ひとつひとつに
名前なんてなかった
きみだけが知っていた
美しい世界
神さま
ねえだから
きみは神さま
みんながうまれたときに
さいしょに泣いてくれたのは
きみだったな
あわくする ....
うまく言えないから
靴の先を見つめていた
物思いに更けてばかりで
文庫本も進まないまま
気が桜みたいに散っていく

口癖を真似されて
ぼんやりと指と指を繋いで
不器用な照 ....
恋のむこうがわを見てみたい。からだのおくが、あついんです。って誰につたえたらいいのですか、あなただけにさわってほしい、あなただけに、しってほしい、どんなにわたしがことばをつむいだって、あなたとの 愛な .... つばさに
傷をつけて
泣いている
鳥がいる
それが
あなたなら
どう感じる?

あなたの
心が
つばさなら
傷つけないで
やさしく
受けとめて

痛めつけないで
そっと ....
(夕火の)
雨がふっている
多分、あの崖に植わっていた木の枝
くすぶっていた赤や黄は

ゆうやけが
いや葉っぱが
お互いを見ながら
しばらくのまどろみを
一日のしめくくりを
見つめ ....
老婆は
朝市で売れ残った
5本の胡瓜のうち4本を
田んぼの用水路に捨てた
4本のうち1本を
散歩中の老爺が川で拾った
老婆のきょうだいの老爺は
翌日老婆と一緒に
ふたり仲良く胡瓜を
 ....
太いがそれだけの腕である
誰かがしがみついた腕である
ふたつ浸ければ
たいそうお湯のあふれる
腕である
銀色のケトルが鳴く
耐え切れずに

もう
私はおしまいだよ と
あらん限りの
声をあげて

鳴く
鳴き狂う
誰か止めて止めて止めて
さもないと

さもないと?

ひざを抱 ....
 
 
 
 
きみはコーラを飲み干せない
柴犬のジョンは鳴けない
そしてぼくは笑わない
 
3つ揃うと
「不幸」
ができた
 
きらきら光る
「不幸」
だった
 
  ....
  それは光のなかに
  夕暮れどきの街灯にある
  一〇〇円ライターの炎のなかに
  乱反射する水面にある
  やさしい気持ちが消えないように
  祈り続ける心の奥に



 ....
                 2007/12/15




白々と初夏の短い夜が明けて
東の空にも
シロナガスクジラを思わす雲が
ゆっくりと背中を持ち上げる
美しく光ったりして ....
九十六だった大叔父が暑さに耐えかねてとうとう往生したのが3年前の8月4日。
「もうちょっと前にいってくれりゃあ、初盆も今年すまかいたのに」と、葬式と三日七日と盆と忌明けがごちゃごちゃにきちまった夏 ....
ゴロリと寝ている
わきの草の上を見てみる
葉っぱの上にケムシさんだ!
フサフサの毛の生えたケムシさん
そいつを見ながら いつの間にかウトウトする
ふと 目が覚める
さっきの草になんとなく目 ....
1年前の物干し竿がボキボキ折れたため

線香立てに刺し

バスタオルを半年前の乾麺にかけると

「向いてないですから」

一瞬で職場放棄され
シフトに二つ穴が開き

洗濯機が運ぶ ....
飲み干した酒杯のそこに
月が映りこんで
もっといっしょにいてほしかった

すきとおるようなさそいをなげかけています
クッキーを作ってた水曜 夜
テレビが家にないので 見るときは多分
友人の家かどこか



 「一緒に寝ないんですか」

そう、並河さんに訊いたのは 今まで泊まってきた人たちが
いつで ....
自分が見えなかった僕は
君に出会って初めて輪郭をもった
透明だった体も心も
次第に色付いていった

もっと君に見てもらいたくて
色はどんどん濃くなるけれど
僕は君が何色を好きなのか知らな ....
ことばを交わしたい人がそばにいるのに
壁に貼られたメニュー表ばかり見ている
生ビール550円
横顔を見るタイミングだけうまくなる

「いい人」になんかなりたくない
「大切な人」になりたいの ....
■「知らない金属の話をしないでください」


■「ぼくと話しても、あなたが知るということはありません」


■「どこかへ金属が行ってしまったのです。話をしてください」


■「 ....
ステンのやかんで湯を沸かし
凍った車の視界をひらく午前七時
柔らかさを帯びた空気の向こうに

こっぽり

と浮かんでいるあれは
マリーゴールドの豊潤
あるいは熟れた蜜柑に似た
色 ....
わんと鳴いたから
「ぼち」

わたしのこと
ほんとは誰も知らないはずなのに
「おはよう」
だなんて声かけて
頭をなでなでしたりする

とげぬき地蔵じゃないんだってば

雪が降って ....
海の動物になりたかった
海に行きたかった

底の方で
脊髄が列車のように並んで
色のない海老が
乗客のようにじっとしている

マリンスノーの中
錆びてしまいたかった

潮を ....
台所の片隅で
冷蔵庫は
昨日よりもちょっと
ナーバスになっている
海の見える場所に住みたい
そう思ったのは
二十世紀の終わり頃だった
さようなら
という言葉は
ずいぶんと
細長 ....
小さな啄木鳥が
枝のむこうに
隠れて鳴いている
霜に白く
苔に覆われた墓石の上に
戯れる小栗鼠

韜晦する記憶のメレンゲ
青い雫

仄かに紅く冷たく
かじかんだ ....
{引用=瑠美ちゃん、3百円のフカヒレラーメン
本物のフカヒレは入っているの?

理恵ちゃん、横浜中華街には行ったことない
一緒に行ってくれるの?



私たちは
フカヒレラーメン、
 ....
町から街へ
子供から大人へ

僕の小さな足が
大きな坂道を下る

池の周りを囲う家並み
そこら中で
夕食の匂いがして―

母さんも料理を始める
僕は父さんの為に
ビールのグラス ....
「「オイルは焦がすわ。

しょうゆ、がいろじゅ、ぼちゃん!

ステンレス坊や 「「ラルゴ・ラルゴ!

「「一号車、一号車、暴れています。

「「誰が?

「「付点うさぎです

 ....
江古田のアパートで阿鼻叫喚していた頃

鎌倉高校前の砂浜で
途方に暮れる

溢れる涙は
激しい波打ち際で海の滴になる

どれだけ涙を流せば
砂漠は森に還るだろう


ドキュメン ....
女一人二十過ぐれば寂しくもありケーキに増えるロウソクの数

父親が母と婚約した年にとうとう追いつく二十二の冬
1、私

道路のわきに沿っている
白いはしごがひどくゆがんで見える

テールライトが砕け散ってしまっていて
私はここにいない

頭の中でゲシュタルトが崩壊していくように、
二足歩行の ....
夏野雨さんのおすすめリスト(3676)
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