香ばしい匂いがして
私を育ててくれた人が
パンになってる
押せばふかふかするくらい
焼きたてだった
少し離れたところに
積まれた下着に向かって
丁寧にお辞儀をしている
どこが手か足 ....
ふたつに割ったチューチューアイスを
仲良く食べましょう
ありきたりなことしましょう
やり残したこともそれほどないし
あとはもう
チューチューアイスでも食べていましょう
チューチュー
チュ ....
畑の真ん中から
どっしりと重い夏をもいで
両手で抱えた
なんだか地球を抱えている
そんな気がした
畑の真ん中から
重い夏を汗を流しながら運んで
丸い大きな宇宙の中にそっと入れた
....
うふふふふ。
いいもんだ。
もう引き返さなくて良いのは。
良かったじゃないか。
僕なんかの思い通りに
ならなくって。
すべてうっちゃらかして、ぶらぶら。
ご近所の真っ昼間 ....
真珠は白くて綺麗に丸いからキライなのだ
かわいげのないそのコドモは
そんなふうに思っていたものだったが
世の中には白くない真珠もあれば
丸くない真珠もある
そのコドモは
真珠そのものよりも ....
「夢ばかり見ていたあなたも大人になったのね」
そんなことを口走った夢を見た
ハーゲンダッツのカップの中で溺れていた夜
抹茶色のスカートを捲り上げて
「さあここに来て頂戴」
そんなことを口走っ ....
ひっそりとした山の中に
一筋の銀色の水が
きらきらと輝きを放ちながら
そばに開く大きな葉に
花を咲かせるように
静かに脈をうつ
時折り光が流れの中で止まり
うたかたとともに消えてゆく ....
やぁやぁ、
きみのかわいい トッティーだよ
おはよう、
じつに いいよるだ
おべんきょ、がんばってる?
やっぱアレだよね
ほらほら、
はなび なんて
やるもんじゃないってはなし
かぎ ....
蝉時雨も止んだというのに
真昼の喧騒が
じりりと
耳に焼き付いたのを
両手で塞いだ
鳥の群れが西をめざし
灯火色した空に
消えていくのを
門口に焚いた火とともに
静かに見ている
....
ネコよ眠れ
君はキャットフードなのだ
ネコよ眠れ
くったら眠れ
君はお魚いろいろなのだ
ネコよ眠れ
白いネコよ
好きなだけ寝られない一生なんて
おきている価値は無い
....
さわやかな風が吹いた
ピアノの音が聴きたい
私はピアノなんて弾けないけれど…
だけど そんな気分だよ
風は私の味方…
この風に乗っていきたい
どこまでも…
どこまでも…
今 優 ....
{引用= ―オフィス街のすきまから
唸り声と酸の匂い}
蒼く林立するビルの足許には
反転する魚群のうすくろい影と 幽かなハミング
水辺に群れる野 ....
炎天下の路上に
{ルビ蝉=せみ}はひっくり返っていた
近づいて身をかがめると
巨人のぼくにおどろいて
目覚めた蝉は飛んでった
僕の頭上の、遥かな空へ
瀕死の蝉も、飛んだん ....
あなたの古い帽子の色を
新しくし続けている
寂しいことがいつも
正しいこととはかぎらないけれど
もう少し、窓を、開けて
虫たちのお葬式が
時々見えるから
小さな座卓では
行儀の ....
浜辺に群がる人波が
ひとしきりうねって退いたあと
待ち兼ねていたように
波音は膨らみ
熱を孕んだ砂の足跡も風に消されて
浜は打ち上げられた藻屑の褥(しとね)になる
風が
湿り始め ....
それは今でも
ザクセンの古城の地下室で回っている
どこからもエネルギーを補給されることなく
永遠に回る大車輪
笑う者は笑うがよい
無から動力は生まれないなどという
君達の愚かさにはうんざり ....
いつも一生懸命予定を立てて
ひとつひとつ階段を登るように
こなしていくあなたへ
肩の力を抜きましょう
予定は未定であるわけで
至る道が閉ざされちゃったように感じても
今の一歩をどう ....
繰返してはいけないと思っていても
繰返してしまう
それはちょうど悪戯っ子が
すぐにばれてしまう悪戯を繰返すのに
似ているのかも知れない
かまって欲しいわけでもないし
誰かに判って欲しいわけ ....
何処かへ行きたい衝動が
どうしようもなく高まって
東京タワー
エレベーターに運ばれた展望室
見下ろす景色
何処かへ行きたい衝動が
どうしようもなく高まって
東京タワー
此処から先へゆくことも ....
キミはいつもそんな顔をする
窓辺に咲いた硝子の花を
こともなげに砕いたキミは
心の傷を空に撒く
キミはいつも損な顔をする
砂漠のアスファルトを走る車を
横目で睨み続けるキミは
笑 ....
あれは忘れもしない
一年前の8月6日
仕事を終えて
家に帰ると
あなたは待っていた
フリルのお母さんエプロンを
ひらひらさせて
おかえりなさい
待ってたよ
ばんごはんの支度が ....
1
ここに文章がおかれる事により
おこる作用
について考えなさい
2
コミュニケーション
というものによりそう脚力を我々は失いつつある
この問いに対する答えを
丸かバツで表示せ ....
記憶は左から右へ過ぎ去り
流れる雨に歪んだ街並みは
僕の黒い顔を窓に映している
暗い路地にぼやけた蛍光灯は
6等星にすらなれなかった
歩道を照らす銀色の光達
僕達は何処へ行くんだろ ....
僕らは空気を育てた
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何 ....
はちがつようかのその下には
あのひとの死体がうまってる
わたしの夏が赤いのは
夏があのひとをうばっていったから
わたしの夏が暑いのは
夏があのひとのねつをうばっていったから
はちが ....
一.
なんだかね
スーパーに行ったんだ
この街は夏でも冷房とかあんまり無くて
でもそのスーパーにはあって
涼しくて
何買うわけでもないけどね
近くの中華料理屋の中国人たちがいつもどお ....
あと十分で地球が滅びます。
いつものように何気なく見ていた目覚ましTVで
総理大臣が重々しい口調でそんなことを言った
朝。
あと十分だってよ、どうする?
母さんは僕を見ながら、くひひ ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた
神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
電車に乗って 都内へ行く
それは
ときには嬉しいイベントであったり
ときには必要に迫られた用件であったり
車内では少し緊張している
エプロンではなく ネックレスをつけているから
サ ....
海が仄かな火を抱いて流れる。
流れは、わたしの新しく柔らかな意匠を溶かして、
かわいた青い夏をひろげる。
みずを失くした海が流す、青い夏は、
白昼の街に横たわり、死者を語り、
練られた風 ....
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