通り雨に打たれ駆け込んだ小屋には土の臭いが染み付いていた
雨水を吸い込んだ地面は懐かしさを醸し出す
ぞっとしたのは呼吸を感じたから
深い土色をした男がこちらを伺っていた
恐怖を感じなかった ....
チーズ
が(ないの) 浮き輪
に
括りつけた
銛、
け ....
一.
青を
反故にした
空
よりも
事情がある
真昼につき、
雨はふらない
二.
鋏の持ち手が緑だったことから
分け合いたくない
ままの
手 ....
寒風に手指をかばう
待つとも待たないともいえぬ朝まだき
冷え切った空気が
空高くから透明に降りて
ちいさな公園の
遊具に残る最後のぬくもりを絶やす
ほぅ、と湿った息を吐く
....
買った父が誇らしげに笑う。ぎゅっとつまった、初みかんの味。
暮れどきに見た木の、やわらかな色彩に、心からこの町をいとしいと思う。
天気予報見ずに失敗した、とふるえるあなたに、この赤いマフラ ....
詩を書こうとすると
どうしても足がついてしまうから
事実という名の警察がやってきて
私のえんぴつに手錠をかけてしまうから
だから私はいつも
原稿用紙を前にえんぴつのオシリを口 ....
渇かない みずたまり
カエルみたいに
泳いでいく
遠く 荒廃したビル
天国の在りか
探してさ
フラスコの内側
丸い砂漠
ビー玉の、そら
どこか行こうか
....
昨晩は夕餉のあとに
家族みんなでテレビを囲み
遠くへ嫁いだ姉が送ったビデオを入れて
5歳の姪が懸命に踊る姿を見ていた
今朝は早くに目が覚めて
寝ぼけ{ルビ眼=まなこ}で水を入れ ....
帰宅して暖房をしてブラームス
あたしみたの
あそこでみたの
ひとが 死んでゆくところ
あたしみたの
たくさんみたの
ひとが 生まれて 歩いてゆくの
川と土と木があって
虫と人と動物と
植物さえ ....
言葉なんて大切にするな
おまえの横には
もっともっと大切な人がいる
その人をじっと見つめろ
その人のための言葉を探せ
ゆき
がんばって
ふらせてるんだね
ぼくに
あいのことばを
とおいくにから
あいのことばを
ねこがいなくなった
遊びに行ってると思っていたのに
帰ってこなくなった
家族はみんな心配した
一週間経っても帰ってこなくて
保健所にも連絡した
交番にも連絡した
近所の人にも話した
....
砂浜の味がする
これは砂糖ではない飴粒
きら、
と丸い表面に
反射しているのは電灯か太陽か
風
白い雲を乗せているところ
行く先をしぼらずにすんだ音符が
カーテンとして窓に ....
ちょうど二秒の
時が止まった
あなたを見つめて時が止まった
階段を昇って
やがて見える窓からの朝日を背に
立っていたあなた
なんでもないように
挨拶をするのが
とても難しくて
とても ....
たまご
雨の日に
雲の、目をみはる
ながれの速さに
あかされる
ミルクの皮膜を
くすりゆびに
掛けて
あたたかいのは
どうして
どのように
熱せられた ....
くじらはどこかと
島が問う
空をよこぎる鳥の背中も
きっとだれかは
島と呼ぶから
雨は
もうじき
降るだろう
あまつぶは
ふね
乗るも乗らぬも
う ....
{引用=
***
}
夜行にならんで鳥が飛ぶ
たれかが射落とそうとして
きりりとしている
明けに向かって火球が
火走る
{引用=
***
}
しらないか、しらないか
みっか憑く ....
封筒をあけて
君から届いた手紙を開くと
薄紫色の蝶が
ひらひらと
飛び立っていった
拝啓
それから
空白
君も僕も
本当に伝えたいことを
伝えるための
正しい言葉を持って ....
水の
集まって凍る音がして
画面が白くなった
ローマ字打ちもします
聞かれないことから話す
いつものやり方
あなたと話していると
楽しいのはなぜだろう
暖かく日の差し込む
気配 ....
1.
硬質で透明な液体に浸されて浮かんでは沈む体、ぼやけて視える太陽は遠いだけで優しくなんかないから目を凝らす。透明な膜の彼方に遠い光のまるが、小さいまんまるが徐々に膨らんで垂れてゆくどろりは、あた ....
剥いたとて何もないと、よく怒られたのを覚えています。剥いたとて硬く冷たく理路整然とした黒い実がてのひらにころんと転がるわけではありませぬと、怒られましたがしかしあたしは思うのです。あたしが欲しいのはそ ....
逆さまの絵が文字になり唱になり降り来るを視るひとりけだもの
かけらからかけらを生むはおのれなり触れもせぬまま砕きつづけて
水涸れて見えぬ片目に見えるもの ....
季節だけにではなく別れを告げるということ
窓のない部屋では聞こえないということ
言葉で削った窓のむこうは万華鏡じゃないということ
中途半端な闇の中
(匂いのしない風がテレ ....
新しい朝
新しい風だ
朝、
部屋を出て
飛び込んでくる
空の青
凛としていて
高く、高く
季節は秋だ
靴を履いて
エレベータの前で
きみを待つ
きみを自 ....
地上へと繋がるエレベーターに
パステルカラーの女の子
うふふ
こんにちは
抱いている子ども
腕から飛び出しそうに笑って
照れて
くりんくりんって頭を回す
いししー
あっ 笑ったぁ
....
いとしいあのこが電車に乗って
白いまつげをふせながら
やわらかく甘いつめの先
僕の方だけすこしみた
ゆるくむすんだネクタイに
なみだのような白雪が
すこしつもって
ちょうちょのよ ....
きみに会いに行く
本当だった
列車に飛び乗ること
それも盲目ではなくて。
灰色の雨に流され
こころの小石が転がる
舞い散った落ち葉を踏みしめる音は
きみの泣く声に似ているから ....
時の放つやさしさは
熟れすぎるまえの果実
たおれこむ前に
僕がかき鳴らす
羽根を敷けばいい
何かいわなきゃ何か。ガシャガシャカギュウ
情熱より時間の方が先回り、ちぇいすちぇいす
....
フリーダム。
自由は、雨あがりの蛍光灯にぼんやりとしている。
*
コツコツする足音、地下鉄のホーム。に、つるり鮮やかな緑色の椅子立ち並ぶミニマルな夜は、終電の少し前に酔ったような ....
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