ことしも
うみのむこうから
かなうことのない
えんきょりれんあいのとちゅうで
ぐうぜんりょうしのあみにかかり
しょくたくへと
ぐちをこぼしにでも
やってきたはずなのに
あいさつもなく
....
ふかづめした指でガラス引っ掻き鏡の向こうのカラスいじめる。
耳をとじた兎を追ってじうじうと蛇が背骨をのぼってゆく。
ひとしれずざりざりと腕に生えたうろこ包丁 ....
ぱちんぱちんとカニの原っぱ
カニたちはみんなカラッパです
ちょっきんぱっちん草の根や葉を
植えては刈り込む庭師さん
子どもらが昔遊んでた
空き地はみんな原っぱでした
そんな原っぱ取り戻 ....
会議室を人が歩く
金属や樹脂などでできた
冷水機のようなものがあって
その向こうに浜松町が広がっている
どこまで行っても僕には体しかないのに
ポケットに突っ込んだはずの
手だけが見つ ....
あ
いつ
いってしまえば
猛る炎に捲かれる鳥
のように死ぬ
黒い道の染みになるだろう
白い蜘蛛が這うだろう
長く続かない事が
長く続く事
あ
いつ
いってしまえば
夜へ ....
蝉のように
最後の一週間で
羽化してみたい
飛べるだろうか
そんなことより
左手と右手の違いについて
考えている
ついでに右目と左目について
も、ちょこっと
やはり
....
冷たく横たわったそいつは
人間にもけものにも昆虫にもなれない
5ほん足のいきもののなれのはてだった
みみずにもからすにもこうもりにも馬鹿にされた
5ほん足のいきもの
「せめてここに居るこ ....
首の長い扇風機を買った
赤い羽根を気に入った
風に乗る、生まれたての
プラスチックの臭い
わくわくと吹く風
私はその扇風機を
赤児と名付けた
夏の夜、
仕事机で読書する
私の横で ....
(ひらかれる瞳)
どこまでも
森の緑
どこまでも
炎の赤
どこまでも
海の青
どこまでも
夜の黒
(とざされる瞳)
いつまでも
果実の甘さ
いつ ....
夕暮れの {ルビ緋=あけ}に合え照る 狐花
燃ゆるおもいひを たれによすらむ
光と水と土だけで
あとからあとからぴかぴかの
緑の葉っぱが生まれてくる
その葉はつるつる美しくって
どうしてわたしは
葉っぱに生まれなかったんだろ
なんて思ったりもしちゃう
....
海辺のテニスコートまで歩いていくと
忘れられた言葉たちが孤独なラリーをしていて
ボールを打つたびに会話をしていた
僕たちは細かく絶望的に分たれた世界の層の間にいるんだ
ここでは漂着する ....
夜道帰り道
いえまでの道のまんなかで
ねこか犬か、なにか抱えたまましゃがんでいる人がいたから
こわかった
今までわたしが言ってきたこと
も何も
きみは君の生きていく道に
なんら交 ....
狐面のステフ飽きたら去る
頬に入る赤い線のうわべ美しく肌光り
つまりそれは僕に入るのだが
僕は枝分かれした通過点
アスファルトのいち疣
四方形の回転は終わりました
沙羅双樹に包まれて
....
カシッ
くるみの殻
秋の日差しのなか
乾いた破裂音
くるみの林
赤や橙に色づいて
かさかさ揺れているかな
ひと吹きでぱらぱらと
涙のようではなく
思い出のようでもなく
....
ほどなく
空は なだめるように
いくどかのまばたきをした
何度目かの夏
もうすぐ花柄の猫たちが
砂丘のほしに
帰ってゆく
波の音
水平にひろがる
君のこきゅうと 両腕
ほど ....
なぜだろう
ただそれだけのことなのに
いらないものが
少しもない
テレビで見たものを買うよりも
増えていく
たくさんのあなたやあなた
そしてあなたも
それでいて
どこか ....
なあ あんちゃん
俺たちふたり ドラム罐転がして
まっすぐな坂道のぼっていこうよ
ここ二週間 頭は痛えし咳がとまらねえ
たぶん少しだけちがった空気吸って さ
たぶん少しだけちがった景色を ....
伸びきった髪を
バリカンで刈るような作業
稲刈り後の田んぼは
すっきりとしていて
その清々しさが
秋の空気を絹のようにする
***
新米は少し水を少なくして炊く
十代の ....
静けさを呼吸して
ふくらんだ悲しみをはく
そんな自分を少し可哀想だと思う
今日も一日、雨だったから
なんて、理由にもならない
何となく電源を入れた
パソコンがウィーンっていいながら ....
太陽に照らされた状態は、
ほんとのところとても特異な状態だ。
宇宙はだいたいが夜だ。
ぐるりめぐる暗い側の半球にしがみつくぼくたち、
特異な場所に放り出されたフヘンの孤児、
みんな違っていて ....
うろこ雲の尻尾につかまって
東の空へ流れ去った君は
雨雲に紛れ込んで
細やかな涙を降らせた
柔らかな時の掌に撫でられて
色鮮やかに頬を染めた君は
頼りない指先に手折られて
夕餉の ....
大阪の黒川に魚が死んどる
生臭い水面に不衛生な雨がぶち当たって
救いようの無い水疱瘡
あの中はきっと終われない夜
一匹二匹三匹四匹・・・九匹十匹・・・
浮かび上がって、みんな死んどる
「何 ....
ひねったら水が出ます ひかっています で? 好き、に理由なんてないよ
踊り場の全員うえを向いている スカートの嬌声がひびく、午後
うす目あけて口をあけてぎゅっとにぎってゴムふうせん ....
雑音が聞こえる
鞄の中から
聞こえる声を聞きながら
母は呆けた
雑音が聞こえなければ
昔のような
声で母は話した
鞄の中から
雑音が聞こえると
途端に母は
声を濁らせ ....
追い越せない 届きそうにない
あの影の群れ 冷たい影 あたたかい影
会心の想いを声にした後
やるせない気持ち 優しげな笑顔
明日がくる
追い越せない 届きそうにない
そう
人々の影の群 ....
(再考中)プランターの幾つか並ぶ秋の空雨のぽつぽつ降りてけるかも
・
一か月が
余りに速く過ぎ去るような気がして
どうしようもない
服を着替える間もなく
あっという間に秋である
外ではまるで軍隊のように
流行なのか
同じ型の服を身につけた女子が
勇 ....
野菜ジュースのように
何もかも
からだにいいからと混ぜ合わせたら
きたないだろう?
君のように
水は美しい
人間の六〇パーセントは
水
だということの説明に
よく出てくる
....
ビルは氷柱(つらら)のようであって
交差点に、滴る微笑の鋭角が
夜はひときわ映える
空は無限の海にはあらず
月のマンホールに、僕らは吐き捨てる
ばらけた感情語
それを生 ....
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