その身を削いでゆく
どこまでも
いつまでも
と、いうわけにはいかないのだ
だれであっても
どんなひとであっても
あげくの果て
使いものにならなくなった
....
ゆく道の車の窓に
雲を光らせ 幟旗を押し立てて
見知らぬ男たちが手を振る
起きぬけの笑顔で
すぼめて垂らした傘の先を
水たまりに映して
参議院選挙の投票に行く
昨日死んだ紺の背広 ....
開け放たれた窓からは
初夏の高台から望む
雨上がりの小さな街が一望出来る。
マッチ箱のような小さな家には
色とりどりの屋根が
張り絵のように
斜面にへばり付いている。
空は真っ青 ....
風が駅前の野原に吹いている。
野原に生えた野草の葉は
優しくうなずきながら
隣の葉にお辞儀をしている。
風が駅前に優しさを運び
優しさで満ちあふれた
空き地の前に僕は独り佇む
風 ....
娘たちは
もう眠ってしまった
何も書かれていない短冊がひとつ
テーブルに置かれている
なあ、父さんは
こってり疲れてしまっているから
願いごとなんて
ひとつも浮かばないんだ
静 ....
彼にその一件を報告すると、驚いて携帯をベッドの隙間に落としてしまった。
「どうしたの?」と隣で裸で寝そべる女は言った。
「女の娘?」と嘯く彼女を彼は無視しして、さっさと服を着ろといい、
これから ....
学校からの帰り道
ごみだらけの家に住む
ひげだらけの臭いおじさんが
居間で背を向けて
テレビを見ている
『ガガー……ピーッ……』
灰色の砂嵐が映るだけ
やかましくノイズが鳴り響く ....
ね、ういろうさん
あんたちょっと歩くの速いよ
引っ張らないでくれる?
「お手をするかわり、おやつくださいな」
ね、ういろうさん
あんたちょっと拾い食いはやめなさい
あと、たまには吠 ....
雨を聴くひと
土を嗅ぐひと
奏でられる調べには限りがある
奏でられない調べを夢にみすぎて
からだを置いてきた場所を
遠ざかってしまう
胸の奥には想像上の内臓があって
白いバラ線に ....
私は私の、古い影を。地面に落とし、新しい光をさがしに行く、きっと壊れた匂いが、地平線の辺りに溜まっている、すべてはそこに。向かっているのだ、と、創造上の世界で。想像上のあなたが、私にも言う。
さんじゅうすぎて
こいをした
あさぎくにこに
どうきゅうせいは
にていた
つまにはいわない
むすこには
いつか
はなすかもしれない
プロポーズした
ゆめのなかの ....
あさ起きて、いつものように眼鏡をかけた
しかし何も写らない
眼鏡が写らないと何も見えない、
それは識別不能の抽象画の世界
超印象派な日常
ベッドサイドで頭を抱えていたら
妻が起こしに部 ....
窓枠は白く
午後のものうさの
界面に浮かんで
俯く薄紫のアガパンサス
灰色の雨の空を
半透明の船が
ゆっくりとよぎる
丘は遠くに緑の横貌を見せて
そのさらに遠く
おそ ....
飛べるわけでもないのに
いつの間にか
こんなに遠くになってしまった
遠ざかったのは彼らなのか
僕のほうなのか
教えてくれるはずのあなたは
昼寝をしてた椅子のように
そっけなく ....
{引用=憂鬱な目覚まし時計、日常へ旅立つ自転車のペダル、決曜日
ぽっかり空いた胸ポケットに立葵を活ける、華曜日
眠れる森に訪れたファーブルたちの欠伸、睡曜日
静かなく ....
{引用=頂点はさらに、高さを増す。塔の上に塔を
重ね、そのようにして時代はいつも、賑や
かに葬られていく。足元には、無数のメタ
セコイアが植えられ、手をのばして、空を
仰いでいる。道は、休むこ ....
時計の断面が落ちている
側に誰かの置いた花束がある
初夏の陽射しは影をつくり
わたしはわたしの影を
地面に埋めていく
勝者などいない
敗者だけの戦いが終わったのだ
イワシの缶 ....
タクシー運転手の吉川さんが、こちらに向かって歩きながら
「昨日の夜、見たこともない美人を乗せたんだぜ!」と大声で話しかけて
きたものだから、窓を開けていた他のタクシーの運転手連中が
どこで乗せた ....
自然には矛盾がない
人の心が矛盾を作り出している
三回忌法要で坊さんが話された
訓話の言葉を噛み締める
語る言葉が圧倒的に足りない僕は
何を書き残そうとしているのだろうか
語る ....
道の記憶
識別された日常の中を
人は歩く
そして
人は脆い
ぐにゃりと背骨の曲がった自転車が
無灯火のまま夜の街を走る
やがて洋品店の前でひとつの海になる
街中の甲殻類が次 ....
かえり道
コンビニに寄る
誰もいない
レジの奥で
店長が眠ってる
そのことは知っている
私は万引きせずに
発泡酒ではない
ビールを二本買う
おーい
店長を呼ぶ
どうせ ....
白紙の畑がひろがっている
一本道をゆく
と、ポツンと
巨大なショッピングセンターがある
集合住宅のコンクリート塊が墓標のように、山塊のように建っている
そんな
....
おもしろくねえなあ
そう思いながら
てけてけ歩いていると
おおっ! なんだこ ....
握りこぶしに八割の水分
寝具に横たわり
タンクトップも脱いでしまって
タオルケットに巻かれてしまえ
コットンが素はだかを優しく撫でる
身体感覚が昇るからうつぶせを楽しんで
ひと ....
わたしが金魚の頭を
撫でているころ
ぼんやりとした扇風機は
薄暗がりの中で首を振り
幼い子どもが一人
どこかで帰る家を探している
ここだよ、と言っても
それはきっと
ただの ....
それは忽然と現れた。
スパニッシュブルーの空を突き刺してそびえ建つ、
研ぎ澄まされた円錐形のオブジェ。
傾斜角75度の強い意志が天を貫いている。
指し示す先はどこまでも高く
その先端から曖昧 ....
インディゴに染まる星空の果てに
ピンク色に輝く地球があって
だからこの手紙は
あそこからやってきた
皺くちゃの状態だったと思ったけれど
手紙が言うにはこれは正当な折り方で
かみひこうき ....
数人の人が
現れて退き
出会った白髪の老人
何か言い残して
消えたが
印象に残って
束の間の老人よ
また来ておくれ
蝉時雨
もうすぐ初盆です
と言った義母の心が
くみとれなかった
その気持ちが解らないまま
私の口からも
同じ言葉が出てる
蝉時雨
記憶をたどろうとすると
嫁は不思議そ ....
まもなく
トンネルを通過します
と車掌が告げると
列車はわたしの耳を
通過していくのだった
長い車両は
途切れることなく
睡眠の世界を通過していく
暗闇の中
回転する ....
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