たった一つの君は
風のように吹いているが
たとえば
コートのフードを躍らせたり
トマトの表面にとどまる水滴に光を与えるとき
微かな掌の温もりに似た質感を残していくのだ
そう 僕らは ....
雲ひとつなく秋晴れの空
父の運転で越えていた峠も
いまならば
自分の運転で越えられる
アクセルの踏み加減でスピードを調節
ブレーキなんか踏まない
でも
思いの外カーブは厳しい ....
月を見ています
あなたは今夜
月を見ていますか?
それは
鉄塔の上に見える月ですか?
それは
杉の大木のてっぺんに見える月ですか?
それは
電線の間から見える月ですか? ....
朝日新聞が降りそそいでくる夕べに
お茶をのもうとして
ぼくは
お茶がないことに
気づいて
原稿をおいて
タバコすった
今日は
出かけなかったんだ
朝から
そうして弱火で ....
信じるものは
必ず裏切る
その
摂理を許しながら
壊れたものは
壊れたまま流される
暗闇が
暗闇のまま発光するように
欠けたものは
その空虚を慈しむ
欠落は甘い
それを知るも ....
まっすぐな姿勢で、書きなさい。
こんな忠告とともに、身体の歪みを矯正して
くれる機械があったら、私はそれに従うだろ
うか。椅子の背もたれの部分に備えつけられ
たセンサーが、座っている者を背 ....
シャンプーハットをかぶる男の髪が、
全部抜け落ちてしまえばいいのに―と、
ドリスは星に願った。次の日、その男が
頭を掻くと髪がごっそり抜け落ちた。
ドリスは彼が風邪をひかないように
毛糸の帽 ....
その公園にはたくさんの小僧がいる。
「ハナタレ小僧」に「ヨダレ小僧」
「お漏らし小僧」に「汗かき小僧」のせいで
地面はビッショビショ!
芝生が枯れるわ臭いわで、たちの悪い動物園みたい。
人足 ....
僕の魂は丸いサイコロのよう―
生まれた時は四角だったが、
成長するにつれ丸くなっていった。
そしていよいよ丸くなったサイコロは
「何歩進め」などと伝えることなく転がり続ける。
きっと砕け散る ....
浮遊するのは 短い 手である
切り取られている それらは
いなくなった 僧侶であり
僧侶の 泥の数珠である
浮かび上がるのは 指先である
アスファルトの 教義に
道徳の 邪 ....
幼き頃
大事なおもちゃは全部弟に取り上げられた
母に話してもお兄ちゃんだからがまんしなさいと言われた
よく妹をいじめて遊んだ
そのころの楽しい思い出が僕には全然ない
家庭の ....
「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」
「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」「るる。」
「るる。」「るる。」「るる。」「 ....
老人ホームの廊下にぽつんと置かれた
老婆の横たわるリクライニング
動かない首をギブスで固定され
閉じた瞳を{ルビ顰=しか}め
入浴の順番を待つ
「{ルビ今日=こんにち}は」
....
見つめ合ってみたの
なんの得にもならないって
わかってはいたけれど
亀のお尻はかわいいねって
言いたかっただけ
夕暮れ時に
かち合ったのが
運のつきね
家屋は言葉のように
優しく朽ち果てていた
時間があればそこかしこで
両親は笑顔を絶やさなかった
幸せな玄関ホール
その壁には今でも
兄と私の指紋が残されていて
静かに機械の匂いが ....
羽のついたボールが
キャッ、キャッ
といいながら落ちてきた
「ほらね僕にだって飛べるんだ
鳥になったんだよ」
「あのね、それは飛んでるんじゃなくて
落ちてるのよ。 ....
空気
俺はきみに欲情したから
空気
きみは泣いたね
俺はALTA前で空気中なにもないところを抱き締めるよ
そしたらだれか
誰かとてもやさしい人が涙Vロートをさして天をみあげるから
あまぐ ....
父が酒乱で母に暴力を振るっていたのを憶えている
母は父に怯えていた
父はしらふの時には優しい人だったので俺としてはどっちやねん!という感じで安定した心地がなかった
熱が出ている時に父が甘えて ....
ふと
寂しくなったので
何か作ろうと思い台所に立つ
頂き物の里芋がたくさんあったので
とりあえずそいつを煮ることにして
丁寧に皮を剥いて丸くする
冷蔵庫に鶏の挽肉があった
さやい ....
ひとは死んで星になるなら死んだひとにわたし死んでも触れ合えないね
あたたかい窓に涙をはりつけて幾つもの千途絶えてく音
一度融け凍ったアイスの響きですガリレオ・ガリレイ歯にしみて ....
知っているのですか
あなたと
わたしが
手を合わせる
その意味を
つなぐ、と
つながれる、の
隔たりをあなたは
まるで何も
知らないかのように
この寂しさを
知ってくださ ....
突風で
ぱたり
ぱたり、と
素敵なスキップが
消えてゆく、その頃
何事もなかったかのように
夕刻が
やがて、夜であり
冬であるなら
素直でいることはとても難しくて ....
ちょっと こっちへおいで
ふすまのあいだから
まるで骨のような
青白い手を
くらり くらり と
招いて
貴方は 僕を呼ぶ
おかしを あげようね
ちり紙に包んだ
....
電話できいたあの人の声は
限りなく藍色にちかい、
薄紫
遠くに見えるあの人の存在は
夕暮れと夜の境界みたいな
インディゴブルー
思い出せるのは
それだけ。
おとといまでのぽかぽか小春日和から一転
きのうはどんよりと冬枯れが
凝ったような空模様で
天気予報も縞模様を
綺麗に入れる為か
季節の針を先に進める一押しか
下り坂に向かう予想
朝、カー ....
毎日 雨の七月は
すずしくなるのはともかくとして
どことなく 鬱々として
なんだか 人生の遠景みたいです 煙っていますし
そんな気もしてくるんですけれど でも七月だから
庭に道に花は咲き ....
自己嫌悪が庭に降り積もって
草木は見えなくなりました
どうにも塀が成長しすぎて
背伸びしないと外が見えません
日を追うごとに高くなります
礼儀も何もなく覗きに来ていた
屈託なく笑う あ ....
メロンパンが破裂して
扉が開いた
向こう側には
名前の知らない海峡がひとつあって
多分自分もあっち側なんだと思う
それなのに僕は波音を聞きながら
こっち側でひたすらメロンパンの
....
パッケージが
破かれてゆく
微かな期待に
苛立った指で
どこにも
何も
入っていない
ということが
からだに向かって開け放たれ
明らかになっても
明らか ....
私はもともとマンガが書きたかったヒトなんだけれど、絵がぜんぜん描けないのでやめてしまった。しかたないので小説を書こうとしたけどうまく行かない。どうしてうまく行かないかとゆーと、10枚くらい書いたとこ ....
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