熱
水町綜助
熱がある
からだのふちを象るように
白く明滅する波
その中に
おぼれている
ひかる 虫
いくつもの
目を瞑れば
しんしんとうなされて
寝汗
小さく開けられた窓からは
遠くアスファルトと車輪の
引っ掻き傷
ぱら ぱらぱらぱら
とカーテンを揺らして
排気音
めくりあげた
風をはらみ微かに
遠雷
夕映えの記憶とは
赤燈色の
かためられた
がらすだま
それをみていた私は
みどり色でした
透かされた
硬質の
喧噪の
夜の中でした
あなたが口を開きかけたとき
たぶんわたしはもう知っていて
だから
ですよ
と
視界を折り畳む
そして眠る
熱がある
らしい