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{引用= 「歯」
数匹の
蟻とともに
おまえの白い歯が
焼かれている
雨は
降らず
風だけが、その
匿名の乾きを
旗印のようにたなびか ....
まるでこの世の始まりから
僕を待っていたように
茶色い床に君の
十二枚の写真が散らばっている
秋の風が窓の外で
穏やかにはためく午後
僕はグラスに冷たい ....
僕らがコンビニと呼んでいる
長細い直方体には
どんなものでも揃っている
弁当もポテトチップスも
洗剤や電池や、ティッシュまで
だから僕がその日
その、冬 ....
縄文土器を
保健室に忘れてしまい
取りに戻った
夏の日
熱く
熱く光は燃え
廊下を歩く人たちも
ブラスバンドの行進曲も
そう仕向 ....
{引用= 「書く女」
書く女は
窓辺の
机のあたりに漂っている
霧深い部屋に
そなえつけられた
軟体
書く女
かつては川
あるいは不吉 ....
十月の豊かな光が
いつもの駅前
喫煙所のボックス灰皿のあたりに
私が待たせている
ひとりの女の額のあたりに
しっとりと落ち、
浸食するように広がる
....
胡散臭い
新興宗教みたいな夜のバーで
僕は水しか飲む気がしない
みんないて
みんないない
ここにあるのは
下手糞な詩の下手糞な朗読
ここにあるのは ....
{引用= 夕暮れ近くになると
老いた女がアスファルトに
一つの箱を置きにくる
ただの箱だ
ダンボールでできた、薄暗いだけの
小さな箱
それを置くと女はきび ....
猫よ
おまえは邪魔だから
どこまでも流れていってしまえ
そう言うと僕は
ギャアギャアとあばれる君の飼い猫を
便器に放りこんで
「大」のレバーを回したのだ ....
朝の月は
言いたいことがあるのに
黙っているような感じ
薄明かりの部屋に
てんでばらばら
きのうの話
おととしの髪の毛
あさっての哲学 ....
きこえる
ひかりがきこえる
波打ち際に
わたしは耳を置いてきてしまった
遠い日の
あなたが歯をみせて笑ってる
くりかえし
....
胸に抱いた
ちいさな逸脱を
きみは、
そっと足もとにこぼして
かなしげな
落ち葉のように重ね
どこか、
もっとかなしげなところへ
....
世界にはたくさんの場所があり
たくさんの営みがおこなわれている
その日、僕が
することを選んだのは
床屋に行き
髪を切ってもらうこと
ひどく ....
そんなに簡単に
悲しむなんて
駄目だよ
ぼくが許さない
レモネードがはじける
モリッシーが嗤う
あまりに
ぶきような
きょうの日 ....
夏のむこう、
あの入道雲のあたりに
ひとつくらい、
ふたつくらい、
みっつくらい、
言いそびれてしまったことが
あの入道雲のあたりに
....
かあさんのあいしてるは
おつきさまみたい
やさしくつつんでくれるから
こんやもぐっすり
とうさんのあいしてるは
とうさんのせなかみたい
しんぶん ....
沈黙を
六つの段落に区切り
ふりがなをふりなさい
青空をゆく白い雲と
どこかから聴こえるピストルの音と
くすりともしない人々
この光景の
....
{引用=CHAGE&ASKA「SAY YES」への返歌}
余計なものなど無いよね
……っていうか
何もないよね
仕事やめて
ミュージシャン目指すとか
何?
....
昔々、
真昼の公園で
だれよりも巧みに
おままごとをしてみせた
きみが主婦で
ぼくが会社員で
時は今、
少し違うのは
きみもぼく ....
そらには大きな口がある
風でくちづけしてくるくせに
無口なところがいとおしい
そらには大きな腕もある
胸いっぱいに星を抱き
ついでに燕をつまめるく ....
日曜日、
くさかんむりの広がる野原で
ピクニックをする
あなたは適当なところに
持ってきたもんがまえを敷いて
ここに座りましょうという
おべんとうよ、と
....
あなたの
からだの
どこかにある
おおきな
おおきな
おおきなうみ
ちいさな
ちいさな
いまは
ちいさなぼくだ ....
きいてね。
きいたこと、あってもね。
うるさいだろうけど、ね。
ねぇ、きいてね。
きいてね。
その耳たぶでね。
もっと奥のほう、
まごころ ....
二人で
ふとんをしこう
最後のニュースが
かなしい話を終えたなら
丁寧に
ふとんをしこう
僕らを責めたてる
光たちにつかれたなら
....