
すい ....
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