香ばしい指が私の道を行く
だからわたしは地図として鳴く
触れるとも触れずとも落つ肌の上
あるかなきかの道標など
つまらない日々の余白を奪い合い
鳴いて見せたらああおもしろい
....
つぶれた靴を
見ていると雨を思い出す
ほの明るい 窓硝子のむこう
僕の心が僕の心に変わっていく
その間も絶えず 雨は降り続けている
ため息を小瓶に溜めて息をする
浅はかでしょ?嫌いになってね
星のような脆さで光っていた
鳥達が言葉を持ち
海を渡っていく
変わっていくことが分かっていた
愛だっていつか干上がるだろう
けれども僕たちの生活は
今のところまだ
星のような脆さで光 ....
ニュースを見る
テレビを消す
洗う手を
また汚れる
最悪だと思う
お前もお前もお前もお前も
同じように最悪だと思う
でも自分はそれよりももっと悪いと思う
女になったり親にな ....
中空にほうった
ボールが手元に戻ってくるように
一日が 終わった
熟れた光が実をつけては
落ちていくのを
潰れるのを
目で 追っていた
銀の線を引いていく飛行 ....
魚が数匹
日の光になって
頬の上を泳ぐ
問われては 答え
答えてはまた 問い
感情の影に貌をかくして
問われては 答え
生まれてはまた 息絶え
命あるもの ....
どこまでもどこまでもどこまでも弱い 弱いあなたの横顔が好き
明けようとする夜の裾を掴む手は 切れて汚れて私の手
鶏小屋で
安易な名付け
浅い夢
散らかる祈り
深い傷跡
朝の迫る 小屋の中で
瞼のない鶏が 夢を見ている
句点の間に
翔び 落ちて
読点の染みになる
それは
憧れ 贖い
取るに足らない
それでいて
代えのきかない
祈り
....
よろこびが
泳いでいく
喜びが綻んでいく
赤くなりたかった
いっそ黒でもよかった
砕けていく
喜びのなかで
誰かになりたかった
何も言わない
読点のような皿を洗う
燃え終えた数本のマッチに
年々似てくる
僕の記憶
日をうけて
影になっていく 木
振動する沈黙 かなしすぎるほどに
決して ....
赤い葉が 二、三枚
枝に残っている
ここに
光が建っている
秋 水辺にいるみたいに
薄く 目を開けて
飛沫を 頬に浴びて
無害なことばかり話す有害な人
舌先から 論理が涎のように垂れて
皺くちゃのスーツに染みをつくる
キミに足りないのは嫉妬心だよ
そう言われた 丸ノ内線の車内で
他人か知り合 ....
アーケードを沢山の人が歩く
なにも考えていないときの
脳内のような光景
半透明な意識が血管を流れていく
言葉がダマになってそこかしこで死んでる
ふと 誰かの気配を感じて振 ....
昨晩 新宿で友人と呑んだ
バーでは若い男女が
資本主義の終わりを論じていた
会計前に女はキスをせがんでいた
友人は家庭に問題を抱え
僕は三十七で 家庭を持たず
僕らは ....
詠んだけど書かなかっただけ思っても言わなかっただけあなたには
飲んだ嘘吐き出した嘘夜の数 囁きの音 数え忘れた
あしたからあなたを忘れて生きていくひとりで靴を履いて出掛ける
朦朧としながら喉を焼かれるような、茫漠と激烈を行き来する神経、剥き出しかと思いきや硬い殻の内側に居るのだと言われ、それなら私の言葉は一体、誰に届くというんですか。「でもその殻が少しずつ薄くなってい ....
そして医者がわたしのカルテに新しい病状について書き込んでいる
その手元を盗み見るがあまりの悪筆でまったく読めない
日本語ではないのかもしれない
秋が失われて久しいのだけど
秋のことは覚えて ....
恋の前兆の前兆の前兆の前兆のようなものを発見して、わたしいつの間にこんなとこに居るんだろうとかがんだら全部落としてしまった。それで一文無しになった。
何で気を紛らわすかってことだけど、仕事と ....
書きかけの手紙の様な薄紅葉
カーテンの影絵淋しく冬隣
秋しぐれ束の間淡き木々の色
シュッシュッと刻み金平牛蒡かな
稲の波案山子も少し溺れけり
生姜混ぜきれいな水で蕎麦食べ ....
目が覚めると異様なほど口中の渇きを感じることがある。一滴ずつ唾液腺から舌で唾液を促し、口中の渇きに唾液を塗りたくる。いったい俺の体はどうなってしまったのだろうか?そんなことを最近感じる。
鏡の中 ....
それの終わりかけに、
べつになんにもいらなくて
あなたを困らせた
ふつうに愛せたら良かったとおもう
グラスに入れた氷が溶けていくみたいにとか、
生けた花がだんだん萎れていくみたい ....
眠、覆い、考えられるかぎりのイメージ、それから細いタイヤ、太いキーチェーン、議事録、半円状の、氷、「実際よりすくなく感じられる」
どれくらい必要だろう?
どれくらい必要だろう、遠くなってい ....
いったいぜんたい どんな夢なら
許されたっておもえるだろう
まるで裸のような知識で
作られた海を泳いでも
向こう岸はおろか
あのみえてるブイにもとどかない
描き出すもの
愛も欲望も全部絡まっていて
──Grapevine
赤とんぼ夕陽と共に籠に入れ
虫の音やそのお姿は置いといて
名を知 ....
めずらしく熟睡したようで、うっかり二時四十五分の目覚まし時計を停めてしまい、気がついたらすでに三時を過ぎていた。あたふたと準備をし、食後に飲む薬をポケットに忍ばせ、慌てて大便をする。洗顔、寝起きのス ....
かつて太陽目がけて投げ上げられた一振りの剣が
この日祭りでにぎわう往来の真中へ落ちて来た
剣がひとりの人を貫いて固い地面に垂直に突き刺さると
群衆は一瞬凍り付き すぐにその場から逃げ出そうとした ....
あと2分しかないよ と言われて
あなたは詩を書きはじめる
あと2分、と言われてわたしは
あなたのことを愛しはじめる
安らかなのは
2分後に
ぜんぶおわるのがわかっていること ....
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