仕様が無い
そうやって誤魔化していれば
納得してもらえるなんて
思っているわけじゃない
作り上げた構造に
己の意思が介在する要素が
1パーセントに満たなくったって
目の前にある現 ....
歳を経るごとに
父は粗野になる
私の知っている父は
情けないほどに
やさしく
臆病であり
世間が
とても狭い世界が
気になって仕方がなくて
私はそんな父を見て
半ばあき ....
塾の講師になって二年
はじめから
教えられることなど
何一つなかったのかもしれない
今日も一人の生徒が
僕のもとを去ってゆく
「高校へ行ったら、此処へは戻ってくるな ....
道路に似た人がいたので
間違えて歩いてしまった
慌てて謝ると
よくあることですから
道路のように笑ってくれた
よくあることですから
そう言って
許したことや諦めたことが
かつて自分 ....
初めはわずかな風でした
やさしい風は
そっと教えてくれました
春はそこに来ています
いつもとはどこか違う風でした
やわらかい風は
ふっと通り過ぎてゆきました
春はもう来ています
....
遅れてくる 朝に
日輪の再生が 静かに 遠く
密やかな冬至は 過ぎて
節をも分け 春分に 向かう
風もなく 穏やかな 一日なのだが
澄んだ 透明な陽光 麗らかな
味の無い 真空の時 ....
その先には何か有ったのだろうか
線路は緩やかに弧を描き
まぶしげに白く光る
僕は改札を後にする
何と言う悲しい道だろう
駅前のロータリーは同じ場所を回り
出口を見つけ出した人だ ....
朝起きると武士だった
(拙者、もうしばらく眠るでござる
と、布団を被ったが
あっさり古女房に引き剥がされた
長葱を{ルビ購=あがな}ってこいという
女房殿はいつからあんなに強くなったのだろう ....
妻が子を産んだ。
女の子である。
わたしの子ではない。
山神さまの子だと妻は言う。
山神さまの子は妻に似て、
肌が白い。
むずかると、
白い肌を紅くして泣 ....
稜線を背にして風は下りてくるので
もしかしたら 空を飛べるのではないかと お日さまに相談をしてみました
雲は優しい羽根を残して行ってくださるのですけど
不確かな憂鬱が胸を撃つ。
交差点に逃げ場はない。
誰にもだ。
長靴を履いて雨の上を歩く、
いつもこうやって泣いているの。
....
きみが森にはいれば
木々は青さを増し
きみが空に手をのばせば
雲はきみに近づこうと雨になり地におちる
きみが猫にふれれば
その三毛猫は、2丁目界隈の王になる
海がみたい、君がときどきそ ....
夜になると
緑色に輝く布に僕は立ち上がりながら包まれ
凍った吐息を漏らす
指の爪が長く伸びて尖って
僕は白い吐息を何度も吐く
夜を駈けたいと思う
地上に落ちた三日月を横目で見 ....
しんかんせんが はっしゃする
ぐんぐんとはなれゆくきみのすむまちへ
ことばにならぬおもい
かそくするしんこうほうこうにさからって
きゅっ とくちをつぐんだまま
きみのことを すき ....
ぼくたちは静かにシンナーを吸引する
ボンドやパテやガソリンはやらない
誤ってガソリンを飲んだロッテは恋人のアパートで死んだ
その恋人の名前をぼくたちは知らない
ぼくたちは常に純 ....
序章
薄くけむる霧のほさきが、揺れている。
墨を散らかしながら、配列されて褐色の顔をした、
巨木の群を潜ると、
わたしは、使い古された貨幣のような森が、度々、空に向か ....
くちびるの
置き場所を間違えた、夜明け
あなたへと無音で震える春が
無音で体温する春が
祈りを湿らせるので
耐え切れずに申し上げた春が
ぬくく、痛く、ここに
滲み始めるの ....
幼子が堅く握った手を
僅かにゆるませるように
朝の光を浴びた梅の木が
真白い花を孵化させている
豪華さはないが
身の丈に咲く、その慎ましき花に
頬を寄せれば
まだ淡い春が香る
....
オレンジ色に染まる公園で
僕はひとりかくれんぼうをする
ぞうさんのすべり台の上で
数を百までかぞえても
僕を探しに来る子はだあれもいない
風が気まぐれに揺らすぶらんこの
長くのびた ....
キャッチボールする
子供のときのように
幼馴染と
キャッチボールする
幼馴染の大ちゃんの球は速い
少年野球やってたから
川島イーグルス
俺は 嫌いだった
疲 ....
ポケットの中で粉々に砕け散ったビスケットを
乾燥した指で摘んで口に運んだ
解けたチョコチップが指に絡んで
煙草のフィルターまでベトベトになった
お前がくれたチョコチップビスケット
これで ....
君の街へ白のバスに乗って病院へ行く
君の街は僕の乗っているバスを最後に閉じられる
僕は病状が悪化し 入院することに決まった
喫茶店のバイトも辞めた 詩を書くこともやめたのだ
氷でコー ....
金曜の晩に、朝まで飲み明かすつもりだった僕らは
早々に店を閉め出され、地下室から抜け出し
たどり着いたのは、地上百階に位置する深夜営業のレストラン。
「僕らがテーブルを囲んでいるのか、テーブル ....
死ぬ夢を見るたびに
生きていることを味わう
生きるとは
そういうものだろうか?
笑うたびに
昨日の涙を思い出す
喜ぶとは
そういうものだろうか?
無駄のない生活をするために
....
ぼくらは たがいに
記号に すぎないと
了解しあった あの場所で
待っています なんどでも
そこから はじめましょう
彼女は意識が戻らないままだった
季節は夏を通り越して秋になっていた
生き物達は冬に備えて食料を蓄え
永い眠りに就く準備をしていた
僕は情緒不安定になっていた
彼女のことを思う度
....
家に帰ると門が壊れていた
妻と娘が代わりに立っていた
家の中では妻の短大時代の
同級生だった山本さんがいて
食事の準備をしていた
十年ぶりですね、と言って笑った
煮物の味見をしてあげた
....
たった一言の失言のせいで
創りあげたい美しい国の
議会はまた空転を続けている
かつての集団就職の金の卵たちが
機械化の波に押され
三高神話に駆逐され
猫もしゃくしも
大学と言 ....
目覚めると
駅のホームの端に立つ街灯の下で
粉雪はさらさら吹雪いておりました
次の駅の街灯の下で
雪は舞い踊っているようでした
その次の駅の街灯の下で
雪はまばらに降っ ....
君が死んでからもう二ヶ月が経つ
僕は病院に行くために若草色のバスに乗る
僕は19歳で喫茶店でバイトをしながら詩を書いている
最近調子がいいんだ
病院の帰りにメールが来て彼女から会わな ....
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