すべてのおすすめ
秋刀魚のような
ひとでした
辛味のきいた
大根おろしが
ほどよく似合う
それはおいしい
ひとでした
....
わたしは帰る
猫の住む我が家へと
服も靴下も脱ぎ散らかし
ひんやりとしたベッドへ
もぐりこむ
鼻先の生温かなけものの匂い
....
きらきらと
ひかる星たちかくしもち
きみは泣く
ちからのかぎり
きみは泣く
まっすぐに
ひたむきに
た ....
こんなひは
ひんやりとした床で
寝たふりをするより
とったばかりのいんげんと
てんぷら油の格闘に
歓声をあげてみたり
....
蒼くて暗い水槽で
浮かぶ海月のそのさまは
まるでたましいのようなこと
ふうわりとぷかぷかと
あてどもなくぶらぶらと
行きつく先もわ ....
かなしみはいつだって
握りつぶされた
缶コーヒー
むけられた怒りは
やり切れなさと
くやしさの色をにじませ ....
ずうんと長く
夜がこないので
すみれの花で
まぶたをふさぐ
薄っすらと閉じ切らぬ
....
まっしろなカップに
夜が満ちる
からっぽなわたしは
真っ暗な部屋で
夜を見つめてすごす
安堵のなか
ごくり ....
ガタコトゆくのは2両電車
田舎のしがない私鉄です
その座席に座るわたしは
上下左右にからだすべてが
揺れるのです ....
まつげの重さに耐えかねて
そっと伏せてはみるけれど
わたしの瞳は夜をみる
散歩の途中の道端で
みつけたちいさな青い花
....
参ります、参ります
もうすぐそちらへ参ります
陽の当たらぬ公園で
凍えたブランコ揺れている
さくらの蕾はふくらまず
....
あの日の空は青かった
夏が終わろうとするほんの手前
夕暮れ迫る束の間の時刻
受話器の声が世界の音を奪い去る
....
しゅんしゅんしゅんと
蓋をカタカタ鳴らしながら
やかんがじれている
それを尻目にガリガリと豆を挽く
ペーパーフィルターの二辺を
丁 ....
すべてが寝静まり
寝返りと寝言の中で
やかんを磨く
あしたはどんな一日に
なるだろう
油で汚れ焼けた ....
ゆきのひつじが
はらはらと
いっぴき、にひき
ねむれぬよるに
ふりつもる
はるをまって
....
かくしてください
さみしさが襲います
昼と夜との狭間から
からだと毛布のすき間から
飲み終えたコーヒーカッ ....
毎朝冷たい風に吹かれながら
洗濯物を干すその手は
ひどくかさつき荒れていた
誰よりも早く起き
米を研ぎ、味噌汁をつく ....
家が死んだ
広い庭に大きな木のある
昔ながらの家だった
縁側のあった家は壊され
大きな木はどこかへ運ばれた
乾かす洗濯物も ....
折り紙を折るその指先は
あどけなく、いつも湿っている
クレヨンを持つその指先は
つよさを隠しもっている
あした晴れたなら手をつ ....
薄暗い台所で
小さなボールを抱え
温めた牛乳を昔ながらの泡立て器で
けんめいに泡立てる
しゅんしゅんしゅんと薬缶が
今にも ....
木目の美しい一膳の、
箸に惚れた
色香を漂よわせ
朝に夕にと
おいしいものたちを
口に運び入れ
わたしに感謝の咀嚼をせが ....
花 ふりつみて
若葉 ふり
蛍 ふりやまず
星 ふりそそぐ
みのり ふりはじめ
枯れ葉 ふりおわり ....
あのひとの吐息はいつも菫です溶けゆく雪の儚さうつし
この想い雪花に告げて溶けてゆく好きでした、あぁ好きです今も
せつなさを櫛で梳かして目をふ ....
寒かったから
息を吐きかけ
こすり合わせる
店先のディスプレイは
パステルカラーが
華やかさを競って ....
チョキチョキと切り抜いたのは嘘泣きです天使の羽と切れないハサミ
足の裏さみしい沼を飼っている思い出喰らい泣いては縮む
夜が降るきのうも降った今夜もね、 ....
風見鶏、青磁のそらにはばたけば南へ向かいひたすらに飛ぶ
あいうえおあなたにどれを贈ろうか曲がりくねったひらがな愛し
過ぎてゆく明日が今日を追い越 ....
わたしが歳をとる
髪は白く
乾いた肌には
無数の皺
あなたが歳をとる
....
木枯らしがいろどり集めさらいます頬を伝うは無色な涙
秋だから人恋しくて鍋に浮く豆腐のようにゆらいで誘う
街中をクレヨンで塗り準備する赤もいいけどここは黄色で
....
生まれたね
やさしい手で研がれ
水をたっぷり
ふっくらつやつやと
今日は卵にしようか
それとも納豆 ....
窓ガラス
伝いおりる
雨粒ひとつを
ゆびで追う
祈りとは
この雨のような
....
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