たとえばだれかのこうふくが
だれかのふこうのうえにあるとしたら
それはかなしいことかもしれません
そのかなしみがまた
だれかのよろこびのかてになっていたら
とてもふくざつすぎてもう
た ....
木蓮は一心不乱に花を咲かせ
嘆くように朽ちていく
茶色い花弁を散らかしながら
乙女のように衰える
しかし枝には
細かな緑を隠していて
生きること
静粛な佇まいの内に主張している
....
まあ綺麗。
月はどうなつてゐるのでせう。
あゝ、飴利禍軍人の湯たんぽみたよな足跡がべたべた残つてゐるさ。
乗捨てて行つたゴオカアトとか旗竿とか、そんな金属玩具や芥も其儘だ。
まあ、あの ....
みぎの のうを しゅじゅつした あのひから、
さくらのつぼみが
ぽつぽつ
ほころびるころになると
わたしは いつも
ひとつだけ
かみさまに
ねがいごとをするようになりました
よこになっ ....
金の光を体に帯びた
釈迦の言葉を聴きながら
緑の木々の下に坐る弟子達もすでに
金の光を帯びていた
夜の森の隅々にまで
不思議な言葉は沁み渡り
葉群の{ルビ詩=うた}も
森 ....
{引用=酔ってしまいそうなころ
大人になれない僕を思う
いつしか離れたことにも慣れて
きっと君も忘れるだろう
風吹き草木も眠る夜
踏み出した一歩先で
逃げ出してしまう影
もうひと ....
上野の美術館を出た帰り道
焼芋屋の車が、目に入った。
財布の懐が寒いので
「半切りをひとつ」と言い
小銭三枚をおじさんに手渡す
紙袋からほっくり顔を出す
焼芋をかじりな ....
{引用=ていねいに、することは、
祈り、をささげることに、
にている、
すばらしいものが、
みな故郷にかえってしまうひに、
売れのこったパンのように、
かわいているのは、
だれのおもいで ....
雨がふっていたので、
街に人がいなかった。
もういなかった。
くもが波のようにうねり、
静かに雨が。
ぼくはあのひとと歩いた。
本屋さんのおもてにも青いビニールシート。
ときどき ....
白骨の風車がくらりと回りきいと短く鳴く音を
追い吹く風の層を縫ってゆく錐揉み状の脊髄の
末端の熱っぽい鋭さから染み込んでくる甘苦い味の
粘付くまろやかな思考感触が忘れられない
蒼黒く鋼 ....
秒速5センチメートルを見る
これどんなはなし?
えきしょうはかいしたくなる
日本がきれいなアニメでした
人の想いきれい
切なくてなきそう
なんだろう
好きな人にあいたい
やっぱり、 ....
わたしをゆるしてください
そうやって
かつてわたしのかたちをしていた
うろこをはいでゆく
ときにはたてのようにして
じぶんをまもるためにまとっていた
うろこをはいでゆく
そん ....
いくつかの災厄のなかで
わたしは書机の下で頭をかかえておびえ
くらやみのなかで
あらゆる醜態をさらした
偽善と臆病とともに怒りを
蛙と虻のあと
彼らは過ぎ去ったように思えた
瓶につめられ ....
どうしてまだそんな所にいるの?早くこっちへおいでよ
って声をかけられるぐらい、まわりが難無くこなせてしまうことが、なかなかできないのです。
みんなが水溜まりの上を身軽にジャンプして超えていくのをそ ....
さみしがってもかまへんよ
そやけど けんかはあかん
おばあちゃんは よう言うてました
自転車こいでこいで
も少しこいだらついた
どこどこのこおやて言われたくないから
いそいでおりました ....
一念発起とがんばってみるのは
容易いけれど
がんばり続けることは
なぜか難しい
*
それって三日坊主
だよね
悔いてはみるのだけど
いつだって
他のひとの視線が気 ....
雨上がりの夕闇のなか
電線で羽を休める
アンドレ・ブルトンの詩集を見た
* * * *
足の生えた魚が愛を語り
アルコールの雨が降る
今夜すべては星のように凍えている
....
窓から窓へ
夜は動く
夜に夜を重ね
またたく
冬の水の上
羽の羽やまず
午後の双つ穴
昇るはばたき
わたしはわたしに到かない
水彩のまわり道
夕べは ....
曇り空の夕陽は
やけに朱色の粉っぽくて
窓から見える景色が
変にくすんでいます。
日がな一日床に入って
分かりもしない本を読んだり、
他人の不幸の報道を
リバイサンから御裾分けしてもらっ ....
{引用=雨が降っているなかで、きみとのやりとり浮
き上がる。水色の紐であやとり、つないでい
る細い声。たしかにきこえた澄んだ心の内側
で響く、エナジー。明日には見失うなら今す
べてを捨てて ....
タコ焼きやさんは足ぱんぱん
寒い日、雨の日、足ぱんぱん
市役所さんから立ち退き命令
とおりすがりの常連さんたち
ゆるい反対してくれるけれど
タコ焼きやさんは足ぱんぱん
....
密やかに正体を薄らげる
かすかな雲に七色のにじみ
月はいつもひとまかせで
美しい虹色の夜景を照らす
ネイルを数えるように
なにもかもを数える声
それらすべての合計は
生まれた数に等しい
....
あの子の愛は
呼ばれたいなまえがある。ほしいなまえがある。でももうわかっているだろう、語りかけることばは進化しないのに、本質は先を行く。それをあの子はゆるしてくれる?
――いいえ、いいえ、 ....
友達
おまんじゅうが六つ
入った箱が届いて
この前のおかえしだって
吉村姉妹、妻の友達
クリスチャンの友人
今日は月曜日
テレビの家庭ドラマ
妻と共観ている
一五年前夫を亡く ....
ルクトさんの住む家
から見える
パッチワーク的な畑
風が吹いている
鳥も二、三羽
屋根は赤い色
瞳は茶色
たまにやっている
散歩など
太陽がどちらへ沈むか
月がどこからひょ ....
薄闇の中で
10万の囁きが聴こえ
10万の囁きが一瞬止んだ
次の瞬間
灰褐色の塊のエクスプロージョン
茜色の空で 羽音たちが交じり合う
俺たちも あの塊の1つの点になろう
10万が1つに ....
杞憂だと嗤ってきた想定外が起きて
青い空から雨が降りしきる
雨を貪ってきた民は
雨から逃げ惑う
逃げ惑ったところで
この国の民は雨の奴隷
雨に逆らえば
無限の孤立の曝し首
発せよ御用学 ....
八重桜
いくえにも重なって
淡い桃をたわわに逢せる
遠野の空の水と蒼
流れ流され血の紅滲む
それでもサクラは咲くのです
山桜
ひっそりと佇む
誰も知らない名前すら
無から生ま ....
およそエゴイスティックな文学的な理屈をこね
人間がヒトが元来摂るべきタンパク質や水、並びに愛を
....
.
数の世界はその抽象にこそあるのです
具体をいかに豊富に積み込んだ抽象
を構成するかが数を究める者の課題
ここに数とは宇宙を開示する抽象のすべてをいう
.
それならば詩とは数なの ....
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