科学者風の初老の男に案内され僕は
たわいない冗談もいいながら気軽に
バイオハザードのそれかと思うくらい
深い地下まで降りて行く。
科学者風が見せてくれたのは
マグロ大の深 ....
楕円の皿にわたしの指紋が乗る
楕円 私は 指紋のひとだ
ゆらゆらと少し苦い棒茶をすする
大鉢の下は銅の網が敷かれ
光沢もない
格子戸から黴がこぼれる
吹き抜ける風と
カーブミラー ....
ぼんやりと歩いている様な気のする
ある者たちは
間違った方向に向かっていることに気づいた
父と会おうとする日の道を思うことすら難しかった
ましてや出ることなど
駅の改札は入ったところから ....
なめらかな夜の重みがのしかかり孵化した蛇と砕かれた月
そらのないひろばにひびけきみのこえきみのかなしみきみのぜつぼう
机の右端に、
突如として、
全長5ミリぐらいの猫が現われ、
「みー、みー」言いながら、
ノートパソコンの上に登り、
「みー、みー」言いながら、
キーボードの上を通過し、
降り、
「みー ....
こんなふうに
手足が生えそろって
二つの目と耳があり
呼吸も嚥下もでき
発語さえできる口があるのは
不思議なことだ
それが人間の
かたちとして当たり前に
認められているのも
不思議な ....
(月を黒い種に、太陽を色彩の影のない輝きの雨にして)
ほんのりと甘い、果物の匂いがした
乾いた風が吹く緑の丘の上から
眼下に広がる果樹園を見下ろす
頭上の雲から誰かに見張られていて
けれ ....
*
凭れたなら
鳥のように
木の欄干は鳴いて
帯のゆるんだゆかたのむねと
あのうみは
つながっているよ ....
100309
並四ラジオの整流回路
小さな容量のキャパシターに
少し大きすぎるインダクターが繋がって
交流をぎごちない直流に変えている
....
母さんに
ブティックを
プレゼントしてあげたい
もう街にいかなくていい
大好きな洋服が
売るほどあるのだから
試着室で
好きなだけ
試着することができる
しば ....
立ち続けようとする日常に
心を演奏させられているような感覚がする
音楽を 鳴らし続けようとする 風景の中を
他人の心の中として 見つめようとしていた 鍵番は
白黒ですらなくなっていた 指先は何 ....
{引用=
愛なんてコンビニでも買えるって どれが愛だかわからんのやけど。
さみしくて漂流したくなったさかい、貯金おろしてロフトに行くわ。
星空をさんきゅっぱで買ってきて ....
{引用=
さようならを二回いった
一度目はさよならっていった
くちびるの端で酸素よりかるく、さよなら、って
昨日の二度目のさようならは
きみの眼に沈むぐらい深く、さようなら、っていった
....
適当にご飯は済ませろその代わりたけのこの里は噛みしめて食え
ペケをするマルをするまたペケをする答案用紙が涙ぐむまで
カゴの中震える果物くださいなろくでもない日に ....
忙しい日々のレールを脱線するように
不意に訪れた長い休暇
病室のベッドに横たわる僕は
窓外に立つ
独りの樹の葉群を躍らせる
風、を視ていた。
( きらきらと、協奏曲の奏でる ....
四ツに割ったリンゴを
庭の木の枝に刺しておく
この冬を越せますように
ヒヨドリたち
どうか無事に越せますように
海峡を越えていく鳥もあるという
敵に襲われぬよう波のうえ低く
群れ ....
メガネをかけたままキスをしてもかちゃかちゃフレームが触れ合うばかりで、ひろすぎる部屋の中ではほかになんにも音がしない、孤独とはこういうものだと不意に悟ってしまう夜があった、わたしにもきっとあな ....
みぎてだけが冷たくてすこししめっていて
どうして?
雪でもふってるの
ゆうぐれとあさやけがわかちあえる世界
越境するのは鳥たちで
ひとびとはただ
紫いろの宇宙をながめていた
....
雀等が、音符になって、弾んでる。
米の蒔かれた、日向の国で。
ミスったっていいじゃん
アイラブマクドナルド
君のゆめには
カロリーが足りない
点滅信号のループ
タイトルの長い歌を
ひくい音量で流してた
どのガードレールに
ぶつかればよ ....
札幌の街に来ている
なーんか 違うんだよね、って
まだ何度も来ていないくせ
妙にここを気に入っている
コウちゃんが舗道のさら雪を踏む
そりゃ、さ
新しい街だしね
歴史が街を作るん ....
シナプスたちのように、うごきあい、点滅する
地上の生きた星たち
今日もどんなかんきょうにあろうと
かなで合っている
それを聴き入ったのは
目をとじれば
誰もが知らない顔の乗る移動の
車窓 ....
現代詩フォーラム50選を発表し、わたしがたのしい。という企画です。
批評祭がずっと前におわっても、平気で大発表してしまいます。ラスト!
最後に、感想を書きました。最終行までお付き合いいた ....
深夜の冷たい台所で
古くなった冷蔵庫が自分で自分を解体していた
もう冷蔵庫であることに
いたたまれなくなったのだ
時々痛そうにはずしたりしながら
それでも手際よく仕事を進めていっ ....
緩やかな上り坂を自転車で走ること十五分
月極駐輪場から歩いて五分
駅に着いたときにはいつだって息が上がっている
通学に使用していた路面電車は
この辺りの住民にとって大切な移動手段
そ ....
真夜中が
ずっと
かたくなに守り続けた
ぼくの有刺鉄線を
溶かしてしまった
だからって
泣いたりするもんか!!
剥き出しにされた
ぼくという存在
空気に触れた ....
黒ずんだ木の床にそっと頬をよせる
インクと機械油の匂いが染みついた床は
使いこまれた年月を
なめらかな感触でつたえてくる
古い印刷工場をリノベーションしたと
誰かが言ってたっけ
そ ....
伝えたい気持ちを形にして
あなたに届けたいけれど
そもそも私には形がなかった
とでも伝えたいのだろうか
どこかから吹いてきた風が
もう一つのどこかへと走り過ぎていく
その向こう ....
庭の中では
わたしは園丁です
剪定ばさみ片手に
いろいろ切り詰めてまわります
あおあおとした小枝
みずみずしい若葉
手を入れるべき季節というものはありますが
どれも好きなだけ伸びても ....
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