浜辺から逃げたあの日に、あわてておとしたサンダルが一隻、いま、海にこぎだす、チベットに高跳びするのだと、空と海が双子みたいにみえたので、飛行できる気がしていた午後。
公園のゾウの遊戯具のした ....
自販機の過半数が「つめたい」に 昨日で冬は終わったんだね
夜明けの街
ビルの硝子は空を映して
深く青く
深海のように深淵のように
瞬きの度に光の差す時間を
吸い込んで見上げれば
頭上には群青
鳥が泳ぐ青い海
私なんて実はいない
誰かが成り済 ....
在宅療養のための装置が家に届いた
自分の担当をしている青年とは何度か顔を合わせていたが
しばらく会う事も無さそうなので缶コーヒーを手渡した
わざわざありがとうございますとそう言って
青年は缶コ ....
傘をさす
煙草に火をつける
いつもより少し苦い煙を肺に入れる
春の風はまだ少し冷たい
列車に揺られるあいだに、季節がかわっていく
時間がすべてを解決するって、
あの日誰かに教えたのは、わたしだった
窓からずっと離れた場所に、夏緑樹林が広がっている
重なりには、かなら ....
あたたかな骸
ころも脱ぎ去る
ひかり ひかり
拾うしぐさ
つぼみのように
水にふたつ
目と頬のはざまの歴史
ひとつの舌で掘り起こし
あなたは指の国境を消 ....
ぼくたちは春を起点に遠ざかる公転軌道を失った星
君という病を喪いかたかたと瘧(おこり)のように震える柱
便箋を一枚一枚丁寧に破ればただ ....
目玉焼きが
上手に
半熟ができたら
今日は
ツイてる日と
決める
神奈川県横浜市、みなとみらいにある大きな観覧車の中央に、電光の時計がついている。まだ、大学を卒業する前の頃だった。友人の知り合いの女の子が、モノクロの写真を大量に持ってきて見せてくれた時があった。そ ....
朝早くから
ショベルカーが稼動し
小人は井戸のところにいた
ちり紙でつくられた椿
丸一日をかけて
取り壊されていく母屋を
いつまでも見ていたい小人に
昼過ぎに雨が降る
小人がかけ足で帰 ....
花びらを漕いで自転車もいいけれど
ゴンドラを浮かべて出かけよう
水もそろそろ冷たくはないだろう
つばめたちを迎えに行こう
ふたまたの風
我が心のつばめたち
改革の靴は脱いで
言 ....
東京都足立区立千寿第二小学校
一年三組の教室に入る
すでに半分くらいの同級生たちが来ている
ぼくは黙って自分の席に向かう
座るとうつむいて
机の上の
ナイフでえぐられた傷跡や
木の節 ....
テレビ前
寝転び陣取る父ですが、背中から愛伝わってくるよ
8つ下
それでも喧嘩をいたします
きかん坊やも眠れば天使
人生の哲学伝授の
母がいます
あなたの笑顔にかなうもの ....
石を結んで鳴らす バラバラと鳴らす ひろいひろい夜の隙間を覆い尽くすほど大量にならす
でもバラバラな音が収束していってやがてぴったりと音を合わせるようになると静寂と対等にそれは轟いた
信号が変 ....
すっかり生ぬるくなったビールの向こうに
睡蓮の花が物憂げな顔で座っている
白い陶器の肌が青ざめて
透き通った光沢を放っている
その清楚な肌に触れることを許した
借金まみれの男の手が離れそ ....
もしかしたら今
泣かなければいけなかったのか
こころをぐっと鷲づかみにされ
大きく揺さぶられている
その振動があまりにも激しく
器だけ壊れそうで中身は動かない
小声で流せば ....
ぼくは言えないんだ
離れないで、と
そう言ってしまうとよけいに
きみが 忘れるような場所へ
消えてゆくようで
いつか指を伝って
届いたらいいのに
「とおくにいかないで」
それでも考 ....
私は死におびえている
新宿アルコット 地下三階へ降りる階段で
伊勢丹ガールズのレストルームで
「緊急地震速報が流れたら伏せるなどの安全な体制をとってください」と
女の人の青白い声でアナウンスさ ....
100円ライターで火をつける
ローマ字記載の大量生産のどこにでもある匂いを
個人の匂いと認識してしまう
単純明快な自らの臭覚を
恥ずかしくなって
はじてはじてはじ ....
君の友のために 空を あげてしまいなよ
午前の方角に 行くように
朝の日が 残っていくように
過去が そこにあったのか
君の 性別かい
友は 君の 民家を 見るように
コンドルが 二羽 ....
変なにおいのする夕方
集団下校の小学生
電信柱に一礼
黒いランドセルがあいてるよ
当たり前に中身が散らばって
三列後ろの女子が走って拾って
そのまま ....
空が降ってきた
その瞬間
青色になった彼女を
教室の窓から
眺めていた
粒の分裂音に合わせ
足踏む
泥だらけのローファー
センチメンタルに響く
ひらり、と揺れ ....
消しゴムで消してしまうと
虹が出来てしまうから
それ以上描けなかった
あなたの顔は
スケッチブックの上で
雨後のように濡れていて
小さな水溜りにある黒子は
ゆらゆら揺れながら
....
溶けた琥珀が持つ日差しの輪郭は
枯れるまで4年かかった
ひび割れ
すっかりプラスチックのような風合いで
昼の駐車場に薄い影をもたらす
車も看板も、大きなビルも
割とありふれていて
....
くたびれた足を引きずって
いつもの夜道を帰ってきたら
祖母の部屋の窓はまっ暗で
もう明かりの灯らぬことに
今更ながら気がついた
玄関のドアを開いて
階段を上がり入った部屋の ....
きのうから十時間と四十五秒起きてる。
{引用=「どこ見ても黒い縁どりが邪魔をして、どうしたのわたしたち!」}
{引用=「まるで景色の輪郭がさえざえして、とてもとても抱えきれない」} ....
春が訪れた
ある晩
列車に乗って
終着駅にたどり着くと
妹はまだ
待ってくれていた
春夏秋冬
それからもうひとつの
季節があった
かつてひとつの
家族でいられた季節
....
少しづつ温かく風が吹き抜けるから
じぃちゃん、じぃちゃんのことを思い出すよ
もう一度会えたなら、じぃちゃんに「まだ嫁にいかないのか」って
叱られるかな?
暖 ....
ラクダに乗って楽だ
砂漠をひた走る
毎食ビーフジャーキー
水は朝露飲んでます。
時間はゆっくり流れ
信じるものにすがり付き
心を癒し
シコリをほぐす。
人と出会い、別れて
人 ....
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