寂しかった日のように
ひと晩で降り積もった雪が
きれいな景色だけを水銀灯に貼り付ける
夜明けすら凍らせようと
港では恐ろしいものが渦巻いている
(賀露の蟹漁船は眠りにつくころ)
わたしを捕 ....
音の無い雷光を視て指ひらくひとでなしの手にけだものの鈴
とどめさす瞳の色を忘れたか常にそこに居る常にそばに居る
うつろにはうつろなる色おまえには向こう側の色 ....
あの子が
シャボン玉を抱えて
わたしがみちみちと
はえている歩道に
立っている
唇の薄皮を摘み取って
よいことばを
鈴に詰めてしまった
火曜日の光景です
あの子は
三週間おきの ....
息もなく脈もない君に水みたしコンロひねる夜会いたくて
お葬式よりも
静かな洗濯機を買いました。
しめやかに洗濯工程が行われ
私はにぎやかだった母を
懐かしむ。
雪をかきこみ スノーダンプを押す人が
車道で 私に向かって来る
降りしきる朝の通勤時間帯
信号で渋滞しては 諦める日々
安全運転しかないのだけれど
ねえ私の車に なんで真直ぐ向かってくるの
....
けっしてとどかなかった
そのえがおに
すこしでも
てがかけられただけで
じぶんは
きっと
しあわせだったから
その
えがおを
たとい
40ぷんでも
どくせんできたのは
じぶんの ....
誰もいない
そして なくしてしまった 言葉を
私は失った
流れる この 夜の中で
声を いつも 無くした
私は 暗い 夜の中だった
誰の声もなくした
私は この街の中で
ぼ ....
どうしてかわからないけど
思い出すのはいつも彼女のことだ
鏡に向かって化粧をする彼女
まっすぐ伸びた背筋
長い髪
笑った顔
驚いた顔
拗ねた顔
涙
加速するたびに近づいていき
今に ....
ほんとうに美しい音楽は
自らを主張せずに
日常を漂う
作曲家が世を去って久しい
遠い異国のカフェで
頬杖をつき
もの思う私の胸に
ふっと、灯はともる
瞳を閉じれば ....
肩掛けバックの、
留め金が、折れた。
金属疲労というやつだろう。
元々、通勤用のバックではなく、
スーツ通いになってから、
それまで遊び用に買っただけのものを、
ずっと使っていたから、 ....
カシオペアってどれだろう
懐かしい北斗七星は何処だろう
オリオンの一角も捉え得ぬ眼球は
地面に転がって冷えている
でも、宇宙はもっと寒いんだよ
?昭和の音?という玩具がある
夕景のフィ ....
たとえば飲み会の幹事をしたとして
のぞまれないのに
やたらと
むのうさを
おしだす
下司が
あって
それは
しぬべき
かも
直言はしない
きらわれていて
きらわれている ....
土のにおいの月がいくつか
夜から朝へと転がってゆく
鏡を造る鏡
暗い水と溝の道
星と星のあいだのむらさき
へだたりと境の腕
羽と羽のあいだに起ち
剣のように
....
雪だ
雪だ
窓いっぱいに
あふれるように
こなゆきは舞う
一心不乱だ
目的もなく
それが
私の恋だったのに
誰かのことばを気にしている
失う事実に揺らいでいる
雪だ
....
朝靄ののぞく
窓の水滴に触れたら
一滴が硝子を撫でた
一筋の道筋を作って
いくつかの水滴を巻き込んで
流れていって下のほう
ぺちゃんと爪先が濡れた
じわりと広がる水滴が
ひんや ....
おれはいま
だれかを
そっと
殺したい
ともだち
ぜんぶ
川にながして
きみとおれ
今と昔で
違う町
抱えた秘密の
手品を教えて
夕暮れは
盗人だから ....
君と歩く朝方の冬の道
気の遠くなる距離感
吹雪け
命
そして、凍死してしまえばいいんだ
俺
自殺願望は甘いドーナツ
君を想うだけで
真ん中に空いた穴に
ダイブしたくなる
ゆ ....
しわくちゃなので静かな紙面に舟を浮かべると
宙の上で均衡がとれるように
その点において
静置する
対になるその
たゆたう舟の影も
水底でしわをつくって静置する ....
こんなに悲しい帰り道が
蛇行しながら現実までのびている
黒く長いそれを
私は切なくなりながら
ひたすら歩く
歩く
白銀の丘陵に連れていってくれた
未完成な公園に踏み固められ出来た ....
{引用=
個人的な話だが。
あまりにも呆然としてしまったのと、書くことが弔いになるかと思って。
※
Iさんが亡くなってしまった。
昨日、数人で一緒にバーで飲んでいて、気分が悪くなった ....
ひえきった背骨から、ひとつひとつ
きわめてあいまいに
呼吸の輪郭をかたちづくっていく
雪が降るかもしれなかった
駅前広場で、
ぼくは行き先を忘れたふりをしていた
夕飯に何を食べようか決めて ....
空の頂に月のない夜
まなざしは
同じようにはやってこない
待ちぼうけの子どもたちが
眠ったふりをして
息をこらすように
取り巻いて包んで
進行する世界に
オクターブごとに反響する
数 ....
うすい羽のはえた夜行バスにのって
月あかりにかがやくいくつもの雲をこえて
あいした理由も
あいされた理由も
すべてあなただったから
いつもの街角、いつものバス停
やわらかな猫の手に夜の ....
夜にさまようノマド
夢に似た旅路
くらやみの中へ
伸びていく根毛
黒髪の思い出は
満月の丸み
汲み上げられて
つきあげるよろこび
歌うことばすべてに
ひとしく炎、やどれ
こ ....
・
夫があまり鋭く見つめるから
わたしはしだいに削れてゆく
夫と婚姻関係を結んでからのわたしは
もう余程うすっぺらくなったらしい
強く手を握られると
きしゃり と指ごと潰れるから
か ....
もしもこの海が真っ二つに割れて
そこに一本の長い道ができたら
僕たちはTOYOTAのランドクルーザーにのって出かけよう
それは奇跡のひとつに数えられるだろう
僕たちの走った海の底は
ひとつの ....
泣きやんだ空のゆううつ
雲のまにまに
トタン葺きの屋根屋根からとびたった
まっしろい小鳥たちのまっくろい足、足、
鎮守の丘をみあげては
向こうがわを夢見る
臥せりがちの少年の
履きつ ....
autos
の、暗い
神から
分離された、半分の
もの、くだけたものが
結集して、
きみが口に
する、これは
きみの身体である、雪に
覆われた、潜み
六月にみた
砂浜にまして白く
海に洗われるたびに
やわらかだった
きみの肌が
よろこびに
ふるえていた
明けがたに敷かれた
シーツの上で
きみの土地
はためいては
朝露にぬれ ....
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