キミだって、僕だって
人は、生まれたときには、みな泣いたんだ。
あらん限りの大きな声で
無垢の叫びで泣いたんだ。
「涙」という字は
戻る水と書くように
泣くことで、気持ちも ....
「お母さん、コンデンスト・ミルクっておいしいね!
明日もまたこれ作ってね!」
娘達が練乳をお湯で溶いた飲み物を啜りながら言う
「いいよ。
お母さんも子供の頃 これが大好きだったんだ ....
121020
告別式ではπを投げてはいけません
解けない謎を投げかけては可哀相
隣家の三毛猫が言うから
ジャムパンはどうかしらと思う
あんパ ....
備え付けの安い蛍光灯が揺れて、
壁にこびりついていた様な淡い明暗がさざなみを起こす。
黄ばんだ掛け布団の中には、化粧をしたまま眠る女。
山羊は長方形の黒目でこちらを見て、俺は、金が無ぇ、と呟く。 ....
一、
顕微鏡を抱えて
潜り込んだ湯船に
わたしたちの空が眠っている
あぶくを
覗こう
口から吐いたあぶくを
捕らえて
なにが詰まっているか
知りたい
ふ、ゆ、と言ったらふゆが満 ....
横断し続けた川の端と端もちあげ上手に運ぶ 、となりへ
窓外に無数のつぶてが降る いつか海に沈んだ都市に住もうね
痛いかと自分に聞いてしまう夜 括弧のなかで息を整え
....
この街でたばこを吸うのは
俺とお前のふたりだけなのに
角ごとに立っているたばこ売りは
誰を待っているのだろうか
黄色いピースと
緑のマルボロが
あればそれでいいのに
....
きのう、ぼくは
この病棟に引越してきた。
これまでに、数えきれないほど
市内の病院を転々としてきたけれど
そのなかでも、ここがいちばん
大きな病院なんだと、お母さんは言った。
いろんな ....
道の端っこに落ちていた
マグネット人形が
トラックぶおんの勢いで
わたしにひっつく
東南アジアの小さな島々
露店にぶらさがる毎日
ふとしたきっかけで
ぽろりと ....
ねこは知る
すれ違う街の灯りの
ひとつずつに誰かが生きている
つらいことも苦しいことも
嬉しいことも悲しいことも
誰にも言えないことも
あの灯りの下に集い
確かに存在するのに
永遠にそこに行 ....
金木犀のかおりが郵便受けから流れると鍵をしめた
私は外に出ていたときに
人生で最初の婚姻届の切れ端を届けた
しあわせに封をして焼印を押し君に告げたいことばが溢れた
買ったばかりのダ ....
君の、夜明けの口唇に
葡萄の粒を含ませる朝
旅立つための翼をいだく
わたしの翼は白いだろうか
それとも燃えて血がにじんで赤く
葡萄の房に朝の雫がこぼれ
風が喜びを歌うとき
....
もういちど ちゃんと 笑って
アップルパイの焼ける 甘い匂い
おおめにふるったシナモン
ふれていたいのは 痛いとこ
こねていたいたいのは やわらかなとこ
アップルバイが焼ける匂 ....
図鑑から拾い出したらさみしさの集まりみたいホモ・サピエンス
鈴鹿でさ、熱気球がちりぢりに空に別れていくのをみようよ
ピアニカに人工呼吸を施してでたらめな人の怒りをみてた
....
7.
シャワーにはいっていると
うがい薬の甘いにおいがして
僕は目をつぶる
僕はそこまで女々しくないはずだ
鋳金されていく街の春は
貴腐葡萄のように熟していけばいいから
鋳型のよ ....
まるでま(とま)るはなしはまるでおわる
。
家にはないが
(ないから)
ホットケーキにはメイプルシロップ!
樹液!樹液!
一つのものをじっと視ると
目が熟してゆく
机上に置かれた
何の変哲もないコップに宿る
一つの目が、こちらを視ている
すべての、そもそもの始りは夢だった
今でも夢は続いていて
夢だった(原始、夢はなんと呼ばれていただろう、最初の人々に、最初の言葉で)
もう、失われてしまった神話の
もう、忘れられた ....
なにもかもだよ。なにもかもが奪っていくんだよ。
平凡な日常とか、幸せそうな毎日とか
なければ生きていけないような
些細な幸せさえも、全て奪われていくんだよ。
残された物でやりくりするしかない。 ....
にんじん
牛乳
そりが合わんのだ
耳鳴りが止まない 夕立が止まない 誰も気に病まない
いくつもの六角形めがけて降りてくる無数の線
歩道橋では今日も神様が飛び降り自殺をしようとしている
マンホールは踊り出しボートが通りを行き交って ....
4.
酸素を少しとりこむのは
恥ずかしいことですね
ちょうどの互いの離れ方で
手をつなぐように指をのべたら
網膜を傷つけつづける雪
夢、虹、鳥、花、川、愛、心、光
光、光、光 ....
(仮)
121012
時には、Sr Receiver の命ずるままに奈落の底も探す
仮面を付けたまま落下した貴公子の数は知らないが
そこでは腐 ....
生活を続けるために
縛られた猫になる
すきま風に揺れる
小さな花は、使わなくなったグラスの中
自由な生き方よりも
不自由の様子をうかがってしまうのは
そっちのほうが
安心できるからか ....
パチンコでAKBの名を覚え
かつて
のしかかる羽根だったもの
いつも
ふゆの景色に茜色を刷いていく
かろうじて開かれた膝のおく
凍える火を吸う唇がいう
「わたしたちは箱から飛びだした角のようなもの
いつだっ ....
路線図の名前をとおりすぎるたび夕暮れの記憶となって
建設中のクレーンをかすめる金属音の反響
かりそめの服を着たらもう祖父の葬式だった
東京は暮らし辛いねと母が呟き
落とした花を持て余している会 ....
銀色の泥棒が気配を殺し
しとしと駆けてゆく
暢気なマーチのような
秋枯れた並木道
なにか、この先必要なものを
玄関口に忘れてきた
そんなふう ....
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