旅先の朝
隣のテーブルは
幼子と祖母
みいちゃんは、
しんかんせんで、
あのね、あのね、
伝えたいことがあるのだ
オレンジジュースが
朝日にゆれる
私は
私のほんとうを ....
その夜そらは光の雨で満たされて
彼方の丘の上にまたひとつ星が突き刺さり
まるで堕ちてゆく天使のようにうたいながら
ことばのかけらのように降り続けるのです
こえにならない声がきこえて
胸を ....
きらりひかる
たあいない ことばのはし
きらりひかる
いたみをのがすてのひら
きらりひかる
「義妹が大腸癌だったんだけど位置がよくて、肛門は残せたの」
....
もうじき終わるこの日差し
そうとも知らず夏はジリジリと
あの日のウチらのように
海綿状の景色のなかを落ちていく錯覚
奥に仕舞い込んでいた未使用の
少し焼けてきた葉書の束
ふと 手に取り
書き始めた文字は
青臭くて齧るとまだ苦い
幾つもの文字を吊るしては
甘くなれと
この一つの息で長く吹き込んだ ....
エノコログサがじゃれついて
あなたのこころにも可愛い穗がひとつ
くすぐってよ と飛び付いたのは
いじられっ子の陽気な風
カメラのレンズ越しに睨んでいたのは
優しい光線だよ
昼下がりの ....
じやんけんぽんで
きみがさきにゆく
あたしがおいかけて
弱いあたしはどんどんきみにおくれる
歩道橋から君が消えてゆく
そんな君とあいかわらずあたしとあのころのまま
遠い
元気 ....
二十五年前のある日
おとうとの幼稚園の授業参観に行った母が
苦笑いしながら帰ってきたことがあった
なんでも恥をかかされたらしい
その日のテーマは
「お友達に手紙を書く」というものだったのだけ ....
そっと触れてみた
あなたの手の暖かさに
涙がこぼれた
眠れない夜
無機質な光を放つだけの月にさえ
すがるように 祈りを捧げる
どうか、どうか、
この人の命の灯をいつまでも消さな ....
いつもの朝食 いつものテレビ
そして、いつもの一日
いつもの幸せ
あたしに咲く
ムラサキノハナ
いいかげんなやさしさと
今だけのしあわせと
信じることはいいことです
だけど
不安だらけの穴ポコだらけの
ほんとのあたしのこころ ....
熱射を吐き出してしまった夏は
老いて死んでいく
鎮魂歌を捧げられながら
あれは一時のめまい
傾斜する意識が
さらに勢いを増して
海の底に沈もうとしている
戦場に散った無名戦士 ....
昨日とおなじものは
いらないのに
明日になったらやっぱり
おなじもの?
君はかわっても
ぼくはかわらないのかな
いくつになっても?
うん。
将来のゆめを語るひとでいたい
九十 ....
あの河が望んでる
一つの答えが出せなくて
ごめんね
気の利いた答えは
出払っていて
今頃は海原だろうか
あの河が清らかに見えて
その跳ねた水の飛沫に
打たれた誰も彼もが
感銘 ....
もしも鳥だったら?
あたしゃ、きっとペンギンさ
灰色の空を見上げるだけのペンギンさ
瓢箪から駒みたいな約束
吐いて
はしゃいでみたものの
閻魔様にも負けず劣らず
舌抜いて
いっそのこと
こっそり禁○の看板
燃やしてしまおうかと取り出して
マッチ棒擦って
暖めてく ....
とんぼが にげない すこしも
とんぼの 目の中に わたしが
たくさん いるというのに
あぶらぜみが にげない すこしも
目線のたかさ で なきはじめた
あぶらぜみ わたし ....
もちろん
お金や地位や金メダルや銅メダルで
人は幸せになるだろう
私は
もちろん私は世界にたった一人なのだからそういった意味で存在自体が金メダルみたいなものなんだろうとは思う思うけど理論で ....
そらがあって君とかぜ
僕の持ち歩く六号の亜麻に
そらはなんども重ね塗りされ
凹凸が出来るたびにナイフで切り取っていく
そのとき僕はそらを見失い
しばらくして光りが絵筆を握ってくれた ....
ぼくも夏毛になりましたって そんなアホな
暑中お見舞い申し上げます たま
雨の日はほら
また寝ぐせがついてる犬のひげにアイロン だめかしら
どしゃぶりの雨の中しつこく猫をさがす犬 ....
吹き荒れる風を
闇雲に掻き分けて
高く、高く
昇り詰めて
速く、速く
流れを作って
一番白い雲の高みから
独り占め
雨の日の憂鬱の原因が
洗濯物が乾かないせいだと
今、気付いた
湿っけた洗濯物が
部屋中に吊るされて
うっとうしい
ベランダに干された洗濯物も
いつ乾くか分からず
さらに絶望的気分になる ....
空よ あなたは何者ですか? 満ち足りた時は美しく 哀しい時には より美しい
なぜだろう 雨も涙も透明なのに青く塗ってみたくなるのは
何もかも捨てたくなって空に投げ 落ちてくるまで こ ....
折り紙
あなたは何を折りますか?
折り鶴
空へ飛ばしませんか?
紙を折れば線がつく
たとえば人生が一枚の紙であったなら
線の数を讃え合いましょう
紙を広げれば最初からやり直せる
....
少し伏せ目がちに
笑っているみたい
碧(みどり)眼の街の灯が
びっくりしているよ
庭園を吹き渡る気流に乗って山脈を越えると
なだらかに広がる山腹の緑の森と
森に囲まれた湖
そして川があり滝があり
庭園を巡る園路は地形に沿って這い回り
緑の平原は地平まで広がり
その地 ....
オレンジは地獄の香りがすると気が付いたのは、
今から20分前だ。
汚れた薄いオレンジ色が雲に流れて、
辺りには誰もいなくなったので、
夏休みにも飽きたので、
誰もいない学校に行っ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182