やさしい光の数々は レントの風に乗って
流れていきます
どこへ向かうのか 知ることはできないけれど
きっと幸福があると推測するので
ぼくはこの身を任せて 光と一緒に
流れていこうと ....
渡辺満里奈だけが、
永遠だった夏が、
確かにあった
書泉ブックマートのB1Fで、
よいこの歌謡曲の
バックナンバーを買い求めていたころ
けっしてやってこなかった夏休みが
いま、た ....
今夜も、仕事から帰った家で
待っていてくれた嫁さんの
台所で、とんとん
野菜を刻む音がする
僕の安月給でやりくりする
我家の食卓
昨日炒めた野菜の残りでつくった
....
ひらりくるり
かれはおちてきて
ふみつける意志もなく
ふみつける
じゃかり
ひとりで生きているようで
ほんとうはひとりで生きていない
しかしそれは
じぶんの意志とはまったくむかんけいの ....
おやすみ、あなたの黒髪にまだ青い葉をからませ
おやすみ、蔦は赤く、赤く血の色のよう
あなたの血のように赤く 私の血のように赤い
蔦を体に這わせ 木の葉の雨の降りしきるなか
そっと夢みる ....
ことしも
かきのはながさいていた
それいじょうの
けっこんしきはない
ひやかして
かぜがくちぶえ
ふいている
それいじょうの
けっこんしきはない
やがてく ....
つながり続けるアールイーから
mon 16:52
「きょうはサイダーとサングリアと いろんなラムネ20錠コースです。明日やすみだからもっと盛大にいきたいところだけど、からだが重くな ....
そんな老朽化した家屋の
偲ぶ場所
なんて
もうこの世の
どこにもなくっていい
壊れてしまってもかまいはしない
ぼくの
わたしの
想い ....
私、光なんですって。
文字が書かれたチノパンに、光がそそぎ
海の向こう側の浮島が、深く染まる
写真。
私、少し泣いてしまったのです。
悲しみの遺伝子
控えめな微笑み
フレームの外がわ ....
今夜、どうしても、
佐野元春が見たい、
と引きこもりの友達が言った
何年も歯医者に行けないので、
ぐらぐらになった奥歯をかみしめて
中学生のころは、
ぶきっちょなぼくの代わりに、
....
へやに
入りたくない
たとえばの
話をしよう
たとえば
わたしが
あなただったら
とか
空が
海だったら
とか
たとえば
あなたが
あなたじゃなかったら
と ....
なにも言ってなかったけど
おりたたんだ夜をポッケから出して
さあこれからはひとりで生きていくんだよ
と
目は
そんなふうに
そんなふうに
記憶もだんだん
おりたたまれて
高いところから
こぼれた水が
だんだんとぬくもりながら
流れおちていく
その
さいごのひとつぶが
目がしらに発見される
水は
いつもさみしがるから
海と
出会わなくちゃ
....
ヒグラシの虫かごを片付けながら
また来ますよ と夏が言ったので
私は わかってますよ と返した
入道雲と夕立も出ていくみたい
いつも 夏は勝手にやってきて
小さい 秋を残して ....
秋葉原の、ケンタッキーフライドチキンに並んで、
ポテトつきの、セットを買う。
つわりのひどい人が、ケンタのポテトだけが食べられた、
というのを雑誌で読んだから、
個人差があるので、単純参考には ....
今まで、いったい、
何本の傘を、
なくしたことだろう。
安いビニール傘も、
奮発した1万円の傘も、
気分を変えた緑色の傘も、
花開くプラネタリウムの傘も、
みんなみんな、
どこかでなく ....
秋晴れてんたかく、
静止した窓のむこう
水たまりを揺らすような声が
こだまする
静止した窓の向こう。
つらなる洗濯物の束の白(いたい)
枕にうもれた
寝顔のただしさよ
....
おかねはいらないから
やすみたい
そういって
あなたはせみになった
せみはにぎやかにないて
やがていなくなった
またなつになれば
おもいだすだろう
あなたが ....
夜ごはんは、
コンビニで、ニラ95円を買って、
玉子がふたつあったので、
ニラ玉。
ご飯をたいて。
へやの中は、
いま、
ニラのにおいが充満している。
充満しているなかを、
昨日 ....
ウルトラマリン。ここは深い海だ。部屋に積まれた延滞のDVD。小さな囲いをつくってきみと1000年間ねむってる。名前も忘れられた古生代のさかなみたいに。だれもたずねてこなかった。枯れた窓 ....
レイディオを聞いていたら、
モンゴルの自然の現況から見て、
人類が環境的に持ちこたえられるのは、
あと数十年だろう。
ということだった。
数十年といっても、
二十年と九十年では、大違い ....
宇宙はこわれて
とろとろの熊になった
やわらかで許された
ひとりぼっちの熊
わたしが出会うのは
その熊の孫の孫の孫の孫
なのだけど
まだだれも知らない
とろとろの熊しかいない
....
空きびんのそこに
ひかりをいれるやりかた
まくらについたにおい
夜のしみついた
空きびんのそこにある
ひかりみたいに
安っぽく
安らかで
失われやすい
性質だったな
....
ほら
やわらかな終わりがきたよ
やさしい
天使の顔をして
私は
急に思うのだ
三途の川の水面にも
低く高く
トンボの群れが
乾いた
秋を告げるだろうか
ワシは
車を ....
かいていのえきで
でんしゃをまっている
ホームにはだれもいない
ときどきだれかくるけれど
いつもきまって
うえのほうにうかんでいく
このごろは
でんしゃもくるようにな ....
9月
真夏日
ロックミシンと
直線ミシンに
電気を通わせる
いくつもの
ささくれだった傷を接ぐように
激しくも繊細に
針を打ち込む
壁に拳を壊す
いくつもの
波を立てる
....
河童の鋏青い大学ノート横切る
みとめよう 夏は終わってしまったし あなたをぜんぜん愛してなかった
溶けているアイスクリームの傍らで 吹けばとぶような恋をしていた
場所なんてかまわなかった 季節なんて名前なんてかまわなか ....
選手もいない
観客もいない
ただマウンドの上に
白く滑らかな豆腐だけがあって
時折吹く風に
ふるふるとしている
気がつくといつも
そんな球場を眺めている
わがままなあなたのReは愛しても
まだ足りないと盗みいるひと
雨の夜は朝がこないとテレビのなかの猫たち
雨でも散歩はできるよね、と
傍らのちいさな犬はぽつり
おやすみが言えなくな ....
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