いつの間にか裸足だった
あてのない旅をしていた
気付いたらここがどこかよく分からなかった
草原を目指していたような気がするが
はたしてここは岩ばかりだ
ああそうだ
この頬を ....
冷やし飴
蕨もち
小さな漁船と
おじいちゃん
ゴツゴツした
大ぶりの自転車に
おじいちゃんは
僕をちょこんと乗せて
潮のかおり
おじいちゃんの
仁丹のかおり
引き潮の ....
瞬間見えた隙間に
飛び込んで
五線譜に記された過去と未来を
現在に引き戻す
柔らかな肉の感触が
夢の中で甦る
もう少し先を見たかったのに
覚醒は強制だ
飛ぶ鳥がいなくなっても
空 ....
むねからひばながでる
ぜんまいのおもちゃであそんでいたのは
きのうのことだった
そぼがそれをみていた
それはきのうのことではなかった
さんじゅうねんの
としつきがすぎて ....
おおきなつづらを背負っている
つづらを背負って鳥居をくぐる
そこにまっ黒い小坊主が寄ってきて
その中には割れた茶碗が入っているんだろう
ぎっしり詰まっているんだろう
と にやにや笑いながら言 ....
初めてプロレスを見に行ったのは
小学生の低学年の頃だと思う。
今はもう無いけれど
中島スポーツセンターに
とうさんが連れてってくれた。
三人兄弟だったのに
ボクだけを連れていってくれた ....
真っ暗に点す
山霧の薄い鞠
電信柱を包み
無味な綿実を育む
粛々と夜を描けるなら
草露に浮かぶ涙も
からかえるのに
緑の看板が ぽつぽつと
糸を引く
小さ ....
買ってきた水槽を膝に抱えて
ひとり部屋に座っている
金魚を入れたかったのに
家のどこを探しても
見つからない
代わりに大切なものを入れようとするけれど
透きとおって中身が見 ....
ちぎられる紙
ちぎる紙
はざま はざま
せめぎあう
扉の前の
やわらかな不都合
光の前の
しじま つまさき
背のびをして しずく
背のびをして 白詰草 ....
花をふむ人はきよらか春はゆく
おとうさんと正しく発音する練習
夫婦雛三人暮らしテレビ見る
母の家すすきは痩せて羽根に似る
花の散る頃とはいつか母を待つ
(没句)
ど ....
公園の水たまりが
薄くひらいて
境界線が
ゆらいでいる
記憶も
楽しかったこと
寂しかったことが
薄くひらいて
たとえば
晴れた日に
振り向いたとき
もう
あなたは ....
きゅうじつ
のっぱらにねころんで
そらをみている
くもが
すこしずつ
かたちをかえながら
いそがしそうに
そらをながれていく
あれはあれで
しごとをしているのだ
....
お風呂上がりで椅子に座る
目の見えないハルさんが
ドライヤーで髪を乾かす僕に、言いました。
「新しい靴もねぇ、
毎日々々撫でてやったら
だんだん馴染んで来るんだよ・・・」 ....
自宅の階段で転び
{ルビ痣=あざ}で膨れた顔になり
10日ぶりにデイサービスに来た
杖をつく、お婆さん
手のひらの神経が痛み
昨日の深夜に目が覚めて
寝不足のままデイサービ ....
春は抱かれ
燃える
緑が芽吹くにおいに居て
眩む
むせかえる
しびれ
新しい手足を産むときの
吐息
甘く
金色のひかりを浴びて
たくさんの顔が歩く
小さな子に
人種について ....
春に迷い込んだ赤とんぼが
ゼンマイをキリキリとうたわせた
ブリキのおもちゃのその中の
ブリキでできた心臓の
あんまりとんぼが赤かったから
ブリキはとんぼに恋をした
おもちゃであ ....
100423
あまくだりの
やくいんの
ほうしゅうが
たかすぎる
洗い流せ
背中の
垢
小舟の中に堆積する悪習
さおを差すタイミン ....
ひっ掻き
傷 傷
水滴 水 そら
硝子の縁も
こつんと 鳴く
空
薄らぐ
高速バスのなか
6時をむかえ やがて
針は2分を示す
尾灯 ....
そして、最初のはなしをしよう、
どうして始めたのか、どうやって始まったのか、
それがわからないから、お父さんと、
お母さんの、名前をじゅんぐりにつぶやいて、
そのなかにはまったくぼくがいなくて ....
ふくらはぎに内蔵されたばねが
ゆるくしなやかにたわんで、
私の躍動を確かなものにする。
大地をつかんで
重力にさからう
陸上部のショートパンツは今、
空気よりも軽い。
春にか ....
降りているのか
上がっているのか
分からなかった
肩を並べてなのか
今からすれ違うのか
降りているのか
上がっているのか
分からなかった
幻なのか
悲しみなのか
降 ....
息子が
ひらがなを
逆さまに書いた
いつから僕は
鏡の世界に
いたのだろう
左から分けた
髪が右に
そよいでいく
街宣車の怒号も
静かな春に
よく馴染んで ....
てのひらを
みみにあてると
なみのおとがきこえる
そのうみを
いっぴきのおおかみが
わたっていく
とおいむかしに
ほろんでしまった
くにのしきちに
さくらがさいている
....
瀬戸内の海辺からは
ぼんやりと霞んで
青い島々が見える
潮が満ちてくる頃には
波に防波堤が
飲まれそうになることもあるが
それでも
外海や日本海の波に比べたら
穏やかなもので
停泊す ....
寒暖の差
激しい春へ通う
家族の背中を見送って
昨日の色々を
洗って干して
一番乗りではなかった
ロッカールームで 常連の中年女性が
油もたんぱく質も無い体を あらわにしている
錆び付いた金属のような 褐色の人
臆病者のこんにちは、は 届くことなく
乾いた音を響かせ ....
松の葉が
ささった髪が
うれしくて
飛び跳ね回る
きみとカエル
歩き疲れて立ち止まり
雨がしとしと降り出して
静かに静かに降り出して
道に敷かれた石畳
次第に次第に濡れてゆく
並木の青いプラタナス
静かに静かに濡れてくる
歯を食いしばり空を見 ....
くちびるからこぼれた息の糸は青くのびて、しなやかに細い鋼材として夜を螺旋した、あなたと交わした指止めはあまり物の工具のようで、小さな廃墟のテーブルと、小さな廃墟のランプと、よわい背 ....
根菜を切る
すとん、と
やわらかく
響くまな板
根菜を切る
おおまかに
あたりをつけて
あとは
力を込めるだけ
そんなふうに
もう
あなたに告げるのだ
楽しかった
....
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