あの日あなたは
この世からこぼれてしまって

涙が止まらないのはなぜだろう
瞳があって
涙腺があって
涙がこぼれて
そのことと悲しみにどんな関係があるんだろう


あの夜
寒い ....
僕が語ることのできる中で、もっとも美しい物語を君にあげよう

月が灯ると、夜が始まるよ
それから、
朝の始まりは、夢の終わり

朝と夜の間、
明るくて、暖かくて、
年老いた銀杏の大 ....
私たちは
おりがみのくに
二次元を

小さくたたんで
つるになって

おなかの隙間から
ふう、って
息を吹き込めば

祈りを宿した
強い記号だ


メレンゲを
淡く
 ....
空白をたどる
そうすればぼくたちはみんな
あの場所と呼ばれつづけている場所に
帰れるはずだ

子供の頃
壁を手のひらで撫ぜながら歩いたみたいに
植物のトゲに傷つけられたみたいに
擦 ....
午後の体操が始まると 
もの忘れのお爺さんは 
何かを思い出したように 
皆の輪からむくっと立ち上がり 
部屋の外へ歩き出した 

つきそいながら隣を歩き 
途中でソファに腰を下ろして  ....
貧しい公園の貧しいベンチで
貧しい僕らが座っていて
コーヒーをひと缶
分け合って飲んで
だけど、愛だけはあるから
寂しくはないよ

お金が入ったら
二人で公営の団地に住もう
そこには ....
要するに
しっぽ
なんだと思う

ブロック塀を
渡る猫が
しっぽ
ぴん、と
アンテナ立てて

バランスをとる
そろりそろり
それでいて
悠然として

しっぽ
うっかり落 ....
「ああ、やんなっちゃうな」
ある日クラウディは早く着いた塾の窓辺で空を見上げて呟いている
こうやってボウッとしてる間にも着実に迫るそれが虹試験なのだ
そこにどこからともなくぬぼっと現れる紳士
 ....
麦の穂がりいりい、とゆれる
すみれ色をした空想の
行き着くあたりで
番犬みたいにとびまわってる
ぼくは忠実なひばりでありたい

かなしみをかなしむとき
いつくしみをいつくしむとき
太陽 ....
                110601



パールホワイトの大型車なんかが走っているのは
我が国だけだろう
西欧人からは
なんという非常識な色だと言われそう
新型のフォルクス ....
{引用=すきなものがたくさんあった
ある、女性歌手はそのふうけいのさきに
ひとりきりのみらいをみた}


 *


すきな人がたくさんいても
私のことをよくしる人はひとり ....
レイニーレイニー、
甘いくさびとしての水滴が
ぼくの頸椎の4番目くらいを目指して
さかんに落下してくるのだ

メイデーメイデー、
苦いくびきとしての水たまりは
雨粒をよけるたび大きくなっ ....
林檎が地面に落ちるように
名前がきみに落ちてきたのか
それともきみが落ちたのか
兎にも角にも
もはや後戻りは出来ない(と、思う
柔らかな髪の一本一本に
小さな指の桜貝に
きみの名前が刻印 ....
僕らは名づける
僕らの世界のあらゆるものに名づける
僕らの世界が傷ついても
その傷にもやがて名づける
僕らの世界が変わってしまっても
その世界にやがてまた新しく名づける
   僕らは名づけ ....
こちら地球 きこえますか
月がとても美しいです どうぞ
こちらガイア きこえます
月がとても恋しいです どうぞ

日本と呼ばれていた辺りに船を止め
現在 周辺を巡視中です
まだ  ....
雨の歌がきこえる
空から放たれ
大地に落ちて
響く、歌たち

この星の、この世界の
この国の、この街で
ぼくたちがいま
確かに踏みしめる土のうえ、
なきがらを見送り
あたらしく生ま ....
けだるい床に敷かれたままの寝具が
なだらかな山を見せ
私は脚を崩し
あなたはインドの仏さまのように
片腕で頭を支え横になっている
輪郭だけを知っているつもり
ぬくもりに残像を刷る朝
(  ....
もう二度と行かないし
もう二度と帰って来ない
フェリーの二等客室に籠りっきりで
俺はずっとノートに言葉を書きつけていた

海の色はクリーム色
世界は脅威だ
俺の知っていることは
世界の ....
むすこが
いじめられているらしい

ちちもまた
いじめられていると
じかくしたのは

おさけをのんでいる
ときだった

むすこはまだ
おさけがのめない

のめない ....
白血球のように
私は私を運んでいく
落ち着く事なく場所から場所へ
居場所を探して

ワイパーが雨の輪郭をなぞって
すぐにじんで 繰り返し 繰り返し

どんどん追い越されていくのに
 ....
仕事帰りに寄るレストランで 
よく頼むキャベツの千切り 
日によっていつも 
ドレッシングのかけ具合が違う 

毎日同じように見えるとしても  
目の前にあるのは 
一生に一 ....
手荷物で運ばれなかった身体が
ひょろり空港におり立った
無言でおじぎを交わしたのだが
たぶんお互い
うぶなんじゃないか
汗ばんだ呼吸が
肌を濡らしあう

寡黙は夜のようにかきまわし
 ....
呪文をとなえるみたいに
あめだまをころがしながら
光の中を進めば進むほど
あんまり寒いので
動物園なんかはすっかり氷付けにされてる
入園できそうもないので
そのまま帰った

幽霊が ....
夜がうごいた
なまぬるく
あかい月のためらい
翅をひろげる雲たち
思い思いに

駐車場わきで
黒猫がスーパーの袋かじってる
貧相でうすよごれて
でもどこか清楚
みずみずしく香るけだ ....
沸点で淹れた紅茶に
蜂蜜と
生姜の絞り汁
握り拳よ
芯部に響け

きみたちが求める女に
雄々しさはあるのかい
絞め殺したくなるような可憐さ
汚したくなるような透明感
ほんとうは
 ....
夜中にひとり食パンをかじる
バターをつけないで
ジャムをつけないで
電気もつけない

冷蔵庫の前にしゃがんで
はみはみ
虫みたいに食べる


どこか外国から船に乗せられて
海をこ ....
私の娘に出会ったら
どうか伝えておいてください
何一つ伝えるもの残すものはないのだと
ただそれだけを伝えてやってください

私が道のそこかしこに置いた石に
あのこが躓こうとも
教えられよ ....
そして3ヶ月経ち
もし誰も小さな声なき声の歌に耳を傾けないなら
緊急地震速報のアラームをギターで鳴らす
という笑えないイタズラをして目を合わせジュテーム!
愛しているぜと笑いかけよう  ....
僕らは毎日、夕方に海の絵をかいて、すごしたりするけど、海の見えない町に
住んでいたりするから
このままの僕らで、かき続けたら、いつか、この海だって、線だけになってしまうとは思わないか?
くろがね ....
風が走っている、この胸の中で
指先で奏でてゆく夜の心音
私を呼んでいる遠い声が
耳もとでこだまするたまゆら
そっと指をのばす、頬に触れたなら
夜明けのはじめの光が胸へと届く


あなた ....
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