熱い とひとり言うのも飽きて
熱いねえ って呼びかけてみた
誰もいないのだけれど
そうしたらその声は
出しっぱなしのストーブに こだま したよ
金属質の涼しげな音で
冬の熱はとっくにさめき ....
今日も今日とて自習室難民
テキストを開いている時間より
さまよっている時間のほうが長い
席の空いているスターバックスを
すわりごこちのよい席の空いているスターバックスをさがして
....
鬱陶しいものが
わたしを柔らかく包んで
膜を作っていく
ほんとうは嫌だけど
鬱陶しい膜を
破ってしまって
鬱陶しい液体に
塗れるのも嫌だから
鬱陶しい膜
を我慢する
たまに
ぷち ....
雨が花の形を整えていく
わたしたちは共通の言葉で話し
共通の言葉で
触れるべき場所に触れる
民家の前にぽつりと置かれたバス停で
傘を差してバスを待つあの二人は
親と子なのだろ ....
暗くなる部屋
冷たくなった風が吹き込み
レースのカーテンが揺れた
僕は床の冷たい場所を探し 寝返りを打つ
遠くの雷のように 飛行機の音が響いている
今日はもう外へは出ないだろう
夕食の匂い ....
あめがふると
くさがはえるのだと
こどもがおしえてくれた
わすれていただけなのだ
やくにたたないと
しってから
おとなになるために
すててきた
わたしとこどもを
....
雨の生糸で編んだ夜
街の灯りのビーズ揺れ
傘の上では獣の足音
軽やかに
六月の匂い
たてがみやしっぽに乗って
運ばれる
鈴蘭を揺らす雨粒は
小粒のおいしいドロップス
だどもあの ....
缶切りで鯖味噌缶を開封し背中まるめてわぶわぶ食べる
薄荷飴ひとりで舐めてさびしがる君のことなど想ってみつつ
朝刊の明朝体が目に刺さる夜明けどこかで鳥が鳴いてる
晴れた日の午睡が好 ....
若き日に帰りたりけり今日もまた午睡の夢のしばしの間
雀たち囀りておりにぶき陽のさしこむ路地に水無月の風
体力の弱りを知れど負けるなと言い聞かせては七十路半ば
パラソルの陰に座りて ....
都会の道ばたに
一人立ちつくす感じと
故郷の川べりに
一人立ちつくすあの感じは
とても良く似ている
人は道を泳ぎ
魚は水底で働くのだ
生きるために
どちらも正しくて ....
川であそぶ
私と私
私はどうして
二人なのか
水面に写る
ある日の私
水切りしたら
私が消えた
渡船の船尾から
私が私に手を振って
私も私に
手を振った
ある日の川 ....
牛です私決めました出産ですお立ち会いのもと牛です私牛です出産です決めましたお立ち会いのもと出産します牛ました私です決めました私牛を出産します。
産まれました
白と黒の牛は仔牛と呼ば ....
岸に咲いてる、雨の花
魂宿る、雨の花
その透明の面影は
何故だかいつも腐らずに
僕の隣で、薫ってゐる。
それは愛人のようであり
それは女神のようであり
いつでも ....
噛み付いた歯の先から、刺激
微笑みの国タイランド
とにかくひどく蒸し暑くて
立っているだけで背中を汗がつたう
ホテルの側で借りた自転車には
鹿児島県の防犯登録証が張り付いていた
....
もう同窓会は終わってしまったが
アンタに会いたいと思った
アンタがどんな先生に
おなりになっているか
あたしは
クラス委員
学級崩壊し
不登校になった女子を
かばった
....
山奥の針葉樹林で生まれた
朝露のひとしずくは
無数のひとしずくと共に
苔や羊歯の間を縫って
ひたすら傾斜に従う流れになった
渓谷では
無邪気にはしゃいで
いたずらに透き通って
....
仕事と仕事の間の
エアポケットのような
30分間
中崎町と天六の真ん中あたりの
こじんまりとしたおしゃれなカフェで
居心地の悪さを背負いながら
コーヒーを飲む
午後2時
この街 ....
哲学
自分と向かい合うための時間を作るために
未来と向かい合う時は既に過去になっていて
過去と向かい合う時も既に過去になっていて
現在の自分と向かい合う時は既に過ぎ去って行く
作 ....
ひとつひとつ
家の窓にあかりがともりはじめて
空がかたちをなくしてしまうと
淋しさみたいな感情が
行き場を探す
そんなときは目を閉じて
くっきりと晴れた日の
空を思い出すんだ ....
何もない日が不安なのは
僕の心がゆれているからだ
縛られたい
アンカーが欲しい
ユラユラゆれ続けて
何処までも流れていくから
空の青さにさえゆらいで
昼休みにあてもな ....
空色が
損をした
生まれてはじめて
ソーダ水を知ったから
どこまでも青い
嘘のような
真実なのだった
外は雨
気が抜けるまで
止むだろうか
今にも浮かんで ....
知らない言語を聞いている
彼が何を言っているのか、私には分からない
「大好き」かもしれないし
「死んでしまえ」かもしれない
「そこ空いてますか?」かもしれないし
「昨日のテレビがどうした」こ ....
休日の午後
息子と散歩した
飛行機を空に見つけて
あんなに飛んで
どこまで行くんだろう
と息子が言った
西の空を見ては
あそこに夕方みたいなのがあるよ
と僕に教えてくれた
....
81
棚の上に置かれた卵の装飾から産まれたカッコウのひなは、早速、置き時計を下に落とした。
82
あなたは、私の中から一回り小さい私を取り出し、その中からまた一回り小さい私を取り出し、を繰り返した。 ....
ただの鉄塔を見つけた
ただの言葉を思った
傷つけたり不信がらせた
さっきのただの言葉
あとなんにち人間やれば
まともなただの男になれるんだよ
おーい、東京タワー、
おまえは、来年あたり、 ....
カスピ海にも ヨーグルトにも 興味がないから
もっと ほかのことを語ろう
テレビショッピングの人魚
深夜 まばたきが追いつかなくなった深海魚
青白い光に照らされ 沈んでいた
カクテルグラスにヨー ....
シャガールの恋人たちよ天蓋に夜を満たして水浴びしなさい
留守にして帰り着いたら生き延びた薔薇が幾つも咲いていました
ビッグバン、インフレーション自鳴琴の箱を開いた誰かがいました
鎌倉 ....
思考経路が低下すると
眠くなる
眠る 眠る 眠る
何も 考えないで
眠る
眠りは
死に近いともいう
あたしにとって
眠りは最上の友だ
傍らに 猫を見て
まどろむ ....
ふたり歩む小径にも
ふたりくぐるアーチにも
薔薇たちは咲き誇り 香りはあふれ
胸の想いも 互いの声音や眼差しも
薔薇の魔法を帯びて かなしいほど甘やかに染まり
この園がいっそ迷宮と化せばいい ....
屈折率がちがうので
液体があるのだとわかった
ひんやりとした
理科室が好きだった
フラスコやビーカーやアルコールランプの橙色をしたたましいみたいな火
....
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