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思い出した
深夜放送で読まれた骨肉腫の高校生の女の子の
手紙
中学生の僕は
いのちというものをはじめて意識した
しばらくして女の子は亡くなった
女の子が好きだった深夜放送
僕も毎 ....
大きな会場でライブをする
俺の出番の手前で夢が覚める
飲み屋をやっている知り合いいわく
普通の人たちはよっぽど偏狭で狂ってる ミキみたいに話が通じないもんだよ と言った
普通の人たちか
俺だ ....
僕らは社会の文体を学んで成長してきた
はたまた親の文体に反撥しながらも生きるために
それを受け入れて
今度は自分自身のフォーマットに縛られながら
それとの葛藤にちょっと疲れているのかもしれ ....
朝もやに煙る街中を
人影が通り過ぎる
一晩稼いで
これから逃走するところ
昨夜あの娘は
盗まれた
二本の指で滴って
絡み付き
トランプの散らばった
部屋の ....
並ぶつもりで
並んでいるのではないし
何億光年も離れた小さな星の住人が
語り伝えた
神話など知らぬ
集まって
輝いているように見えても
それぞれ
果てしなく遠い
線でつな ....
それってクセなの?
来週も同じことしたらちょっとだけ許さないから
蝉時雨が
それほど新しくない記憶を
影縫いするものだから
そのまま置き去りにもできず
立ち止まる
吹き出す汗
ハンカチを忘れたことに気づく
いつもそうだった
肝心な時に何かが欠 ....
君が隠すあの娘(こ)は誰だろう
そんなことまで整ったうたにしたい
わたしの心はまた自殺未遂
かなしさやさびしさを拾い集めに
また旅支度
帰ってくるつもりもないのに
旅先で帰り支度
お ....
阿佐ケ谷に引っ越したKに会いに行った
Kの働く作業所(主に知的障がい者の人たちなどが働く喫茶店)で
Iphoneのゲームの情報を交換などした
昨日ipadを買ったらしい
彼は高円寺の路上である ....
秘密の恋が鏡越しに見つめ合っている
照りつける日射しも
大きな入道雲も
うだるぐらいの湿気た空気も
乾いて日焼けた黒い肌も
額を流れていく汗も
ときどき吹き抜ける風のさわりも
湿った草の匂いも
....
女が買ってきた猫は
目を覚ますことがない
エサも食べず水も呑まず
常に丸まって眠っている
置物ではないかと
怪しんで触れてみると
確かに呼吸をしている
手触りも生き物のそれである
何し ....
お花
彼岸花の女の子
触ると消える
夏だけの女の子
アスファルトが太陽を照り返す
暑さ二割増しの今日だって
森深くのあの場所に行けば
きっとあの子に会える
夏になると悪 ....
がたぴし翁が住んでいるという
ここまで来たのだから挨拶をしていこうと
靴を脱いで上がっていったら
ちゃんと列に並んでくれと怒られてしまい
肩の間でしゅんとしている
それで長いこと待って
き ....
青い本、カーテン、壁。
ゆで卵、液晶、ローラーコースター
交互にする指輪、遠い者同士の接吻
からだを折ると、すこし生きやすい。
思いだすのは、ちいさなこと
泣いたら泣いたぶんだけ体が ....
一羽の鳥が
世界の果てを見に行った
そして
泣きながら帰ってきた
飼い主は訳を尋ねたが
何も言わなかった
いや
言えなかったのだ
そのかわり
鳥の羽毛は青く変わっていた
日 ....
待合室には薄暗い死角があり
その奥から話し声が聞こえてきた
飲酒だとか喫煙だとかで
入院中に規則を守らなかった男が
強制的に退院させられて
形の上では患者の治療拒否とのことで
紹介状を持た ....
窓から通りに停めているトラックの荷台に
トマトを投げる
ここらは駐車停止なんだ
このように常に自分には病識がある
通りに車を止めているトラック運転手が「何をしてるんだ!」と怒ってきたら
....
人々は人生という「道」を
何かを手に入れるための
「通路」としてしか見ていない
人々にとって人生とは結局、
何かの為の通過点に過ぎず
手に入れられるものだけが全てだと
....
たのしいことした
悲しいことばっか
面白いこと探した
カネのことばっか
二日酔い
良くない
酒やめて
肺気腫は
こんなことでも
やめやめ
たばこもやめて
探してる ....
「ここから飛び降りてください」
と立て札にあったので
飛び降りたら
死んだ
見るものもずいぶん見てしまった
夜の枕の中で
そうは思っていても
赤い彼岸花がぐぐっと首を伸ばし ....
瞳の奥底に隠れてこっちを覗いている
裸の抒情の手足を縛り上げ
哭きながら何度でも犯し続けよう
石切り場から運んできた
重い想いを凪いだ風に浮かし
寛容な字面をことごとく摩耗させて
のっぺら ....
ミッキー
世界中の君がひとりきりのふりをするのは
掛け替えのない存在でありたいからかい?
ミッキー
今日君のぬいぐるみを抱きしめている女の子を見たよ
あの女の子にとって
君のぬいぐるみ ....
一対の鉄塔が
街をはさんで見つめあっている
(病気のような時間帯)
頭痛もちの少女が
おぼえたての寂しさを抱きしめて
影をうつした空へ飛びおちていく
雨でも降らねば詩はかけない
酒でも飲まねば詩はかけない
太陽を謳う人がいる
月を嘲る人がいる
雨を讃える人がいる
虹を喜ぶ人がいる
子供の頃に風船を飛ばした記憶がある
子供心に風 ....
温かい言葉だった
何度も人を肯定して、ダメにしてきた言葉には
何度も熱い、人の血がかかっている
何度も何度も、夢を見せては通りすぎ
何度も心臓を抉りながら
熱い血を浴びて
いつしか温かみを ....
パセリってなんであんなに残すひとが
多いんでっしゃろな
れっきとした野菜でっし栄養だって
野菜のなかでもトップクラスなんでっせ
嫌いでっか
飾りもんと勘違いしてはりまへんか
もしかして ....
悲しまないか
青いマントにくるまって
月明かりを頼りに
この世から逸れていかないか
喜びなんぞ
どこかのだれかにくれてやる
悲しみの中でこそ
きみはすっかり美しい
ぼくのことばもぎらり ....
虚空に延びる重機の
股間が避けて
爪が大地をかきむしり
破壊された生きものたちの
未来
はきつぶされた靴は
あなたの手にひろいあげられ
鳶の影は 青い空を円の形に縫う
午後、けれども其処彼処の綻びから
光は果物のように落ちてくるのだろう
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