独房の堀で羽を休めるアゲハ蝶
憐れみの蜜を吐き出す
黒い光沢に光りが反射して
影だけ先に飛んでいく
十七歳の部屋では少女が
明日を憂えていた
それでも敏感に影を捉えて
不意に彼女 ....
マチルダその名に惹かれ
やはらかなドレスはオーガンジー
淡い薄紅のグラデーション
俯きがちな優しい微笑み
丸い瞳は少し淋しげ
見開いたまま
散り落ちる
マチルダ
虫に食われ
....
乗り越えなければならなかった
障壁は崩れ
敵だと思っていた相手の腕に
知らず支えられていた
唾棄すべきと思い続けた
内なる牢獄
私の手足を縛り
思考を閉じ込めた
古い価値
根拠の ....
相撲風景(テレビより)
今日からは焼酎入り旨相撲
観覧席相撲肴に呑む男
太いのに5秒かからぬ負け相撲
『物差し』
幸せとか、不幸とか
いったい誰の
基準で決めるのですか
その基準となる物差しを
いったい誰が
持っているのでしょうか
あなたですか
神さまですか?
『 ....
キスは
するとされる より
するとする が、いい
海岸沿いを走る車は、山道に入り
坂を上る、木々の葉群の隙間に
一瞬、輝く太陽の顔は覗き
夜の列車のドアに凭れた窓から
ふいに見た、夜空に浮かぶ
ましろい盆の月は夜を照らし
――昼も ....
賑やかな祝祭は
終わり
各人は家路に着いた
人の優しさ
温もりが
泉のようにあふれでて
懐かしい人の
胸を満たし
小さかった人は
見上げるような大人になり
いたわられる人となって
....
海が見える新興住宅地
まだ買い手のつかない広い区画には
イタドリ ススキ タンポポ
何処からともなくやってきた
柳や白樺の若木も生え
地面は覆い尽くされることもなく
盛り固められた土が腐 ....
150912
石の上にも三年といわれ
経験を積まないうちは、現状批判的な意見は言わないように謹んできた
このたび労働者派遣法の改定で同一の職場では3年以上 ....
こだませる言葉を決めて登山口
しりとりのルの出てこない登山道
虫の音は過去から届くメッセージ紐解きながら浅い夢みる
つかめばするりと逃げてゆくとかげのしっぽに似た夜だ
まだら雲見ている猫の背中にもまだら雲がひとつぽっかり
朝起きて歯医者の予約を ....
150910
ぬけた!
ぬけたよ
ぬけぬけとぬけたんだよ
ぬけがけのだちんものこさずに
ぬけたおれたちをのこし
そこなしぬまのほとりにおきざりに
ず ....
お揃いのザックストック登山靴
公園のベンチに座っていた
そよ風が恋人のように寄り添っていた
古いノートの中で
ことばは悶えた
それとも窮屈な服を着せられて
詩がのたうち回っていたのか
その時ひとひらの蝶が
記憶に ....
プラナリアに 出会いたい
永遠の命だというプラナリア
世界が黄砂に なぶられて
沈鬱が大陸を覆い 海洋にも降りた
人は みみずのように
スマホのなかの情報に生きる術をもとめ
無数の出口 ....
炎に出合うと体が勝手に近づいていく
この習性を
人間に気付かれたのはいつだったろう
夏の水田に灯火が点いて
人が居るかと思えば炎だけ
どれだけの仲間が焼け死んだことか
人間にも似た ....
おそらくもう夏は行ってしまったのに
夕刻になると
埋葬されない蝉がうたう
取り残されるということは
ひとつぶの砂のような心地
苦いさみしさだろう
――さいごの一匹になりたくないのです
生 ....
君の存在の只中にある
方位磁針は
すでに示している。
カルマの暗闇を越えた、この世の桃源郷を。
――first inspiration――
それは未知への世界に
わなわな震える・・ ....
秋刀魚のような
ひとでした
辛味のきいた
大根おろしが
ほどよく似合う
それはおいしい
ひとでした
....
雨の夜
国道には死があった
帰り道を急ぐ車の
その一台一台に生があるその対極に
或いは
その隣りに
ぴくりとも動かない人間の脚はまるで
精巧なマネキン人形の部品のよう
アスファ ....
夜、虫のこえ
秋がそこにいた
でも、まだしまえない名残のTシャツ
六月の雨が
育ち盛りのスイカをいたずらに誘う
でも、今年の梅雨は少々しつこくて
早くも冷夏の予感がした
ナスビもトウモロコシも痩せたまま太らない
繁茂するのはスイカのツルと葉っぱばかり
....
自然であること自然に衰えてゆくこと
ぶつかりながら消耗しながらもえつきる流星
いつ どこで
誰が 何を 何故?
自分のだけの視野で批評も感想もなくて
生きることも可能だが
....
絵のない絵葉書が届く
ことばのない詩が書かれていた
ピアノソナタが雨に溶けて
コスモスはうつむき顔を覆う
山の精気が少しだけ薄められ
ものごとを前にしてふと
過去からの声に手を止めている
....
わたしは帰る
猫の住む我が家へと
服も靴下も脱ぎ散らかし
ひんやりとしたベッドへ
もぐりこむ
鼻先の生温かなけものの匂い
....
左手にヘアアイロン、右手にスマホ。高校生の娘は朝の忙しい時にも、そんな習慣を欠かさない。前髪がそんなに重要なのか、ラインでどんな大切なメッセージがあるのか、聞きたいところだが、朝から言い合いたくない ....
ひかりのあたる角度によって
ものごとは綺麗に反射したりえらくくすんで見えたりもする
シャンデリアのある素敵な応接間
ある生命は空間を得るために代償を払う
それを得られない一部は
高速 ....
夏のあいだ僕らは
危うさと確かさの波間で
無数のクリックを繰り返し
細胞分裂にいそしみ
新学期をむかえるころ
あたらしい僕らになった
けれど
ちっぽけなこの教室の
ひなたと本の匂いとザ ....
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