きみどりの薄皮をひらいて
瑞々しい透明を露出させる
縦に切っても
横に切っても
どこまでもたまねぎだから
うれしくて
うれしくて
なきそうで
やわらかい切り口に
崩れそうになる
か ....
小学校の時の算数のテスト
「たかしくんは、80円もってぶんぼうぐさんに行きました。
50円のけしゴムを1こ かいました。
おつりはいくらでしょう?」
....
もうすぐ
九百九十九年になります
その頃には
ひまわりも咲いているでしょう
絶望から生き残った
藁のような人びとが
ゆらゆらとゆれているでしょう
咲いてしまうことに
罪はなくて
咲い ....
素潜りで
{ルビ鮑=あわび}を密漁する
丹後半島の
夜明け
海で生まれた太陽と
山に入る月の夢、
肩がこる
髭の男が少年や
座礁した五月
白身のま ....
1997
ひらいているのか
ひらいてないのか
ラムネの瓶から転がりだした目で
すべての皮膚が内側からはちきれて
剥かれた/剥いた
滲む赤い体で
そのひとつの透明な血袋が
なににも触れな ....
噴水の仕組みがわからないから
それはもうじっと見ているしかできなかった
一定の水が噴水の中にはあって
それがどこかで汲み上げられて
吹き上げられている
そして落ちて回る
それくらいはわかる ....
終電前の
人もまばらなラーメン屋
少し狭いテーブルの向こうに
きゅっ と閉じた唇が
うれしそうな音をたて
幾すじもの麺をすいこむにつれ
僕のこころもすいこまれそう
....
電線の仕組は分からない
とにかく君のことばかり考えてしまう
国道沿いの、看板のライトの下から見上げる
電線を。向こうの夜空も
僕は官舎にテレビを持ってきていない
新聞も、ラジオもない
....
冷たい空の下街を見下ろしながら死に神は救急車のサイレンに合わせてリズミカルに踊る
ママからプレゼントされた巨大な鋭利な鎌を振り回して それは血塗られた三日月のようだ
今日も魂を刈るのが楽しみ ....
名付けたいひかりの先に
やさしいリビング・ルームがない
一握りのたましいが
あかるみに美しく滅んでいる
並んで有機物が芽吹く
動とも植とも
青とも赤ともつかないまま
....
男は体育館の裏に
女の歳の数だけ
星を埋めた
女は男のために残しておいた
夏の一番柔らかいところを
まだ寄木細工の箱にしまってある
詐欺師の家では
換気扇がゆっくりと壊れて
ま ....
{引用=
? 夏の妖精
笑いながら
運ぶ風に
身を任せて
あなたは走り去ろうとしたが
照りつける陽射し
の中にではなく
薄萌木色の林の奥に
....
昨日もまた
日めくりの暦が一枚消え
昨日を生きた言葉たちが
静かに眠る
昨日一番生きた言葉は
土の道だった
でこぼことした
それでいて不安定な小石の上を
靴底に刺さるかのような痛み ....
Ser immortal es baladi;
menos el hombre, todas las criaturas lo son, pues ignoran la muerte;
lo ....
1ヶ月のうち15日まで寝ないで働いて後はずっと眠っている
この社会の生き物達はみんなそうだ
しかし中には真逆の生活をして悪さを働く者もいる
その為に警察は悪さを働く者と同じような生活をし ....
{引用=長いのでお暇なときに読んで頂ければうれしいです}
reonさんの散文『フォーラムのポイント付与あるいは詩と批評についての考察』を読んで、「詩を描かない批評家がいない」ってのは、 ....
ダンボール箱
いや、もう、箱ではない
これに
俺は
云いようもないさみしさを覚え
やあ、俺が
もう、君のよに、なってしまったら
どうしよか
なりたくはない
ダンボールのよに
雑用さ ....
あなたは物静かだった
あなたを背負うと
その軽さの分だけ物静かに温かかった
だからあの家は部屋は
この空の下突っ立つ一人の人間は世界は
今でも物静かなまま
極めて物静かで
見渡す限り ....
まるくあった裂け目だ。そのように生じる他にないのは、密室の丸ごとの気狂いや身悶えに含まれる等しさやおかしさ。
ついに殴るあなたを見つけ出せないあなたの猫背を撫でさすってや ....
とおく
とおくから聞こえる
もぞもぞしたごとごと
とおく
とおくに見えだす
かげろうの壁の向こう
雲のすきまからはみ出した光にゆびさされ
銀色に青い線のはいった電車が走りだす
鳩が30 ....
夏日を更新するはずの五月晴れが連れてきたのは
冬の残滓のような冷たさで
渺々と吹き荒れる毎に世間を震撼させている
鉄板を舞い上げてしまう風は
それでも人を飛翔させたりはせず
降下する ....
自己欺瞞でも嘘でもアホでもうんこでもいいのである。はっきりいや不幸のどんぞこでもいいのだ。なんでもけっこう。鬱病失業借金に加えて、特定疾患の難病に逮捕、なんでもきやがれ(って正直なところ私にはその全部 ....
暖炉が凍った身体を幽かに融かし始めた。
「いつだったかしら? アレを捨てたのは。もうあんまり憶えてないんですの。だってそうでしょう? 必要なかったから、大切ではなかったから捨てたんですもの。そ ....
小学生の頃に乗っていた青い自転車は
ボタン一つでロボットに変形した
サドルの裏側にボタンはあったのだけれど
変形すると股間に隠れてしまい
外からは押せなくなってしまう欠陥品
だから自転車に戻 ....
実家に棲みついた座敷童子は
びっくりするくらいの大食らいで
おかげでうちの家計は
火の車だそうだ
何を思ったか
その座敷童子は
どこから汲んで来たか
大量の水をバケツか ....
ふりかけるのか ふりかけないのか
お前はご飯の上でふりかけを振りかざして迷っている
頭の中じゃ花びらちぎって物事決める乙女になっている
お前は乙女座かもしれないけど間違いなく野郎だぞ
ふりかけ ....
わたしの影は
わたしの涙で
水色になりました
わたしがそっと足をつけると
ぴちゃっという音をたてます
わたしはくつをぬいで
服をぬいで
影のなかへ
沈んでいきます
....
空の曇った暗い日に
ざわめく森の木々に潜む
五月の怪しい緑の精は
幹から{ルビ朧=おぼろ}な顔を現し
無数の葉を天にひらく
わたしを囲む森に{ルビ佇=たたず}み
ベンチに ....
電車を降りると
点字ブロックが
花野に埋もれていた
あなたはここにある花の名を
一つとしてしらない
見えることもない
それでもその眼は
厳かなほどに瞬きをするから
見えているも ....
ぱらぱらと降っていた雨の間に
少しだけ見えた
澄んだあおいろ
絵の具屋さんには売っていませんでした
とぼとぼと帰る道
水たまりの中に
もう一度そのあおいろを
見つけました
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