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白い歌をうたう
わたしは悲しくない
わたしはあなたを愛していない
疲れた笑みのような夕暮れの町
静かな木板に穿たれる曲がった釘
汚されたシャツのために
....
古本屋をぶらぶらしていると
キーホルダーのついた
鍵が落ちていたので
拾ってレジの人に渡した
お寺の受付に行くと
年季のはいった分厚い
お財布がおいてあったので
受付の人に渡した
....
鮮明に君のことが好きだから
言うしかないと思ってる
空が割れて星が降りだすように想ってる
純愛という言葉から遠く離れて
抱き合いたいなんて思ってない
透明に触れてふたりで溶け ....
{引用=−−フレデリック・ショパン「夜想曲第十番」に}
石膏の雨は
落ちてきて 割れた
さっき みじかい嵐は
苔いろの器を引っ掻いていた
渦のような部屋の 何 ....
ついさっき猫は
まんぼうと腕を組んでそこを曲がっていったよ
わたしはそれまで
とても孤独だったのだ
ひとりで はだしで ふるえて
ひたひたと沈みゆく一日を感じながら
なすすべもなく ....
きみに
話しかけることができない
脈をうつこめかみに手をふれて
ひとつめの言葉をさがしているのに
どうしても話しかけることができない
うまれて初めての夜がきた ....
みずからの
水だけで
果実がジャムになる
という方角を
みつめている
わたしという誰か
くつくつと
やがて
ぐつぐつと
そうして
やがて
なにも言わなくなる
鍋だけが焦げてゆく ....
左脳のなかに
右脳が休んでいる
縁石に腰かけ、私たちは
玉砂利をつかった遊びに耽る
あとほんの少し風向きが変われば
瞼の暗闇にともされた炎のかたちがわ ....
「みんなが俺を蹴りやがる
逃げても逃げても追って来る
囲まれては蹴りまくられて
仕舞には頭突きでふっとばされて
時には拳で殴られて
そんな毎日 地獄の日々―― 」
「みんなが私に夢 ....
空き箱を捨てようとすると
捨てないでと
声がする
ほうら
よく見て
案外魅力的な箱でしょう
中身がなくなったからって
存在価値がなくなったって
ことじゃないのよ
むしろ
そこか ....
あたしは誰とも
共感なんてしたことが無い
本当は
誰にも同情なんてしていない
カラスの群れの中に
カモメが迷い込んで
鳩の群れの中に
インコが紛れ込んで
周りの誰とも違う歌 ....
{ルビ雷=いかずち}が 遠くの空に
かなしい光をふるわせた
あなたの膝に置かれていた
羊の彫刻は床に落ちた
眠りに似た川の聲は
月明かりとともに ....
青年は日暮れに
読みさしの新聞をとじた まもなく一日が終わる
{ルビ先刻=さっき}まで心地よかった空調がいまは窮屈でしかない
握り固めた紙切れに似た 心のなかには何年も前 ....
なぜうつむくの
笑いながら
一日ぶんのいとしさは胸へ仕舞われて
綴じるばかりで待っている
幸福のさなかで
なぜうつむくの
言葉にしなければわからないのに
言葉にしたら終わってしま ....
夕立のなかを
わたしたちはとおり過ぎる
云うことがなくなって
胸のなかをおよいでいた
魚たちはさっきいなくなって
あなたの透明な顔がかなしい
あなたの息 ....
聲の、
円い包みを
わたしの手がひらく。
はいいろの舞踏会に 金いろの砂がこぼれる
老いたフェルトのような 音楽のまわりに
めぐらされた 軟らかな襞 ……
....
ライオンがほえている
わたしは古いつめを捨てて
たてがみをなでてやる
わたしたちはもう
遠くへは行かれないのだ
望んではいないから
いつだったか
夜のふりをした朝が
あなた ....
ぶあついガラスを歪ませる
そういう情熱があったなら
猫だって わんと鳴かせられるかしら
おもしろがって手を打って
ふらふらついてくる身体たち
やさしくしたからって
尊いわけじゃないのよ ....
にぶい金色の肌が
冬の陽だまりを
そっとはねかえしている
アルミニウムの
浅い洗面器のうしろに
整列している
こどもたちの
頬はあかく
順番になれば
みないちように
そこへ温か ....
社会人の切符を手に入れて
孤独な戦場に出ていく君は
もちろん希望と自信を
瞳に漲らせ
不安を乗り越えていく
おめでとう
母さんは
君の速さで歩くことさえ
もうできないのに
心配ば ....
私は小学生高学年の頃
ものもらいを患った
瞼の下がぷっくらと腫れ膿んできたので
近くの総合病院に行くと
診察台に抑えつけられ
はんだごてのようなもので
じゅうと焼かれそうになったので
必 ....
てんてんと影のあいだを
ちるひかりたち
わたしの視線はいまちょうど
角の眼鏡屋を抜けて
温泉街のまっすぐを下りてくる
あたたかく笑っている
あなたがいるのがわかるけれど
この足をどう ....
あんまりとやかく言わないでください
わたしはこの女というもののなかで
ぼこぼこと時間がたって行くのが恐ろしいのです
いつまでしても不自由で
片目を貝で塞いだように暗い
砂糖菓子の脆い沈黙 ....
なめくじは あなたの頸に似ていた
固い紙袋から ぶどうパンをかじって
わたしは こっそり あなたの頸をみつめた
どこにも ふってはいない 雨の音
どこにも たどり着 ....
「おかーたん、
やねのうえのねこたんは
こんなじかんになにをないてるの?」
「黒猫はね、
本当のことを知っているのよ。」
「ほんとうのことって、なあに?」
「それはね、
私たちに ....
柄杓の水は
揺れていた 一つの言葉のように
だが青い空の深みに俯き
だが石たちの慎ましい薫りに愕き
私たちは 黙っていた 私たちは
小さな山羊たちが
ぬれた坂をおりていく
夕暮れ時は、浜からの風が
舞いあがる砂と 金いろに踊っていた
こんなことも すぐに わすれていくのだろうが
私たちは ....
春のうえに あなたは
静かな芝生を残していった
私は眠りたい
私はもう、何も歌いたくない
建物の影が私たちを押し潰す
月の光が埃のように降って落ちる
あ ....
私は十年ほど前に
リサイクルショップのビラ配りをしていた
すぐやめてしまったけれど
一軒のポストで
お爺さんに呼びとめられて
昔学生時代に何十万もしたというイタリア製の
壊れたアコーディオ ....
せっかくの日曜なのに
私には描ける絵がない
私には筆がなく
私にはカンバスがない
私の街には森がなく
湖がなく
私の家のキッチンには
新鮮なオレンジも
燃えそうなリンゴも
清楚な百合 ....
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